IBM株が歴史的暴落 AI成長企業の期待が崩れた本当の理由

  • 2026年7月19日
  • 2026年7月19日
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テクノロジー業界を長年けん引してきたIBM(IBM)が、大きな転換点を迎えています。

直近1週間で発生した歴史的な株価暴落は、単なる決算の一時的な悪化ではありません。IBMが抱える構造的な課題と、AI企業としての成長を期待していた市場との間に、大きな隔たりが生じていたことを示しています。

本記事では、今回発表された業績や株価下落の背景を整理しながら、IBMの現状と今後の将来性について考察します。

AI成長企業への期待が一気に崩れたIBM株

今回の株価暴落を理解するためには、まず市場がIBMに寄せていた期待の大きさを確認する必要があります。

2026年6月2日時点でIBM株は過去最高値圏にあり、PER(株価収益率)は25倍を超えていました。当時のS&P500のPERが21.52倍だったことを考えると、IBMは成熟したIT企業ではなく、AIやソフトウェアを成長の柱とするテクノロジー企業として高く評価されていたことがわかります。

しかし、その期待は異例の業績事前発表によって一気に崩れました。IBMが決算を事前発表するのは2008年10月以来で、第2四半期の業績がウォール街の予想を下回ることが明らかになりました。

株価は1日で25%下落し、週間では26%安を記録しました。これはIBM史上最大の週間下落率で、時価総額にして約700億ドルが失われた計算です。

特に市場を失望させたのが、ソフトウェア事業の成長率でした。事前に12%程度の成長が期待されていた一方、実際の伸び率は5%にとどまりました。

IBMの株価には、AI需要を取り込み、ソフトウェア企業として再成長するシナリオが織り込まれていました。しかし、その前提が揺らいだことで、株価の急激な調整につながったと考えられます。

大型案件の遅れが示すIBMの実行力不足

IBMのアービンド・クリシュナCEOは、業績が予想を下回った理由について、多数の大型案件が想定していた期間内に成約しなかったと説明しています。

一見すると、契約時期がずれただけの一時的な問題にも見えます。しかし、市場はより深刻に受け止めました。

企業のIT投資判断が慎重になっている可能性に加え、AI関連予算がIBMではなく、より専門性の高いクラウド企業や新興AI企業へ向かっている可能性があるためです。

高いPERを維持するためには、期待どおりに大型案件を獲得し、売上高と利益を確実に伸ばす必要があります。ところが今回、IBMはその実行力に疑問を持たれる結果となりました。

案件が今後成約すれば業績が回復する余地は残されていますが、市場の信頼を取り戻すには、言葉ではなく実際の受注と収益成長を示す必要があります。

メインフレーム事業に迫るAIによる変革

今回の決算で、もう一つ注目されたのがインフラストラクチャー事業の収益が7%減少したことです。

この事業には、金融機関や大企業の基幹システムで利用されるメインフレームのハードウェアや関連ソフトウェアが含まれています。

IBMの「Z Mainframe Servers」は、2022年の調査で世界の取引金額の半分以上を処理していると報告されました。メインフレームは信頼性や安全性が高く、企業が簡単に他社製品へ移行できないため、IBMに安定した収益をもたらしてきました。

しかし、その強固な事業基盤にもAIの影響が及び始めています。

アンソロピックはAIツール「Claude Code」を活用し、COBOLで構築された古いシステムを近代化するためのプレイブックを発表しました。

これまで企業がメインフレームから移行できなかった大きな理由は、古いプログラムの解読や書き換えに莫大な費用と時間がかかることでした。移行中にシステム障害が発生するリスクも高く、結果としてIBM製品を使い続ける企業が多く存在していました。

しかし、AIによって古いコードの分析や最新言語への変換が効率化されれば、メインフレームからクラウド環境へ移行するハードルが下がります。

インフラ事業の7%減収だけで、メインフレーム離れが本格化したと断定することはできません。ただし、AIがIBMの強みを守る技術ではなく、顧客のIBM離れを支援する技術として利用される可能性は無視できません。

PER低下は割安ではなく期待値の修正か

株価暴落を受け、アナリストの評価も急速に悪化しています。

オッペンハイマーはIBM株を格下げし、BNPパリバは「アンダーパフォーム」と評価しました。7月15日時点で、IBMのPERは16.54倍まで低下し、2024年6月以来の低水準となっています。

PERが大きく下がったことで、IBM株を割安と見る投資家もいるかもしれません。

しかし、PERの低下は株価が安くなったことだけを意味するものではありません。市場がIBMを高成長のAI企業ではなく、成長率の低い成熟企業として再評価し始めた可能性があります。

現在のIBMは、従来のインフラ事業が減収となる一方、成長を期待されていたソフトウェア事業も市場予想を下回っています。

既存事業の縮小を新規事業の成長で補うという戦略が、現時点では十分な成果を上げていません。そのため、現在のPERは割安というよりも、成長期待の剥落を反映した水準と見る必要があります。

IBMの将来を左右する2つの成長速度

IBMの将来性を判断するうえで重要なのは、レガシー事業が縮小する速度と、AI・ソフトウェア事業が成長する速度のどちらが上回るかです。

メインフレーム事業は今後も一定の需要を維持すると考えられます。金融機関や政府機関などの重要システムを短期間で全面移行することは容易ではありません。

一方で、生成AIによってシステム移行の費用や期間が短縮されれば、IBMが長年築いてきた顧客の囲い込み効果は弱まります。

IBMに求められているのは、単にAI関連サービスを提供することではありません。自社の既存事業がAIによって破壊される前に、ソフトウェア、ハイブリッドクラウド、コンサルティングといった成長領域で、より大きな収益を生み出す必要があります。

今回の株価暴落は、IBMが消滅することを意味するものではありません。しかし、市場が同社の成長シナリオを厳しく見直し始めたことは明らかです。

今後は、大型案件を確実に受注できるか、ソフトウェア事業の成長率を再び高められるか、そしてメインフレーム事業の減収を抑えられるかが焦点となります。

IBMが再び市場の評価を取り戻すには、過去の強みに依存するのではなく、自社のビジネスモデルそのものを変革する必要があります。今回の歴史的な株価暴落は、その変革に残された時間が短くなっていることを市場が突きつけた出来事といえます。

情報ソース: Barron’s: “After an Epic Fall, IBM Faces a Long Road Back to Relevance” (By Mackenzie Tatananni, July 17, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら IBM

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