✨ この記事でわかること
- アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルが新たな「Geminiエージェント」を発表。AIが指示に答えるだけでなく、複数のアプリを使って業務を自律的に実行する時代が近づいています。
- 企業向けAI市場では、マイクロソフト(MSFT)、オープンAI、メタ・プラットフォームズ(META)、アンソロピックなどとの競争が激化しています。
- グーグル・クラウドの顧客の約80%が同社のAI製品を利用。AIエージェントは新たな成長機会となる一方、収益化には不透明な部分も残っています。
グーグルが「デジタル社員」となるAIを発表
米金融専門誌バロンズは10月8日、「Google Escalates the AI Agent Wars With Its New Gemini Agent」と題する記事を公開しました。
この記事では、グーグルが発表した新たなAIエージェントの特徴と、企業向けAI市場で激化する競争について取り上げています。
グーグルの親会社アルファベットにとって、今回の発表はAI事業の成長を左右する重要な取り組みとなりそうです。
従来の生成AIは、利用者が質問すると回答するチャットボットとして普及してきました。しかし、今回発表されたGeminiエージェントは、質問への回答にとどまらず、実際の業務を自律的に進めることを目指しています。
例えば、GmailやGoogleドキュメントなど、Google Workspaceの複数のアプリを横断して作業できます。
さらに、ソフトウェアコードの生成、画像やメディアの制作、スケジュール管理などにも対応します。
注目されるのは、グーグル以外のソフトウェアや利用者のデータにもアクセスできる点です。
企業内に分散している情報やツールをAIが活用できれば、これまで人間が複数のアプリを操作していた業務を効率化できる可能性があります。
グーグルは9月30日にも新しいAIモデル「Gemini 4 Argon」を発表しており、AIの性能向上と実際の業務への活用を並行して進めています。
関連記事:グーグル新AI「Gemini 4 Argon」発表 GPT-6 Astraの5分の1の価格でオープンAIに対抗
AIが個人の助手から企業のチームメンバーへ
バロンズの記事では、グーグル・クラウドのトーマス・クリアンCEOによる新しいAIエージェントの位置付けも紹介されています。
グーグルが目指しているのは、単に個人の作業を手伝うAIではありません。
企業のチーム内でプロジェクト管理を支援したり、財務部門で分析業務を担当したりするなど、特定の役割を持つAIの活用を想定しています。
つまり、AIを便利なソフトウェアとして提供する段階から、実際の業務を担当するデジタル社員として活用する段階への進化です。
グーグルは、金融、法律、政府、医療、小売業など、業界ごとの専門的な業務に対応するGemini製品の投入も計画しています。
こうした業界では、一般的な文章作成とは異なり、専門知識や既存システムとの連携が重要になります。
業界別のAIエージェントが普及すれば、企業がAIに支払う費用の増加につながる可能性があります。
グーグルの強みは既存の企業顧客
企業向けAI市場でグーグルが持つ重要な武器は、すでに構築している顧客基盤です。
記事によると、グーグルはグーグル・クラウドの顧客の約80%が同社のAI製品を利用していると説明しています。
さらに、Fortune 100企業の約90%がGemini Enterpriseを利用しているとしています。
これらはグーグルが示した数字であり、利用企業すべてがAIを大規模に導入していることを意味するわけではありません。
それでも、すでに多くの大企業と取引関係を持っていることは、新しいAIサービスを販売するうえで大きな強みとなります。
AIエージェントの普及が進めば、クラウドサービスの利用拡大だけでなく、高機能なAIサービスによる追加収益も期待できます。
また、AIサービスを大規模に提供するには、それを支える計算資源も重要です。グーグルは独自のAI半導体「TPU」を長年開発しており、こうしたインフラ面の強みも競争力につながります。
関連記事:グーグルのAI競争力はなぜ強いのか TPUと計算資源で見るアルファベット株の将来性
マイクロソフトやオープンAIとの競争が激化
一方、企業向けAIエージェント市場には強力な競争相手が存在します。
バロンズの記事では、オープンAIが前週に企業向けAIエージェント「Dots」を発表したことや、マイクロソフトが前月に関連サービスを刷新したことが紹介されています。
オープンAIのDotsも、従来のチャットボットとは異なり、利用者に代わって実際の作業を進めることを目的としています。
関連記事:オープンAIが新AIエージェント「Dots」を発表 ChatGPTは「行動するAI」へ
また、メタ・プラットフォームズの「ミューズ」も消費者向け市場で存在感を高めているとしています。
ミューズについては、AIエージェントが検索や買い物、旅行予約などを代行することで、インターネットにおけるユーザーの入口が変化する可能性も注目されています。
関連記事:メタのミューズがアップルを脅かす AIエージェントが変える「ユーザーの入口」
特にグーグルにとって手強いのはマイクロソフトです。
世界中の企業で利用されているOfficeは、AIエージェントを業務に組み込むための強力な基盤になります。
企業がすでに日常業務で利用しているソフトウェアにAI機能が追加されれば、新しいサービスへ乗り換える必要性は小さくなるからです。
マイクロソフトはAIアシスタント「Copilot」の機能強化を進めており、企業向けソフトウェアとAIを統合する戦略を打ち出しています。
関連記事:マイクロソフト株はなぜ上昇? Copilot大幅強化とAI収益化の可能性
さらに、セールスフォース(CRM)やサービスナウ(NOW)なども、顧客が独自のAIエージェントを構築できる環境を提供しています。
サービスナウについては、企業のAI導入が進むほど、AIエージェントを管理し、安全に運用するための需要が拡大する可能性があります。
関連記事:メタやサービスナウなど9銘柄 ドイツ銀行が選ぶ「AI相場の次の主役」
企業向けAI市場では、どの会社が優れたAIモデルを開発するかだけでなく、既存の業務システムといかに自然に連携できるかが競争のポイントになりそうです。
アンソロピックとは協力と競争の関係
今回の発表で興味深いのは、GeminiエージェントがアンソロピックのClaudeモデルにも対応していることです。
アンソロピックは、企業向けAIモデルや生産性向上ツールで事業を拡大しています。
グーグルにとっては競争相手ですが、同時に自社のAIエージェントに組み込める技術の提供企業でもあります。
この関係は、今後のAI市場の構造を考えるうえで重要です。
企業は必ずしも、1つのAIモデルや1社のソフトウェアだけを利用するとは限りません。
複数のAIモデルを組み合わせながら、業務に最適なシステムを構築する動きが広がる可能性があります。
そうなれば、AIモデルそのものの性能だけでなく、異なるモデルや業務ツールを統合するプラットフォームの価値が高まることも考えられます。
マイクロソフトも特定のAIモデルに依存せず、複数のAIを企業が使い分けられる環境を提供する戦略を進めています。
関連記事:マイクロソフト株が2026年最高値 AI戦略が再評価される理由
アナリストはアルファベットの成長機会を評価
今回の発表を受け、ウィリアム・ブレアのアナリスト、ラルフ・シャッカート氏は、AI市場が新しい段階に移行しているとの見方を示しました。
同氏が注目するのは、単独のAIが質問に回答する仕組みから、専門的な役割を持つ複数のAIが協力して業務を遂行する仕組みへの変化です。
ただし、こうした技術の進歩が短期的にどれだけの売上や利益を生み出すかは、まだ明確ではありません。
シャッカート氏は、AIエージェントの機能向上がグーグルの企業向けソフトウェア事業やクラウド事業の競争力維持につながり、高価格帯のAIサービスを拡大する機会になると評価しています。
同氏はアルファベット株に対する「アウトパフォーム」の投資判断を維持しました。
一方、発表当日のアルファベット株は、記事執筆時点で約0.2%高にとどまっていました。
この反応についてバロンズは、グーグルのAIエージェント市場への本格参入が、投資家にとってある程度予想されていた可能性を指摘しています。
投資家が注目すべきはAIエージェントの収益化
今回の記事から読み取れる重要なポイントは、AI開発競争の焦点が変化しつつあることです。
これまでは、AIモデルの性能や学習に必要な計算能力が大きな注目を集めていました。
しかし、企業がAIを本格導入する段階では、実際の業務にどれだけ役立つかが重要になります。
グーグルの新しいAIエージェントも、機能の豊富さだけでなく、企業の生産性向上やコスト削減にどれだけ貢献できるかが普及を左右すると考えられます。
投資家としては、今後のアルファベットの決算で、グーグル・クラウドの売上成長率、AI関連サービスの利用拡大、収益性の変化を確認することが重要です。
AIエージェントの普及によってクラウド利用が増えても、それを支える計算資源への投資負担が大きければ、利益の拡大が遅れる可能性もあります。
グーグルは検索、クラウド、企業向けソフトウェアという複数の事業基盤を持っています。
これらをAIエージェントと結び付けることができれば、既存事業の競争力を維持しながら、新しい収益機会を獲得できる可能性があります。
今回の発表は、AIエージェント市場での競争が激しさを増すと同時に、AIが企業の実際の業務を担う時代へ近づいていることを示す動きとして注目されます。
情報ソース: Barron’s: “Google Escalates the AI Agent Wars With Its New Gemini Agent” (By Nate Wolf, Oct. 8, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。