クアルコム株下落、スマホ売上20%減 アップル離れを自動車とAIで埋められるか

  • 2026年7月30日
  • 2026年7月30日
  • BS余話

クアルコム(QCOM)は、7月29日のマーケット終了後に2026年度第3四半期決算を発表しました。売上高は市場予想を上回ったものの、利益と次四半期の見通しは期待に届かず、決算発表後の株価は下落しました。

背景にあるのは、主力であるスマートフォン向け半導体事業の減速と、アップル(AAPL)による自社製モデムへの移行です。一方、自動車、IoT、AIインフラでは成長が続いており、クアルコムは事業構造を大きく転換しようとしています。

本記事では、今回発表された決算内容を整理した上で、スマホ依存からの脱却と中長期的な成長可能性について分析します。

7月29日発表の第3四半期決算ハイライト

クアルコムの2026年度第3四半期は、売上高が前年同期比4%増の99億ドルとなり、ウォール街予想の約97億ドルを上回りました。

一方、調整後1株当たり利益(EPS)は前年同期比20%増の2.21ドルとなったものの、市場予想の2.24ドルには届きませんでした。

半導体部門全体の売上高は前年同期比5%減の85億ドル、税引前利益は同18%減の21億9000万ドルでした。主力の携帯端末向け売上高は約51億ドルと、前年同期比20%減少しています。

これに対して、自動車向け売上高は16億ドルで前年同期比61%増、IoT向けは18億ドルで同9%増となりました。スマートフォン向けが大きく落ち込む一方、非スマホ分野が成長を支える構図が鮮明になっています。

第4四半期見通しは市場予想を下回る

クアルコムは第4四半期について、売上高を97億ドル〜105億ドル、調整後EPSを2.05ドル〜2.25ドルと予想しました。

売上高の中心値は市場予想の約101億ドルとほぼ同水準ですが、EPSの予想上限は市場予想の2.38ドルを下回っています。売上規模を維持しても、利益率への圧力が続く可能性を示す内容です。

さらに、次期iPhone向けモデムの採用比率が、従来想定していた20%を大幅に下回る見通しも明らかになりました。アップルが自社開発モデムへの移行を進めることで、クアルコムのアップル向け売上減少は第4四半期から加速するとみられます。

スマホ依存からの脱却が最大の経営課題

今回の決算で最も注目すべき点は、携帯端末向け売上高が前年同期比20%減少したことです。

クアルコムは長年、スマートフォン向けの通信用半導体とライセンス収入を成長の柱としてきました。しかし、スマホ市場の成熟に加え、主要顧客であるアップルが独自モデムの採用を進めているため、従来の成長モデルを維持することは難しくなっています。

同社は、2025年度時点で売上高全体の72%を占める携帯端末関連の割合を、2029年度までに約33%へ引き下げる目標を掲げています。

これは単なる事業の多角化ではありません。スマホ中心の半導体メーカーから、自動車、産業機器、パソコン、AIインフラを支える総合コンピューティング企業へ移行する経営戦略です。

自動車事業が新たな収益の柱に成長

自動車向け売上高は前年同期比61%増の16億ドルとなり、今回の決算で最も高い成長率を記録しました。

自動車のデジタル化が進むなか、クアルコムの半導体は通信機能だけでなく、デジタルコックピット、運転支援、自動運転システムなどにも利用されています。

同社はBMW(BMW)グループとの戦略的提携を今後10年間にわたり拡大し、2031年からデジタルコックピットや自動運転システム向けの半導体を供給する計画です。

自動車向け半導体は、スマートフォンと比べて製品採用後の供給期間が長く、顧客との関係も長期化しやすい特徴があります。そのため、自動車事業の拡大は売上成長だけでなく、収益の安定性向上にもつながります。

AIインフラとデータセンター市場への挑戦

クアルコムが次の成長市場として重視しているのが、AIインフラとデータセンター分野です。

同社はAIインフラソフトウェア企業のモジュラーを39億ドルの株式交換で買収しました。モジュラーのソフトウェア技術を取り込むことで、AI半導体の性能だけでなく、開発環境を含めた総合的なプラットフォームの構築を目指しています。

AI半導体市場では、エヌビディア(NVDA)のCUDAを中心とするソフトウェア基盤が強固な競争力を持っています。クアルコムがデータセンター市場で存在感を高めるためには、ハードウェアだけでなく、開発者が利用しやすいソフトウェア環境を整備する必要があります。

また、2027年にはマイクロソフト(MSFT)、2028年にはメタ(META)向けにCPUや関連アーキテクチャを供給する計画も示されています。

クアルコムは、携帯端末以外の売上高を2029年度までに400億ドルへ倍増させる目標を掲げています。自動車とIoTに加え、データセンター事業が本格化すれば、売上構成は現在とは大きく変化する可能性があります。

短期的な減速と長期的な転換を分けて見る必要

今回の決算とガイダンスは、クアルコムが事業転換の過渡期にあることを示しています。

スマートフォン向け売上高の減少やアップル向け事業の縮小は、短期的には業績の重荷となります。非スマホ分野が成長していても、現時点では携帯端末事業の減少を完全に補える規模には達していません。

一方で、自動車向け売上高の大幅な伸びや、BMWとの長期契約、モジュラーの買収、マイクロソフトやメタ向けデータセンター製品の計画は、事業構造の変化が具体的な段階に入ったことを示しています。

クアルコムを評価する際には、目先のスマホ事業の減速だけでなく、非スマホ事業がどの程度のスピードで成長し、利益に貢献するのかを確認する必要があります。

総括:スマホ半導体企業から総合コンピューティング企業へ

クアルコムの2026年度第3四半期決算は、売上高が市場予想を上回った一方、利益と次四半期見通しは期待に届きませんでした。

スマートフォン向け事業では、需要の低迷とアップルによる自社製モデムへの移行という構造的な逆風が続いています。短期的には、売上高と利益率の両面で不安定な状況が続く可能性があります。

しかし、自動車、IoT、AIインフラ、データセンターといった分野では、次の成長に向けた基盤が着実に構築されています。

クアルコムは現在、スマートフォン向け部品メーカーから、幅広い機器やデータセンターを支える総合コンピューティング企業へ変わろうとしています。

今後の焦点は、将来の成長計画そのものではなく、それを予定通り売上高と利益に結びつけられるかという実行力です。2027年以降のデータセンター製品の出荷と、自動車向け事業の継続的な成長が、同社の企業価値を左右する重要な要素となります。

情報ソース: Barron’s: “ Qualcomm’s Shares Fall After Earnings Miss” (By Janet H. Cho, July 29, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「スマホ依存からの脱却と「AI推論」への賭け:クアルコムが描くデータセンター覇権のシナリオ

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