24年ぶり急騰のIBMが量子コンピューター相場の主役に 米国政府支援で浮上する次世代インフラ企業

  • 2026年5月23日
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前回の記事「米国政府が量子株に巨額支援 IBM・リゲッティ・ディーウェーブ急騰の理由」では、米国政府による量子コンピューター分野への巨額支援をきっかけに、IBM(IBM)、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)、ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)などの量子関連銘柄が急騰した背景を取り上げました。

今回の続編では、その後さらに注目度を高めたIBMの株価動向に焦点を当てます。

2026年5月第3週の米国株式市場で、IBMは週間で約16%上昇しました。これは2002年10月以来、約24年ぶりとなる強い週間パフォーマンスです。

老舗IT企業であるIBMがここまで大きく買われた背景には、単なる好材料ではなく、量子コンピューターが米国の国家戦略に組み込まれつつあるという大きな構造変化があります。

米国政府20億ドル投資が示す量子技術の戦略的重要性

今回の報道で市場が強く反応した理由は、トランプ政権が量子産業全体に20億ドル規模の資金を投じる方針を示したことです。

そのうち10億ドルは、IBMが新設する独立型量子ファウンドリ「アンデロン」に割り当てられるとされています。

この動きの重要性は、量子コンピューターが単なる研究開発テーマではなく、国家安全保障に直結する戦略技術として位置付けられ始めた点にあります。

量子技術は、将来的に暗号解読、新素材開発、医薬品開発、金融シミュレーション、防衛分野などに大きな影響を与える可能性があります。つまり、AIや半導体と同じように、国家間の競争力を左右する基盤技術になる可能性があるということです。

特に米国が警戒しているのは、中国の量子技術の進展です。中国科学技術大学が光量子コンピューター「Jiuzhang 4.0」を発表したことは、中国が量子分野で存在感を高めていることを示しています。

今回の20億ドル投資は、量子産業への単なる補助金ではなく、中国に対抗するための国家戦略の一部と見るべきです。半導体分野で米国政府が国内生産能力の強化に動いたように、量子コンピューターでも米国内に中核的な技術基盤を確保しようとしていると考えられます。

IBMは研究企業から量子インフラ企業へ変わるのか

IBMは以前から量子コンピューター分野で研究開発を続けてきました。しかし、これまでの研究成果や実験結果に対する株式市場の反応は限定的でした。

たとえば、クリーブランド・クリニックとの実験結果や中性子散乱実験に関する発表があっても、IBM株が今回のように大きく動くことはありませんでした。

今回、市場が強く反応した理由は、IBMの量子事業が研究開発段階から、商業化を見据えたインフラ事業へ移行する可能性が高まったためです。

特に注目すべきなのは、IBMが新たに設立する組織を「ファウンドリ」と位置付けている点です。

半導体業界では、TSMC(TSM)が受託製造モデルで圧倒的な地位を築きました。同じように、IBMは量子コンピューター時代の基盤技術を提供するインフラ企業としての立ち位置を狙っている可能性があります。

量子コンピューターは、まだ本格的な商業化には時間がかかる分野です。しかし、政府資金が入ることで、IBMの量子事業は不確実性の高い研究テーマから、国家予算に支えられる戦略インフラへと性格を変えつつあります。

市場はこの変化を評価し、IBM株を大きく買い上げたと考えられます。

量子関連銘柄にも買いが広がる

今回の米国政府の動きは、IBMだけでなく、量子コンピューター専業企業にも大きな追い風となりました。

5月22日の市場では、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)が約20%、ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)が14%、インフレクション(INFQ)が11%、イオンキュー(IONQ)が8%上昇しました。

これらの量子専業企業は、成長期待が大きい一方で、売上規模や利益面ではまだ不安定な企業が多いです。そのため、これまでは経営者の発言や投資家心理によって株価が大きく振れやすい傾向がありました。

しかし、今回の報道では、米国政府が単に資金を提供するだけでなく、リゲッティ・コンピューティング、ディーウェーブ・クオンタム、インフレクションなどの小規模企業の株式を取得する方針を示した点が重要です。

政府が株主になるということは、単なる補助金以上の意味を持ちます。企業側から見れば、信用力の向上につながります。投資家側から見れば、政府が支援する戦略分野の企業として、生き残りの可能性が高まったと受け止められます。

もちろん、政府の支援があるからといって、すべての企業が成功するわけではありません。量子コンピューターには複数の技術方式があり、どの企業のアプローチが最終的に主流になるかはまだ見えていません。

それでも、政府が資金面で関与することで、量子関連銘柄全体の投資テーマとしての存在感は大きく高まったと言えます。

量子コンピューターは未来の話から投資テーマへ

これまで量子コンピューターは、将来性は大きいものの、実用化には長い時間がかかる技術として見られてきました。そのため、株式市場でも一部の投資家が注目するテーマにとどまっていました。

しかし、今回の米国政府による20億ドル規模の投資は、量子コンピューターが国家戦略セクターとして本格的に扱われ始めたことを示しています。

AI、半導体、宇宙、防衛と同じように、量子技術も米国の産業政策と安全保障政策の中心に入りつつあります。

この点は、投資家にとって重要です。量子コンピューター関連銘柄は、短期的には株価変動が非常に大きく、投機的な側面もあります。一方で、政府資金、国家安全保障、技術覇権という大きなテーマが重なることで、中長期的な市場の関心は続く可能性があります。

IBMと量子専業企業は分けて考える必要がある

今後の投資戦略を考えるうえでは、IBMのような大型株と、量子専業の新興企業を分けて考える必要があります。

IBMは、既存事業による売上基盤を持ちながら、量子コンピューター分野でインフラ企業としての地位を狙う存在です。株価の安定性や事業の多角化という点では、量子関連銘柄の中でも比較的リスクを抑えた選択肢と見ることができます。

一方、リゲッティ・コンピューティング、ディーウェーブ・クオンタム、イオンキューなどの専業企業は、成功した場合の成長余地が大きい反面、技術開発、資金繰り、商業化の遅れといったリスクも大きくなります。

これらの銘柄は、ポートフォリオの中心に据えるというより、成長テーマへのサテライト投資として位置付けるほうが現実的です。

IBM急騰は量子相場の本格化を示すサインか

今回のIBM急騰は、単なる一企業の株価上昇ではありません。量子コンピューターが米国の国家戦略として明確に位置付けられたことを市場が評価した動きです。

前回の記事で取り上げたように、量子関連銘柄は米国政府の資金支援報道をきっかけに大きく動きました。今回のIBMの24年ぶりの週間上昇は、その流れが一時的な投機ではなく、より大きなテーマへ発展する可能性を示しています。

AIブームの次に来る大型テーマとして、量子関連銘柄への注目は今後さらに高まる可能性があります。

ただし、量子コンピューター分野はまだ技術的な不確実性が大きく、実用化や収益化までの道のりも簡単ではありません。投資家は、テーマ性だけで飛びつくのではなく、政府支援の内容、各社の技術方式、財務体質、商業化の進捗を冷静に見極める必要があります。

情報ソース:Barron’s: “IBM Stock Just Had Its Best Week in 24 Years” (By Mackenzie Tatananni and George Glover, May 22, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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