カメコ株をめぐる「市場とウォール街の温度差」 28%下落後のCCJを読み解く

  • 2026年8月17日
  • 2026年8月17日
  • BS余話

原子力発電の復活やAIデータセンターの電力需要拡大を背景に、世界最大級のウラン企業であるカメコ(CCJ)は、長期的な成長銘柄として注目されています。

一方、株価は大きな調整局面を迎えています。

カメコ株は2026年1月29日に52週高値となる135.24ドルを付けましたが、その後は下落基調となり、7月17日には一時83.15ドルまで下落しました。8月14日の終値は97.74ドルで、52週高値から依然として約28%低い水準にあります。

では、今回の株価下落はカメコの成長ストーリーが崩れたことを意味するのでしょうか。

直近のウォール街の評価を見ると、必ずしもそうではありません。株価が大きく下落する一方で、複数の証券会社は「買い」の判断を維持しており、中には株価調整を投資機会とみて格上げに動いたところもあります。

カメコ株下落の背景はウラン価格と高い期待

今回の株価調整には、いくつかの要因があります。

まず挙げられるのが、ウラン価格の上昇一服です。

2026年初めにはウラン価格が1ポンド100ドルを超える局面もありましたが、その後は80ドル台を中心とした推移となっています。

カメコ株にはウラン価格上昇への期待が大きく織り込まれていたため、ウラン価格そのものが暴落しなくても、上昇の勢いが鈍化するだけで利益確定売りが出やすい状況となりました。

さらに、7月31日に発表された2026年第2四半期決算では、調整後EPSが約0.13ドルとなり、市場予想の約0.26ドルを下回りました。

ウラン事業では販売数量の減少などが影響し、調整後EBITDAは前年同期の3億5,200万カナダドルから2億5,200万カナダドルへ減少しています。

長期的な成長期待が高かっただけに、短期的な業績の弱さが株価調整を加速させたと考えられます。

ウェスチングハウスの利益減少も株価の重荷に

もう1つ注目したいのが、カメコが49%を保有する原子力大手ウェスチングハウスです。

カメコ持分ベースのウェスチングハウスの調整後EBITDAは、2025年第2四半期の3億5,200万カナダドルから、2026年第2四半期には1億6,300万カナダドルへ減少しました。

前年にはチェコのドコバニ原発プロジェクトなどによる利益寄与があったため、その反動が表れています。

カメコには、ウラン生産会社としてだけでなく、ウェスチングハウスを通じて世界的な原子力発電所建設の拡大から恩恵を受けるという期待があります。

それだけに、ウェスチングハウスの利益が短期的に大きく減少したことも、投資家心理を冷やす要因となりました。

UBSは株価下落を受けて「買い」へ格上げ

しかし、こうした株価調整に対するアナリストの評価は意外なほど強気です。

特に注目したいのがUBSです。

UBSは2026年7月27日、カメコの投資判断を「ニュートラル」から「買い」へ格上げし、トロント市場における目標株価を166カナダドルとしました。

UBSは最近の株価下落について、カメコ自身のファンダメンタルズ悪化が主因ではないと判断しています。

むしろ注目しているのは、スポット価格よりも長期ウラン契約価格が高い水準を維持していることや、電力会社によるウラン調達が活発化していることです。

新しいウラン鉱山を開発して実際の生産に入るまでには長い時間が必要となるため、原子力発電所の需要が拡大すれば、ウラン市場の供給不足が長期化する可能性があります。

UBSは長期的なウラン価格について、実質ベースで1ポンド100ドル程度を想定しています。

つまりUBSは、現在の株価調整を長期的な需給構造の変化とは切り離して考えているわけです。

バンク・オブ・アメリカやトゥルイストも「買い」

強気なのはUBSだけではありません。

トゥルイスト証券は7月14日にカメコのカバレッジを開始し、「買い」、目標株価129ドルとしました。

バンク・オブ・アメリカも7月9日に「買い」を維持しています。目標株価は143ドルから140ドルへ若干引き下げましたが、長期的な投資判断そのものは変えていません。

ゴールドマン・サックスも「買い」、RBCキャピタルは「アウトパフォーム」を維持しています。

RBCキャピタルは6月29日、トロント市場における目標株価を160カナダドルから175カナダドルへ引き上げました。

各社に共通しているのは、足元の四半期業績だけではなく、世界的な原子力発電の拡大とウラン市場の需給引き締まりを長期的な投資テーマとして重視している点です。

バークレイズはバリュエーションを警戒

一方、すべてのアナリストが強気というわけではありません。

バークレイズは7月16日に「イコール・ウェイト」を維持し、目標株価を108ドルから104ドルへ引き下げました。

これは原子力市場の長期成長そのものを否定しているというより、カメコ株にはすでに高い成長期待が織り込まれており、バリュエーション面では慎重に見る必要があるという判断です。

ここはカメコ株を考えるうえで重要なポイントです。

原子力発電市場が拡大し、カメコの業績が長期的に成長したとしても、株価がその成長を先取りし過ぎていれば、大きな調整が起こる可能性があります。

カメコのリスクは必ずしも「原子力市場が縮小すること」だけではありません。「良い会社でも株価が高すぎれば調整する」という株式投資の基本的なリスクにも注意する必要があります。

アナリストが注目するウェスチングハウスの価値

今後のカメコを考えるうえでは、ウェスチングハウスの存在がますます重要になりそうです。

同社が展開するAP1000原子炉が世界各地で採用されれば、カメコは原子炉建設時の収益だけでなく、その後数十年間にわたる核燃料供給、メンテナンス、各種サービスなどから継続的な利益を得られる可能性があります。

UBSは、市場が将来のAP1000受注による利益成長を十分に評価していない可能性を指摘しています。

ここに、現在のカメコを単純なウラン生産会社として評価できない理由があります。

カメコは「ウラン価格上昇に賭ける資源株」から、ウラン採掘、核燃料、原子炉、原子力サービスまで、原子力発電産業全体の成長を取り込める企業へと変化しつつあります。

この事業構造の変化が、将来的にカメコの企業価値をどこまで押し上げるのかが重要な焦点となります。

株価下落とアナリスト評価に大きな乖離

現在のカメコで最も興味深いのは、株価とアナリスト評価の方向性が一致していないことです。

株価は52週高値135.24ドルから大きく下落しています。

それにもかかわらず、多くのアナリストは「買い」や「アウトパフォーム」といった強気の判断を維持しており、UBSのように株価下落後に格上げした証券会社もあります。

通常、企業の成長ストーリーそのものが崩れれば、株価下落とともにアナリストの格下げや目標株価の大幅引き下げが相次ぎます。

しかし、今回のカメコではそのような動きは今のところ限定的です。

市場が短期的な業績や高いバリュエーションを警戒している一方で、アナリストはウランの長期的な供給不足や世界的な原子力発電の拡大をより重視していると考えられます。

カメコ株の調整局面は投資機会になるのか

カメコの最近の株価下落は、原子力発電やウラン市場の長期成長ストーリーが崩れたというより、これまでの株価上昇によって膨らんだ期待とバリュエーションを調整している側面が強いと考えられます。

もちろん、リスクがなくなったわけではありません。

ウラン価格の下落、鉱山の操業トラブル、ウェスチングハウスの利益変動、原子力発電所プロジェクトの遅延、そして高いバリュエーションには引き続き注意が必要です。

一方で、AIデータセンターによる電力需要の増加、各国政府による原子力発電支援、長期ウラン契約の拡大、新規鉱山開発の難しさなど、カメコを支える長期的な材料は依然として残っています。

今後の投資判断では、日々の株価だけを見るのではなく、ウラン価格、長期契約の数量と価格、ウェスチングハウスのAP1000受注、そしてカメコ株のバリュエーションを合わせて確認することが重要です。

株価は52週高値から約28%下落していますが、ウォール街の多くのアナリストは依然として強気の姿勢を崩していません。

この「株価下落」と「強気なアナリスト評価」の乖離こそが、現在のカメコ株を見るうえで最も注目すべきポイントと言えそうです。

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「ウラン市場の主役、カメコに注目:原子力再興で再び脚光


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