エヌビディアの次に来るAI関連株は電力か データセンター需要で注目されるインフラ企業

  • 2026年5月12日
  • 2026年5月12日
  • BS余話

AIブームは、米国株市場の主役を大きく変えつつあります。これまで投資家の関心は、エヌビディア(NVDA)に代表される半導体や、AIを活用するソフトウェア企業に集まっていました。しかし、AIの普及が進むにつれて、より現実的な制約が浮かび上がっています。

それが電力です。

AIデータセンターは、膨大な計算処理を行うために大量の電力を必要とします。どれだけ高性能なGPUを用意しても、それを動かす電力や送電設備が不足すれば、AIインフラは拡大できません。つまり、AI時代の次なる主戦場は、半導体そのものから電力インフラへ移り始めていると考えられます。

電力インフラ機器メーカーに追い風が吹く理由

現在、AIデータセンターの拡大で特に注目されているのが、発電設備、送電設備、電力制御機器などを手がける企業です。

代表的な企業として、GEベルノバ(GEV)、イートン・コーポレーション(ETN)、クアンタ・サービシーズ(PWR)などがあります。これらの企業は、AIブームによって急増する電力需要を支える側に位置しています。

特にGEベルノバは、ガスタービンの需要が非常に強く、2030年分まで生産枠が埋まっているとされています。2026年第1四半期時点で受注残は100GWに達し、納入まで最大7年かかるケースもあります。

この状況は、電力インフラ市場が極めて強い売り手市場になっていることを示しています。発電設備や送電設備は、半導体のように短期間で急増産できるものではありません。工場能力、人材、部材、規制、建設期間など、複数の制約があるためです。

そのため、既に生産能力や技術力を持つ企業は、今後数年間にわたって強い価格交渉力を維持しやすいと考えられます。

ブルーム・エナジーが注目される背景

電力インフラの問題で特に深刻なのが、送電網への接続待ちです。データセンターを建設しても、送電網につながるまで何年も待たされる可能性があります。

この課題に対して注目されているのが、ブルーム・エナジー(BE)の燃料電池ソリューションです。同社の技術は、既存の送電網への依存を一部減らし、データセンターに近い場所で電力を供給できる可能性があります。

同社は50億ドル規模の大型提携を獲得しており、AIデータセンター向けの分散型電源として市場の関心を集めています。送電網の接続待ちを回避できる価値は大きく、データセンター運営会社にとってはコスト以上に時間を買う意味を持ちます。

AI投資が加速するほど、こうした代替電源や分散型電力ソリューションの重要性は高まる可能性があります。

電力会社には成長機会と規制リスクが同時に存在する

AIブームは、電力会社にとっても大きな成長機会です。ビッグテックによるデータセンター投資は、長期的な電力需要につながります。

ビッグテック4社の2026年の設備投資額は約7,000億ドルに達すると見込まれています。この巨額投資の一部は、データセンター建設や電力確保に向かいます。

その結果、PJMと呼ばれる米国の送電網運用機関の容量市場価格は、30ドル未満から300ドル超へと急騰しました。電力不足への懸念が、価格に明確に反映されている形です。

ドミニオン・エナジー(D)、エンタージー(ETR)、ネクステラ・エナジー(NEE)などは、データセンター需要を背景にした成長期待が高まっています。長期契約によって大口需要を取り込める企業は、安定した売上基盤を築きやすくなります。

ただし、電力会社には大きなリスクもあります。それが規制リスクです。

電気料金の上昇は政治問題になりやすい

電力価格の上昇は、企業だけでなく一般家庭にも影響します。AIデータセンター向けの電力需要が増え、そのコストが一般消費者の電気料金に転嫁されると、政治的な反発が起こりやすくなります。

実際に、2025年に米国の電力会社が申請した値上げ要求額は過去最高の310億ドルに達しました。こうした動きを受けて、テキサス州では大口需要家にインフラリスクの負担を求める規制が動き出しています。

また、コンステレーション・エナジー(CEG)のように、価格上限設定への懸念だけで株価が急落するケースも出ています。

この点は、電力関連株を見るうえで非常に重要です。単純に「AI需要が増えるから電力会社はすべて有利」とは言えません。長期契約で収益を守れる企業と、規制や市場価格の変動にさらされる企業との間で、明暗が分かれる可能性があります。

AIソフトウェア企業にも電力コストの影響が広がる

電力コストの上昇は、インフラ企業だけでなく、AIソフトウェア企業にも影響します。

従来のSaaS企業は、一度ソフトウェアを開発すれば、追加ユーザーに提供するコストが比較的小さく、80%から90%という高い粗利益率を実現してきました。

しかし、AIネイティブ企業では事情が異なります。AIサービスは、ユーザーが質問したり画像を生成したりするたびに、計算処理が発生します。その裏側ではGPU、データセンター、電力が消費されます。

そのため、AIネイティブ企業の利益率は50%から60%程度にとどまるケースがあります。これは、従来のソフトウェア企業に比べて大きな違いです。

AI時代には、利用者が増えれば増えるほど、推論コストも増えます。つまり、従来のSaaSのように「規模が大きくなるほど利益率が自然に改善する」というモデルが通用しにくくなっています。

この構造変化は、中堅ソフトウェア企業にとって大きな課題です。自社でデータセンターや電力調達をコントロールできない企業は、クラウド費用やAI処理コストの上昇によって利益率が圧迫される可能性があります。

一方、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のようなビッグテックは、巨額の資金力を使ってデータセンター、電力、半導体を一体で確保できます。この差は、AI時代の競争力を左右する重要な要素になります。

AI投資の本命は物理インフラにも広がっている

AIブームは、単なるソフトウェア革命ではありません。実際には、半導体、データセンター、電力、冷却、送電網といった物理インフラを巻き込む巨大な設備投資サイクルです。

7,000億ドル規模のAI関連投資が進むなかで、最も不足しているものは、AIモデルそのものではなく、それを動かすための電力とインフラかもしれません。

その意味で、GEベルノバ、イートン、クアンタ・サービシーズ、ブルーム・エナジーのような企業は、AIブームの裏側で重要な役割を担う存在です。

ただし、電力関連株には規制リスク、金利上昇リスク、設備投資負担、政治的介入といった課題もあります。投資家は、単にAI関連というテーマ性だけで判断するのではなく、受注残、価格交渉力、長期契約、規制環境を確認する必要があります。

AI時代の勝者を探すうえで、今後は「どの企業がAIを作るのか」だけでなく、「どの企業がAIを動かす電力を支えるのか」という視点がますます重要になります。

情報ソース: MarketWatch: “Opinion: Meet the Nvidias of power — 5 stocks winning Big Tech’s $700 billion AI energy grab” (By Jurica Dujmovic, May 11, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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