リゲッティ・コンピューティング(RGTI)は、2026年8月6日の米国株式市場終了後に第2四半期決算を発表しました。
今回の決算では、量子コンピューターシステムの販売増加を背景に、売上高が前年同期から大幅に伸びました。一方、研究開発や事業拡大に伴う費用負担は重く、営業損失は前年同期から拡大しています。
決算発表後の時間外取引では株価が下落しました。投資家は売上高の成長だけでなく、赤字の拡大、次世代システムの開発遅延、政府資金の不透明感という3つのリスクを警戒したと考えられます。
本記事では、リゲッティの第2四半期決算を整理したうえで、株価が下落した理由と中長期的な将来性について考察します。
第2四半期売上高は前年同期の約2.9倍
リゲッティの第2四半期売上高は514万ドルとなり、前年同期の180万ドルから大幅に増加しました。前四半期の440万ドルも上回り、アナリスト予想の509万ドルに対しても小幅ながら上振れています。
前年同期比では約2.9倍となっており、量子コンピューターシステムの販売が徐々に拡大していることが分かります。
量子コンピューター市場は、依然として研究開発や実証実験が中心です。その中で売上高が大きく伸びたことは、リゲッティの量子システムに対する需要が増えていることを示す前向きな材料です。
一方、営業損失は2,810万ドルとなり、前年同期の2,040万ドルから拡大しました。調整後1株当たり損失は5セントで、市場予想と一致しています。
売上高が増加したにもかかわらず赤字幅が拡大しているため、現時点では事業規模の拡大が利益改善につながっていません。量子コンピューターの開発には多額の研究開発費が必要であり、商業化に向けた先行投資が続いています。
株価下落の理由1:売上高に対して営業赤字が大きい
決算発表後の時間外取引で、リゲッティ株は4.4%下落しました。
売上高が市場予想を上回ったにもかかわらず株価が下落した最大の理由は、売上高に対する営業損失の大きさです。
第2四半期の売上高は514万ドルでしたが、営業損失は2,810万ドルに達しました。営業損失は売上高の5倍を超える規模です。
量子コンピューター企業に短期的な黒字化を求めるのは現実的ではありません。しかし、売上高が増えても赤字が縮小しなければ、将来的に事業規模を拡大した際の収益性に疑問が残ります。
投資家が今後確認したいのは、単純な売上成長だけではありません。売上高の増加に伴って、研究開発費や販売管理費の負担を吸収できる事業構造へ移行できるかが重要になります。
5億4,130万ドルの手元資金と無借金が強み
赤字が拡大する一方で、リゲッティの財務基盤は比較的安定しています。
同社は2026年6月30日時点で、現金、現金同等物、売却可能有価証券を合計5億4,130万ドル保有しています。さらに、負債を抱えていないことも明らかにしました。
四半期の営業損失は2,810万ドルに達していますが、現在の損失水準が続くと単純に仮定しても、一定期間は事業を継続できるだけの資金余力があります。
量子コンピューターは、短期間で利益を生み出せる事業ではありません。技術開発、製造設備、人材確保、顧客へのシステム導入などに長い時間と巨額の資金が必要です。
そのため、5億ドルを超える手元資金と無借金というバランスシートは、リゲッティにとって重要な競争力になります。追加の資金調達を急がずに研究開発を続けられる点は、中長期的な安心材料です。
ただし、現在の赤字が長期間続けば、豊富な資金も徐々に減少します。今後は手元資金の規模だけでなく、四半期ごとの現金消費額にも注目する必要があります。
量子システムの販売は着実に前進
事業面では、Noveraプロセッサを採用した量子コンピューターシステムや、インドの研究センター向け大型注文の履行が進んでいます。
また、ヒューレット・パッカード・エンタープライズとの連携により、米国国立科学財団の助成を受け、ピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センターへ量子コンピューターを納入する計画も進行中です。
量子コンピューター企業の評価では、量子ビット数や技術性能だけでなく、実際に顧客へシステムを納入できるかが重要です。
研究機関や公的機関への導入実績が増えれば、技術の信頼性を証明できるだけでなく、追加受注や民間企業との契約につながる可能性があります。
売上規模はまだ小さいものの、システム販売が加速していることは、リゲッティが研究開発企業から商業企業へ移行する過程にあることを示しています。
株価下落の理由2:次世代システムの開発遅延
リゲッティは、複数の量子チップを接続してシステムを大規模化する「チップレットベース」の超伝導量子アーキテクチャを採用しています。
単一のチップ上に量子ビットを増やし続ける方法では、製造難易度の上昇やエラー率の悪化が課題になります。複数の比較的小さなチップを接続する方式が確立できれば、歩留まりを維持しながら量子ビット数を増やせる可能性があります。
この技術が実用化されれば、リゲッティは量子コンピューターの拡張性や製造コストの面で優位性を確保できるかもしれません。
一方、同社は2026年初めに次世代システム「Cepheus-1-108Q」のリリースを延期しています。
チップレット方式には大きな可能性がありますが、チップ間の接続精度やエラー制御など、解決すべき技術的課題も残されています。
量子コンピューター企業の株価は、将来の技術的な成功を大きく織り込んで動きます。そのため、製品投入の延期は単なるスケジュール変更ではなく、技術開発の不確実性として市場に受け止められます。
今後の評価を左右するのは、計画を発表するだけでなく、延期されたシステムを実際に完成させ、顧客へ提供できるかどうかです。
株価下落の理由3:政府資金と株式希薄化の不透明感
リゲッティは2026年5月、米国商務省との間で1億ドルの連邦資金提供に関する基本合意を発表しました。
ただし、この資金提供は株式譲渡を伴う枠組みであり、2026年8月6日時点では最終合意に至っていません。
政府資金を確保できれば、研究開発や製造能力の強化を進めやすくなります。また、米国政府との関係強化は、安全保障や先端技術政策の観点からも同社の信頼性向上につながる可能性があります。
一方、株式の発行や譲渡を伴う場合には、既存株主の持ち分が薄まる可能性があります。
資金提供の規模は大きいものの、具体的な条件や株式希薄化の程度が確定していないことが、投資家の警戒につながったと考えられます。
決算発表後の時間外取引では、イオンキュー(IONQ)が0.9%下落し、ディー・ウェイブ・クオンタム(QBTS)も0.1%下落しました。量子コンピューター関連株全体に利益確定売りが広がった可能性もありますが、リゲッティの下落率は同業他社より大きくなりました。
営業赤字の拡大、製品投入の遅れ、政府資金を巡る不透明感が重なり、売上高の好調さだけでは投資家の懸念を打ち消せなかったと考えられます。
イオンキューとの売上規模の差
リゲッティの売上高514万ドルは前年同期から大きく伸びましたが、量子コンピューター業界の中ではまだ小規模です。
イオンキューの直近四半期売上高は8,010万ドルで、リゲッティの約15.6倍に達します。
両社は事業内容や売上計上のタイミングが異なるため、単純な比較だけで優劣を判断することはできません。しかし、商業化の進捗という点では、リゲッティが先行企業を追う立場にあることは明らかです。
リゲッティが市場での評価を高めるには、研究機関向けの単発的なシステム販売だけでなく、継続的に売上高を積み上げられる顧客基盤を構築する必要があります。
リゲッティの将来性
今回の決算は、売上高の急成長と営業損失の拡大が同時に示された内容でした。
リゲッティには、5億4,130万ドルの手元資金、無借金の財務体質、独自のチップレット技術、公的研究機関との関係という強みがあります。
今後の焦点は、延期されたCepheus-1-108Qを投入できるか、量子システムの受注を継続的な売上高につなげられるか、米国商務省との資金提供契約を有利な条件で確定できるかです。
量子コンピューター市場は大きな成長が期待される一方、技術開発や商業化の時期を予測することが難しい市場です。
リゲッティは十分な資金を持っていますが、現時点では売上高に対して赤字が大きく、投資対象としての不確実性も残ります。
今後、システム納入の増加と技術開発の進展が数字として確認できれば、同社が量子コンピューター市場で存在感を高める可能性があります。反対に、製品投入の延期や赤字拡大が続けば、豊富な手元資金があっても市場の評価は伸び悩むでしょう。
リゲッティは現在、技術の将来性を示す段階から、その技術を継続的な売上高へ転換できるかが問われる段階に入っています。
情報ソース: Barron’s: “ Rigetti’s Quantum System Sales Are Accelerating and the Stock Is Tumbling” (By Mackenzie Tatananni, Aug 06, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「量子コンピューターは「数」から「精度」へ リゲッティ決算が示す転換」
🎧この記事は音声でもお楽しみいただけます。AIホストによる会話形式で、わかりやすく、さらに深く解説しています。ぜひご活用ください👇