ラテンアメリカのアマゾンとして知られるメルカドリブレ(MELI)がビットコインの購入を始めています。第1四半期の決算報告の中でビットコインを750万ドル相当購入したとの記載があり、「財務戦略」の一環であるとされています。
ビットコインをはじめとする暗号通貨を保有する理由のひとつに、「価値の貯蔵庫」というものがあります。これは、政府が発行して裏付けされた不換紙幣よりも価値を維持できることを意味します。ラテンアメリカで事業を展開する企業にとって、これはメリットがあります。アルゼンチンのペソやブラジルのレアルなどの通貨は、さまざまな経済的要因の影響を受けて、歴史的に変動が激しいからです。
実際、2018年、メルカドリブレは、米国の会計基準に合わせて、アルゼンチンでの事業を「高インフレ状態」に移行しなければなりませんでした。高インフレは、通貨の購買力を侵食し、時間の経過とともにその価値を下げてしまいます。例えば、5年前には1ドルは14ペソ弱でしたが、現在では、1ドルは95アルゼンチンペソ近くになっています。つまり、同じペソでも、数年前に比べて、買い物をするのに十分な効果が得られなくなっているのです。
メルカドリブレが習慣的に報告している、実際の売上高と為替ニュートラルの売上高の大きな差は、このインフレ効果の最終結果です。
「財務戦略」とは、基本的には、企業が事業運営や将来の事業拡大のために必要な資金を確保するための行動を指します。ラテンアメリカではインフレが長期的なリスクとなっているため、メルカドリブレのような企業は資産を守る必要があります。ビットコインは総供給量に上限があるため、需要が増えれば価格が上昇し、インフレの影響を相殺することができます。対照的に、猛烈なコスト上昇に直面している経済の中で、メルカドリブレが資産を現金のままにしておけば、そのバランスシートの価値は時間の経過とともに下がっていくことになってしまいます。
ただ、今回のビットコインの購入は非常に控えめなものでした。780万ドルのビットコインの購入は、メルカドリブレの総流動性のわずか0.3%に過ぎません。おそらく、今後は戦略の一環としてより多くのビットコインを購入することになるでしょうが、今のところ、この暗号資産が果たす役割は小さいものです。
数億のビットコインを保有するスクエアなどに比べれば小さなスタートですが、メルカドリブレでは将来的に暗号通貨がより大きな役割を果たすようになるかもしれません。
アルゼンチンのような国では、生活費の高騰から資産を守るために、消費者が暗号通貨を利用していると言われています。近年のビットコイン価格の高騰を考えると、この戦略は成功していると言えるでしょう。
メルカドリブレでは、ブラジルとアルゼンチンでビットコインでの支払いを受け付けています。最近では、アルゼンチンでサイト上の不動産物件の支払いにビットコインを使えるようになりました。レアルやペソのような通貨が安定しないのであれば、ラテンアメリカのような市場では、分散型の金融商品(中央銀行に管理されていないもの)がこれからますます重要な意味を持つようになると考えられます。