新生バークシャー・ハサウェイのQ1大転換 アルファベット集中投資が示す新時代の投資戦略

ウォーレン・バフェット氏の後継者として、グレッグ・アベル氏がバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)のCEOに就任して以降、同社の投資戦略にどのような変化が起きるのかは、世界中の投資家が注目してきました。

その答えの一端が、2026年第1四半期のポートフォリオ動向に表れました。米投資情報誌バロンズによると、バークシャーはこの四半期に大規模な銘柄入れ替えを実施し、ビザ(V)、マスターカード(MA)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)などを全株売却しました。

一方で、アルファベット(GOOGL)の持ち株を大幅に増やし、さらにデルタ航空(DAL)やニューヨーク・タイムズ(NYT)にも大きく資金を振り向けました。これは単なる売買の記録ではなく、新生バークシャーがどのような投資哲学で次の時代に向かうのかを示す重要なシグナルと考えられます。

コームズ銘柄の整理が意味するもの

今回の最大の注目点は、トッド・コームズ氏が管理していたとみられる銘柄の多くが売却されたことです。コームズ氏はバークシャーの投資担当者として知られてきましたが、JPモルガン・チェース(JPM)へ移籍したことで、同氏が関与していた投資ポジションの整理が進んだとみられます。

ビザやマスターカードは決済ネットワークを支配する優良企業であり、アマゾンもクラウドやECで圧倒的な地位を持つ巨大企業です。ユナイテッドヘルスも米国医療保険分野の代表的な銘柄です。

そのため、これらの売却を単純に「企業の将来性を否定した」と見るのは早計です。むしろ、アベル新CEOのもとで、過去の投資判断をいったん整理し、より明確な優先順位に基づいて資金を再配分していると考える方が自然です。

バークシャーは長年、安定したキャッシュフローを持つ企業に長期投資することで知られてきました。しかし今回の動きからは、単なる分散投資ではなく、より確信度の高い銘柄に資金を集中させる姿勢が見えてきます。

アルファベットへの大幅買い増しが示す強い確信

売却で得た資金の大きな受け皿となったのが、アルファベットです。バークシャーは同社株を昨年末の約1800万株から約5800万株へと大幅に増やし、保有価値は約230億ドル規模に達したと報じられています。

これは非常に象徴的な動きです。バークシャーはアマゾンを売却する一方で、アルファベットには大きく資金を投じました。つまり、巨大テックの中でも、検索、広告、クラウド、AI、YouTubeといった複数の成長エンジンを持つアルファベットを、より魅力的な投資先と判断した可能性があります。

特にAI時代において、アルファベットは単なる検索企業ではありません。独自のAIモデル、クラウド基盤、広告データ、動画プラットフォームを持ち、AIを収益化するための土台を幅広く備えています。

バークシャーがここまで大きく買い増したことは、アルファベットの長期的な競争優位性に対する強い信任投票と見ることができます。

デルタ航空への投資はバリュー投資の復活か

一方で、バークシャーらしいバリュー投資の色も残っています。その代表例がデルタ航空です。報道によると、バークシャーはデルタ航空株を約4000万株、約30億ドル規模で新規取得しました。

航空株は景気敏感株の代表格です。燃料価格、人件費、景気後退、感染症リスクなど、多くの外部要因に左右されます。バフェット氏は過去に航空株投資で苦い経験もしています。

それでも今回、デルタ航空に大きく投資したということは、同社の収益力やブランド力、旅行需要の底堅さを評価している可能性があります。特に米国ではプレミアム需要や法人需要、ロイヤルティプログラムの価値が高まっており、航空会社のビジネスモデルは以前よりも強くなっている面があります。

バークシャーの投資が明らかになったことで、デルタ航空株が5月15日の時間外で上昇したことも、市場がこの動きをポジティブに受け止めた証拠です。

ニューヨーク・タイムズ買い増しの意味

もう一つ興味深いのが、ニューヨーク・タイムズ株の買い増しです。バークシャーは同社株を3倍に増やし、約1500万株を保有する規模になったとされています。

一見すると、AIやクラウドの時代に新聞社への投資は古く見えるかもしれません。しかし、ニューヨーク・タイムズは単なる新聞社ではなく、デジタル購読モデルを確立したメディア企業です。

情報が氾濫する時代だからこそ、信頼できるブランド、独自コンテンツ、有料購読者基盤を持つ企業の価値は高まります。バークシャーが同社を買い増した背景には、長期的に安定したキャッシュフローを生む「情報ブランド」としての評価があると考えられます。

シェブロン売却とコア銘柄の維持

一方で、エネルギー分野ではシェブロン(CVX)の保有を大きく減らしました。約4600万株、推定約80億ドル分を売却したとされます。

これはエネルギー市場への弱気というよりも、株価上昇後の利益確定や、より魅力的な投資先への資金移動と見るべきです。実際、バークシャーは今期に約160億ドルの株式を購入する一方、約240億ドルを売却しており、全体では売り越しとなっています。

ただし、アップル(AAPL)、コカ・コーラ(KO)、アメリカン・エキスプレス(AXP)、ムーディーズ(MCO)といった中核銘柄には手を加えていません。これは、アベル体制になってもバークシャーの根幹にある長期保有の哲学は維持されていることを示しています。

つまり、変えるべき部分は大胆に変え、守るべき中核は守るという姿勢です。

まとめ

2026年第1四半期のバークシャー・ハサウェイの動きは、新体制の方向性を示す重要な転換点です。

コームズ氏関連とみられる銘柄を整理し、ビザ、マスターカード、アマゾン、ユナイテッドヘルスなどを完全に売却する一方で、アルファベットへ大きく資金を集中しました。さらに、デルタ航空やニューヨーク・タイムズのようなバリュー色のある銘柄にも投資を拡大しています。

これは、バフェット時代の長期投資哲学を受け継ぎながらも、アベル新体制がより明確な「選択と集中」に踏み出したことを意味します。

バークシャーは今後も、単なる保守的な投資会社ではなく、AI時代の勝者を見極めながら、割安な伝統企業にも資金を配分する柔軟な投資会社へ進化していく可能性があります。

新生バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ変化は、米国株市場全体にとっても重要なメッセージです。投資家にとっては、同社がどの銘柄を売り、どの銘柄に資金を集中させているのかを追うことが、今後の市場の方向性を考えるうえで大きなヒントになります。

情報ソース:Barron’s “Berkshire Boosted Stake in Alphabet in First Quarter, Bought Delta Air, Sold Visa, Mastercard”(By Andrew Bary, May 15, 2026)

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

*過去記事「新CEOアベル氏が明言!バークシャーが「一生持ち続ける」と決めた最強の4銘柄とは?」

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