IBMを襲った「AI予算の奪い合い」 第2四半期決算が映すソフトウェア企業の誤算

  • 2026年7月23日
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老舗IT企業のIBM(IBM)は、2026年7月22日の米国市場終了後に第2四半期決算を発表しました。

今回の決算は、株式市場に大きな動揺を与えた7月14日の暫定決算発表を受けたものです。暫定発表では業績見通しの悪化が示唆され、AI関連の成長期待が後退したとの見方から、IBM株は1日で25%急落しました。

本記事では、今回発表された決算内容と業績見通しを整理したうえで、顧客企業によるAI関連予算の配分変化がIBMに与えた影響と、今後の成長可能性について分析します。

第2四半期決算は増収増益ながら市場予想に届かず

IBMの2026年第2四半期の売上高は172億ドルとなり、前年同期比で1%増加しました。調整後1株当たり利益(EPS)は2.93ドルで、前年同期比5%増となっています。

売上高と利益は前年同期を上回ったものの、7月14日の暫定発表前に市場が予想していた水準には届きませんでした。アナリスト予想は売上高174億8000万ドル、調整後EPS2.95ドルでした。

IBMは2026年通期の売上高成長率見通しについても修正しています。恒常為替レートベースの成長率予想を、従来の「5%超」から「4%から5%の範囲」へ引き下げました。

一方、年間フリーキャッシュフローについては、2025年から約10億ドル増加するとの従来予想を維持しています。また、第2四半期には16億ドルを配当として株主に還元しました。

通期の売上高見通しは引き下げられましたが、キャッシュフローと株主還元の計画には大きな変化がありません。成長鈍化への警戒と財務基盤の安定性が同時に示された決算となりました。

数十件の大型契約が期末までに締結できず

今回の売上未達の背景には、顧客企業の投資配分の変化があります。

IBMのジェームズ・カバノーCFOは、6月最終週に顧客企業がサーバー、ストレージ、メモリなどのAIインフラ関連製品へ資金を集中させたと説明しています。

その結果、IBMが予定していた数十件の大型契約が想定した時期までに締結されず、売上高が市場予想を下回る主要因となりました。

アービンド・クリシュナCEOも決算説明会で、第2四半期は案件の実行力という面で十分な成果を出せなかったことを認めています。

需要そのものが失われたというよりも、顧客企業の投資優先順位が急速に変わったことで、一部の契約締結が先送りされた可能性があります。ただし、契約が延期された案件を今後確実に受注できるかは現時点では不透明です。

IBMを襲った「AI予算の奪い合い」

現在、多くの企業がAI活用の前提となる計算基盤の確保を急いでいます。GPU、サーバー、ストレージ、メモリなどへの投資が優先され、ソフトウェアやコンサルティングサービスへの支出が後回しになる動きが広がっています。

企業のIT予算が無制限ではない以上、AIハードウェアへの支出が急増すれば、ほかの分野に配分される予算は圧迫されます。今回のIBM決算は、AI投資ブームがすべてのIT企業に同じ恩恵をもたらすわけではないことを示しました。

IBMはハイブリッドクラウド、企業向けAI、ソフトウェア、コンサルティングを成長の柱としています。このため、顧客の予算がAIハードウェアへ集中すれば、短期的にはIBMの契約や売上計上の時期に影響が出ます。

AI市場が拡大しているにもかかわらず、その予算を巡る競争によってソフトウェア企業の成長が一時的に圧迫されるという構図です。

AIインフラ整備後の需要を取り込めるか

AIインフラの導入だけで、企業のAI活用が完結するわけではありません。導入したシステムを実際の業務へ組み込み、データを管理し、安全性を確保しながら運用するためには、ソフトウェアやコンサルティングサービスが必要です。

AIサーバーやストレージの整備が一巡した後には、それらを活用するためのソフトウェア、データ管理、セキュリティ、業務改革などへの需要が拡大する可能性があります。

IBMにとって重要なのは、この次の投資段階で主導権を握れるかです。企業向けITシステムに関する長年の経験や顧客基盤は強みですが、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットなどとの競争も続いています。

先送りされた大型契約を回収するだけでなく、新たなAI関連需要を継続的な売上へ変えられるかが、IBMの将来性を判断するポイントになります。

売上未達でもキャッシュ創出力は維持

成長率見通しの引き下げは、IBMにとって明確なマイナス材料です。一方で、売上高と調整後EPSは前年同期比で増加しており、事業が急激に縮小しているわけではありません。

特に注目されるのが、フリーキャッシュフロー見通しを維持した点です。年間フリーキャッシュフローを前年比で約10億ドル増加させる計画に変更はなく、第2四半期には16億ドルの配当も実施しました。

売上高の伸びが鈍化する局面でもキャッシュを生み出し、株主還元を継続できることは、IBMの財務基盤の強さを示しています。

7月14日に記録した25%の株価急落は、AI関連の成長期待が大きく後退したことを反映した動きです。ただし、今回の決算だけでIBMのキャッシュ創出力や配当能力まで大きく損なわれたとは判断できません。

IBMの今後を左右する3つの焦点

IBMが再び市場の信頼を取り戻すためには、まず先送りされた大型契約を確実に受注し、売上へつなげる必要があります。

次に、経営陣が認めた実行力の問題を改善できるかが問われます。市場は今後の決算で、契約遅延が一時的な問題だったのか、それとも競争力や営業体制に関する構造的な問題なのかを見極めることになります。

さらに、AIインフラ投資の次に訪れるソフトウェアやサービスへの需要を取り込めるかも重要です。IBMが企業のAI導入、データ管理、システム統合、セキュリティなどの分野で存在感を高められれば、現在の投資先送りが将来の需要拡大につながる可能性があります。

通期売上高成長率の見通しは4%から5%へ引き下げられましたが、成熟したIT企業として一定の成長は維持しています。

IBMを評価する際には、AI関連の高成長企業と同じような急拡大を期待するのではなく、安定したキャッシュフロー、配当、企業向けIT市場における顧客基盤を含めて判断する必要があります。

今回の決算が示したのは、AIブームの終わりではありません。限られた企業予算を巡り、ハードウェア、ソフトウェア、サービス各社の間で激しい奪い合いが始まっているという現実です。IBMがその競争を乗り越え、AI投資の次の段階で成長を取り戻せるかが今後の焦点となります。

情報ソース: MarketWatch: “ IBM just cut its outlook, but not by as much as investors feared” (By Hannah Pedone, July 22, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら IBM

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