本ブログは前回の記事で、AI開発をめぐる安全性への警戒が強まるなか、クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)やパロアルト・ネットワークス(PANW)などサイバーセキュリティ株が急騰し、AI相場の資金が「作る企業」から「守る企業」へ広がり始めていることを紹介しました。
「AI相場は『作る』から『守る』へ クラウドストライクとパロアルトの急騰が示す次の成長市場」
そして、その流れを裏付けるような新たな分析が出ています。
米投資情報誌バロンズは2026年9月15日付の記事で、JPモルガンがAI普及の恩恵を受ける可能性が高いサイバーセキュリティ企業として5社を有望視していることを紹介しました。
クラウドストライクとパロアルト・ネットワークスに加え、オクタ(OKTA)、Zスケーラー(ZS)、バロニス・システムズ(VRNS)が挙げられています。
前回の記事がサイバーセキュリティ株全体への資金流入を取り上げたのに対し、今回は「AI時代のセキュリティ需要を、どの企業が取り込むのか」という銘柄選別に一歩踏み込んだ内容です。
AIが生み出すセキュリティ需要は3年間で4,300億ドル超
記事では、JPモルガンのアナリスト、ブライアン・エセックス氏が、AI導入の拡大そのものが新たなサイバーセキュリティ需要を生み出しているとの見方を示しています。
生成AIやAIエージェントを企業が業務に組み込むほど、守るべき対象も増加します。
従来のPCやサーバーに加え、AIモデル、クラウド環境、企業データ、従業員のID、さらに自律的に業務を行うAIエージェントまで管理する必要が出てくるためです。
JPモルガンの試算では、AI普及によって今後3年間に追加で発生するセキュリティ支出は4,300億ドルを超える可能性があります。
AI投資というとエヌビディア(NVDA)のGPUやデータセンター建設が注目されがちですが、インフラが増えれば、それを守るための支出も増えます。前回取り上げたサイバーセキュリティ株への資金流入には、こうした中長期的な成長期待も背景にあります。
クラウドストライクとパロアルトはプラットフォーム力を評価
JPモルガンが5社の中でも有力視しているのが、クラウドストライクとパロアルト・ネットワークスです。
両社に共通する強みは、特定のセキュリティ製品だけではなく、幅広い機能を統合したプラットフォームを提供している点です。
クラウドストライクはエンドポイントセキュリティからクラウド、ID保護などへ事業領域を拡大しています。
パロアルト・ネットワークスもネットワーク、クラウド、セキュリティ運用などをまとめるプラットフォーム戦略を進めています。
AIによって攻撃対象や攻撃手法が複雑になれば、企業にとって複数のセキュリティ製品を個別に管理する負担も大きくなります。
そのため、幅広い防御機能を1つのプラットフォームで提供できる企業が優位になりやすいと考えられます。
オクタはAIエージェントの「身分証」を握る
オクタはID管理とアクセス管理を得意としています。
AIエージェントの普及によって、この分野の重要性はさらに高まる可能性があります。
今後、企業システムへアクセスするのは人間だけではありません。AIがメールを読み、データベースを検索し、社内システムを操作するといった使い方が広がります。
そこで重要になるのが、誰がどの情報へアクセスできるのかという権限管理です。
AIエージェントに必要以上の権限を与えれば、情報漏えいや不正アクセスにつながる可能性があります。AI利用が増えるほど、IDを正しく認証し、アクセス範囲を制御するオクタの役割も大きくなります。
Zスケーラーは増え続けるAI通信を守る
Zスケーラーは、ゼロトラスト型のクラウドセキュリティを提供しています。
企業システムのクラウド移行に加え、生成AIサービスとの通信が急増すれば、社内ネットワークの内側なら安全という従来型の考え方では対応が難しくなります。
利用者や端末、アクセス先ごとに安全性を確認するゼロトラストの必要性は一段と高まります。
AIインフラの拡大はGPUやサーバーの需要だけでなく、そこを流れる膨大なデータを監視するセキュリティ需要にもつながるため、ZスケーラーもAI投資の間接的な恩恵を受ける可能性があります。
バロニスは「AIに何を見せるか」を管理
5社の中で比較的小規模ながら、AIエージェント時代ならではの存在として注目されているのがバロニス・システムズです。
同社は企業が保有するデータの場所やアクセス権限を把握し、機密情報が不必要に公開されていないかを管理するデータセキュリティを得意としています。
AIエージェントが社内データへ直接アクセスするようになると、「AIにどの情報まで見せてよいのか」という問題が生まれます。
AIを便利に使うためには幅広いデータへのアクセスが必要になる一方、権限を広げすぎれば機密情報流出のリスクが高まります。
データそのものを守るバロニス・システムズの技術は、AIエージェントが普及するほど重要性を増す可能性があります。
本当の業績効果は2026年第4四半期から
株式市場ではすでにサイバーセキュリティ企業への期待が高まっていますが、JPモルガンが注目しているのは、その期待が実際の業績へつながるタイミングです。
企業向けセキュリティ製品は商談開始から契約まで一定の時間を要するため、AIインフラ投資の拡大がすぐに売上へ反映されるわけではありません。
バロンズの記事では、商談が本格的に契約へ転換するのは2026年第4四半期からで、2027年にかけて成長が加速する可能性が紹介されています。
ここは投資家にとって重要なポイントです。
前回の記事で取り上げた株価上昇が一時的なテーマ物色で終わるのか、それとも実際の受注やARR(年間経常収益)の拡大へつながるのか。その答えが2026年第4四半期以降の決算で徐々に見えてきます。
AI相場は「守る企業」の業績を確認する段階へ
前回の記事では、AI開発をめぐる安全性への警戒からクラウドストライクやパロアルト・ネットワークスなどに資金が流れ、AI相場が「作る」から「守る」へ広がる可能性を取り上げました。
今回のJPモルガンの分析は、その流れをより具体的な投資テーマとして示しています。
クラウドストライクとパロアルト・ネットワークスは総合型プラットフォーム、オクタはID管理、Zスケーラーはゼロトラスト、バロニス・システムズはデータ保護と、それぞれ異なる角度からAI時代のセキュリティ需要を取り込もうとしています。
今後の焦点は株価の勢いだけではありません。
2026年第4四半期から2027年にかけて、新規契約、ARR、顧客単価、セキュリティ予算が実際に伸びるのかを確認することが重要です。
AI相場の次の成長市場としてサイバーセキュリティが定着するかどうかは、これから業績という数字で試される段階に入ります。
情報ソース: Barron’s: “AI Is Boosting Cybersecurity. CrowdStrike and 4 More Stocks to Buy.” (By Adam Clark, Sept. 15, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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