量子コンピューティング株の勝者は誰か?2026年決算で見えた「商業化」の本命企業

  • 2026年8月15日
  • 2026年8月15日
  • BS余話

量子コンピューティングは長年、「将来の技術」として期待されながらも、実際に企業が利益を生み出すまでには時間がかかると考えられてきました。

しかし、2026年第2四半期の量子関連企業の決算を見ると、状況は少しずつ変わり始めています。

量子コンピューティング市場は、研究開発を競う段階から、実際に顧客を獲得し、売上を生み出す「商業化」の段階へ入りつつあります。

今回は、量子コンピューティング企業の最新決算から、業界で起きている構造変化と、今後の勝ち組企業を見極めるポイントについて考えていきます。

量子専業企業が商業化で先行

量子コンピューティング開発では、IBM(IBM)、グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)といった巨大テクノロジー企業が長年研究を続けています。

豊富な資金力や研究者を抱えるビッグテックが最終的に市場を支配すると考えるのは自然です。

ところが、実際の商業化では量子コンピューティング専業企業が先行する動きが目立っています。

イオンキュー(IONQ)は売上高を8,010万ドルまで拡大しました。リゲッティ・コンピューティング(RGTI)も海外の研究機関などへの量子コンピュータ納入を進め、第2四半期の売上高は510万ドルとなっています。

さらに2026年6月にIPOを実施したクオンティニュアム(QNT)は、決算発表後に株価が28%上昇しました。

株式市場が量子専業企業について、単なる研究開発企業ではなく、将来的に事業として成立する可能性のある企業として評価し始めていることがうかがえます。

ビッグテックと量子専業企業の違い

一方、ビッグテック各社の量子事業は、必ずしも売上拡大を最優先しているわけではありません。

グーグルは量子システムの研究開発を進めていますが、現時点では自社研究での利用が中心です。マイクロソフトも量子技術の開発を進めているものの、量子ハードウェアを本格的に販売する段階には至っていません。

IBMの場合も量子事業そのものは成長しているものの、巨大企業であるため、量子分野の成果だけを切り離して企業価値として評価することは容易ではありません。

その点、量子コンピューティングを主力事業とする専業企業は、技術開発だけでなく顧客獲得や売上拡大を急ぐ必要があります。

この違いが、商業化初期の市場では専業企業のスピードを高める要因になっています。

勝敗を左右するのはクラウド収益

今後の量子企業を見るうえで重要になるのが、どのような形で継続的な売上を作るかです。

量子コンピュータ本体を販売するだけでは、売上が大型案件の納入時期によって大きく変動してしまいます。

そこで注目されているのが、クラウド経由で量子コンピュータを利用できるサービスです。

クオンティニュアムでは、単発のシステム販売だけでなくクラウド関連収益が成長を支えています。さらにオラクル(ORCL)との提携を通じ、量子ハードウェアを既存のデータセンターへ統合する取り組みも進めています。

量子コンピュータは、従来型コンピュータを完全に置き換えるものではありません。

古典的なスーパーコンピュータやクラウドインフラと組み合わせ、一部の計算を量子コンピュータに処理させる「ハイブリッド型」が現実的な利用方法になります。

既存のクラウドサービスに組み込まれることで企業が量子技術を利用しやすくなれば、量子企業側も継続的な利用料を得られる可能性があります。

D-ウェイブの受注急増が示す課題

D-ウェイブ・クオンタム(QBTS)は、2026年上半期の受注額が前年同期比1,120%増となりました。

量子コンピューティングへの需要が急速に高まっていることを示す数字ですが、注意したいのは売上の変動です。

大型案件やハードウェア販売に依存すると、契約や納入のタイミングによって四半期ごとの業績が大きく変化します。

そのため今後は、単発の量子コンピュータ販売だけでなく、クラウド利用料や長期契約などのリカーリング収益をどれだけ増やせるかが企業評価を左右すると考えられます。

量子企業でも二極化が進む

量子市場全体が成長しても、すべての企業が成功するとは限りません。

クオンティニュアムやイオンキューなどは実際の売上を拡大しています。またインフレクション(INFQ)は四半期収益がすべて量子関連事業から生まれたとしています。

一方、研究開発を中心とするホライゾン・クオンタムは売上がない状態で、研究開発費が前年から倍増しています。

量子コンピューティングは巨額の研究開発費を必要とするため、売上を作れない期間が長引けば追加の資金調達が必要になります。

今後の量子株では、単純に量子技術を保有しているかではなく、「研究成果をどれだけ早く顧客と売上につなげられるか」が重要になります。

国策が量子市場の成長を後押し

量子コンピューティング市場そのものには、大きな成長余地があります。

市場規模は2035年までに430億〜710億ドルに拡大するとの予測があります。

さらに米国では、商務省による20億ドル規模の資金支援や、量子技術とポスト量子暗号を国家レベルで重視する政策が進められています。

量子技術はAIと同様に、経済競争だけでなく国家安全保障にも関係します。そのため米国、中国、欧州などによる国家レベルの研究開発競争は今後も続く可能性が高いでしょう。

こうした政府支援は、量子コンピュータ最大の課題である誤り訂正や量子ビットの大規模化を進めるうえでも重要な追い風になります。

量子株を見るなら売上と顧客基盤に注目

2026年の決算から見えてきたのは、量子コンピューティング業界が研究開発だけを評価する時代から、実際の商業化を評価する時代へ移り始めていることです。

技術ロードマップや量子ビット数だけでなく、売上高、受注、クラウド利用、顧客数、長期契約などが以前より重要になります。

特に注目したいのが、既存のクラウドやデータセンターとの統合です。

オラクルなど大手IT企業のインフラに量子コンピュータが組み込まれれば、企業が量子技術を利用するハードルは大幅に下がります。

2030年代に量子コンピューティング市場が本格的な成長期へ入ったとき、勝者になるのは最も高度な技術を発表した企業とは限りません。

技術を実際のサービスとして提供し、顧客を獲得し、継続的な売上へ変えられる企業こそが、量子コンピューティング時代の主導権を握る可能性があります。

情報ソース: Barron’s: “Quantum Computing Earnings Offered a Reality Check. What Comes Next.” (By Mackenzie Tatananni, Aug. 14, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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