GEベルノバは「勝てる構造」 470ドルの弱気予想に強気派が反論する理由

  • 2026年9月16日
  • 2026年9月16日
  • BS余話

GEベルノバ(GEV)の株価を巡り、ウォール街で強気派と弱気派の見方が大きく分かれています。

当ブログでは前回、「GEベルノバ株は半値になるのか 470ドルの弱気予想が突きつけた「高すぎる株価」」と題した記事で、GLJリサーチによる「売り」評価と470ドルという目標株価を紹介しました。

GLJリサーチが問題視しているのは、GEベルノバの成長そのものではなく、AIによる電力需要への期待が現在の株価に織り込まれすぎている可能性です。

ところが、その翌日にバロンズが報じたのは、これとは対照的な強気派の見方でした。

バーンスタインのアナリスト、スナイナ・オカラン氏は、GEベルノバは依然として「勝てる構造」にあると評価しています。

今回のポイントは、GEベルノバの成長を「AIデータセンター需要」だけで判断してよいのかという点です。

470ドルの弱気予想に強気派が反論

前回の記事で紹介したGLJリサーチの弱気シナリオでは、GEベルノバの2027年予想EBITDAが市場予想を下回り、さらに現在の高い評価倍率も低下することが想定されています。

その結果として示された目標株価が470ドルでした。

これに対して、バーンスタインのオカラン氏はGEベルノバへの「買い」評価を維持し、目標株価を1,298ドルとしています。

470ドルと1,298ドルでは、同じ企業を分析しているとは思えないほど大きな差があります。

両者の違いを理解するうえで重要なのが、GEベルノバの電力設備に対する需要がどこから生まれているのかという点です。

当ブログでは以前、「GEベルノバ決算が市場予想超え AIデータセンター需要で株価最高値更新へ」で、AIデータセンター需要や受注拡大が同社の業績を押し上げている状況を紹介しています。

データセンター向けは電化事業受注の38%

バロンズの記事で最も注目したい数字が、2026年上半期の受注構成です。

GEベルノバの電化事業では、データセンター関連の受注が約50億ドルとなり、同部門全体の約38%を占めました。

これは確かに大きな割合です。

しかし、逆に見ると残りの約62%は公益事業者などによる需要です。

つまり、GEベルノバの成長ストーリーは、AIデータセンターだけに依存しているわけではありません。

米国ではAI以前から、老朽化した送電網の更新、電力供給の安定化、自然災害への耐性向上など、多額の電力インフラ投資が必要とされています。

この「AIの次は電力」という投資テーマについては、「エヌビディアの次に来るAI関連株は電力か データセンター需要で注目されるインフラ企業」でも詳しく取り上げています。

オカラン氏は、仮にデータセンター需要が減速して発電能力を巡るボトルネックが多少緩和されたとしても、既存の送電網が抱える制約までは解消されないとみています。

この点が弱気派への重要な反論になります。

「AIが減速すればGEベルノバも失速」は単純すぎる

最近のGEベルノバ株には、新たな懸念材料が加わっています。

AI開発の安全性を巡り、アンソロピックのダリオ・アモデイCEOやスペースX(SPCX)のイーロン・マスクCEOなどから、AI開発のスピードや監督体制について慎重な意見が出ています。

AI開発が減速すれば、新しいデータセンターの建設も減り、発電設備への需要も低下するのではないかとの連想から、GEベルノバ株にも売り圧力がかかりました。

AI開発の減速がエヌビディアなどAIインフラ関連企業に与える影響については、「AI開発「減速」で勝つ企業、負ける企業 エヌビディアに浮上した新たなリスク」で詳しく紹介しています。

しかし、今回のバーンスタインの分析に沿えば、「AI投資の減速=GEベルノバの成長終了」という見方は単純すぎます。

電力網そのものの増強需要が存在するためです。

AIはGEベルノバにとって重要な成長ドライバーですが、唯一の成長ドライバーではありません。

ガスタービンは販売した後も収益を生む

前回の記事でも紹介したように、強気派が注目しているもう1つのポイントがサービス収入です。

ジェフリーズは、電力需要の増加とともにGEベルノバ製の発電設備の設置台数が増えれば、その後の部品交換や保守サービスから得られる収入も増えるとみています。

大型ガスタービンは、販売した時点でGEベルノバとの関係が終わる製品ではありません。

長期間にわたって点検、部品交換、修理などが必要になります。

つまり、現在のガスタービン受注は、将来の機器販売だけではなく、その後の長期的なサービス収入を生み出す可能性があります。

一方、AI向け電力設備を巡っては新たな競争の可能性も浮上しています。当ブログでは「スペースXがGEベルノバを脅かす?AI電力不足で始まるタービン争奪戦」で、スペースXによるタービン部品内製化の可能性とGEベルノバへの影響を取り上げています。

弱気派が「現在の株価に将来の成長が織り込まれすぎている」と警戒する一方、強気派は「現在の設備販売が将来の継続収入につながる」と評価しています。

ここが両者の大きな違いです。

弱気派が警戒するキャッシュフローの問題は残る

もちろん、バーンスタインが強気だからといって、前回の記事で紹介した懸念が消えたわけではありません。

GLJリサーチは、GEベルノバのキャッシュフローについても慎重な見方を示しています。

ガスタービンの受注時に顧客から受け取る前受金が、現在のキャッシュフローを押し上げている可能性があるためです。

大型設備では受注から納入までに時間がかかります。

前受金による現金流入が増えていても、それだけで最終的な収益力が高まったとは判断できません。

今後は受注残の大きさだけでなく、それがどの程度の利益率で売上と利益に転換されるのかを見る必要があります。

この点については、前回紹介した弱気派の指摘が引き続き重要です。

それでも約80%のアナリストが「買い」

ウォール街全体を見ると、現時点では強気派が優勢です。

バロンズがファクトセットのデータとして紹介したところによると、GEベルノバをカバーするアナリストの約80%が「買い」相当の評価を付けています。

S&P500構成銘柄では、買い評価の割合は通常55〜60%程度とされているため、GEベルノバに対する強気評価の多さが目立ちます。

アナリスト全体の平均目標株価は約1,240ドルです。

バーンスタインのオカラン氏はさらに高い1,298ドルを目標株価としています。

一方、前回取り上げたGLJリサーチの目標株価は470ドルです。

この極端な差は、GEベルノバが成長するかどうかよりも、「その成長に現在の株価がどの程度の価値を付けるべきか」を巡って意見が分かれていることを示しています。

トランプ大統領はAIへの過度な懸念に反論

バロンズの記事では、ドナルド・トランプ大統領によるAIへの発言も紹介されています。

トランプ大統領はTruth Socialで、AIを巡る過度な懸念に反論しています。

また、ロサンゼルスで開催されたAll In Summitでエヌビディア(NVDA)のジェンスン・フアンCEOが登壇していた際には、トランプ大統領から電話が入ったとバロンズは伝えています。

フアンCEOも、AIが人類に存亡の危機をもたらすとの見方には否定的な姿勢を示しています。

これに対し、アンソロピックのアモデイCEOやスペースXのマスクCEOなどは、AI開発の安全性や監督体制について警戒を強めています。

AI開発を加速させるのか、それとも一定の制約を設けるのかという議論は、半導体株だけではなく、データセンターや電力インフラ関連株にも大きな影響を与えるテーマになっています。

バロンズはオープンAIについても、2027年のIPOによる資金調達の可能性に言及しています。

前回の「470ドル」と今回の「1,298ドル」をどう考えるか

今回の記事は、前回紹介した弱気論を否定するものではありません。

むしろ、2つの記事を合わせて読むことで、GEベルノバ株を巡る現在の最大の争点が見えてきます。

弱気派が注目しているのは、バリュエーション、2027年の利益水準、受注時の前受金、将来納入するガスタービンの採算などです。

一方、強気派が注目しているのは、公益事業者による送電網投資、発電設備の需要、設置済み設備の増加、そして長期的なサービス収入です。

つまり、「GEベルノバが成長するか」という議論よりも、「どの程度成長するのか」「その成長に現在の株価が見合っているのか」という議論に移っています。

前回紹介した470ドルという弱気シナリオと、今回の1,298ドルという強気シナリオのどちらに近づくのかを判断するには、今後の決算で利益率、キャッシュフロー、受注残、サービス収入の伸びを確認する必要があります。

GEベルノバは「AI銘柄」だけではない

今回のバロンズの記事から読み取れる最も重要なポイントは、GEベルノバを単純な「AIデータセンター関連株」として評価すべきではないということです。

AIによる電力需要の増加は、GEベルノバの成長を加速させる大きな要因です。

一方、電化事業の受注を見ると、データセンター関連は38%であり、残る62%は公益事業者などによる需要です。

さらに、電力網の増強、老朽設備の更新、発電能力の拡大、設置済みガスタービンから得られるサービス収入など、AI以外にも成長を支える要素があります。

前回の記事では、GEベルノバ株が「高すぎるのではないか」という弱気派の視点を紹介しました。

今回のバロンズの記事は、それに対して「高い評価には理由がある」と主張する強気派の論拠を示したものといえます。

470ドルと1,298ドル。

この大きな目標株価の差そのものが、現在のGEベルノバ株を巡る議論の激しさを象徴しています。

情報ソース: Barron’s: “GE Vernova Is ‘Wired to Win,’ Analyst Says. What It Means for the Stock.” (By Al Root, Sept. 15, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

🎧この記事は音声でもお楽しみいただけます。AIホストによる会話形式で、わかりやすく、さらに深く解説しています。ぜひご活用ください👇

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