エヌビディアはなぜ「ミューズ相場」に乗れなかったのか AMD急騰が示すAI半導体市場の変化

メタ・プラットフォームズ(META)のAIエージェント「ミューズ」をきっかけに半導体株が買われるなか、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は大きく上昇しました。一方、AI半導体市場をけん引してきたエヌビディア(NVDA)の上昇は比較的限定的でした。

この違いは、エヌビディアの成長力が低下したことを意味するものではありません。むしろAI市場が、モデルを学習させるためのGPU中心の市場から、完成したAIを大量に動かすCPUや推論向け半導体へ広がり始めていることを示しています。

今後のAI半導体市場を見るうえでは、エヌビディアとAMDの株価の反応の違いが重要なヒントになりそうです。

関連記事:メタ「ミューズ」人気でインテル・アーム・AMD上昇 AIエージェントがCPU需要を変える

AMDが10%上昇した背景

2026年9月21日、AMD株は10%上昇しました。メタのミューズが普及すれば、AIエージェントを動かすためのCPU需要が拡大するとの期待が背景にあります。

AMDの年初来上昇率は9月22日の取引開始前までで約189%に達していました。一方、エヌビディアは約23%の上昇にとどまっています。

両社の違いは企業規模にもあります。

AMDの企業価値はエヌビディアの5分の1未満です。そのため、新しいAI需要を獲得した場合、売上高や利益に与える影響はAMDの方が相対的に大きくなります。

市場はこうした成長余地を高く評価していると考えられます。AMDの予想PERは45倍で、エヌビディアの17倍を大きく上回っています。

エヌビディアには巨大企業ならではの難しさがある

エヌビディアの時価総額は約5.5兆ドルに達しています。

これほど巨大な企業になると、新しい事業が数十億ドル規模に成長しても、会社全体の成長率を大きく押し上げることは簡単ではありません。

ジェンスン・フアンCEOは第1四半期の決算説明会で、CPUチップが2026年に200億ドルの売上高を生み出すとの見通しを示しました。

200億ドルという規模は通常の企業であれば非常に大きな事業です。しかし、エヌビディアの現在の会計年度の売上高は約4,090億ドルになると予想されています。

単純計算ではCPU事業の200億ドルは売上高全体の約4.9%です。

つまり、CPU事業が順調に拡大したとしても、それだけでエヌビディア全体の成長率を劇的に変えるほどの規模ではありません。

エヌビディアには次の巨大市場が必要

エヌビディア株は9月21日に2.3%上昇し、翌22日も0.7%上昇して228.87ドルとなりました。

株価が弱いわけではありませんが、5.5兆ドル規模まで成長した企業をさらに押し上げるには、新たな巨大市場が必要です。

その候補の1つがAI推論です。

これまでAI半導体市場では、大規模なAIモデルを学習させるためのGPU需要が注目されてきました。しかし、AIが実際のサービスとして広く利用されるようになれば、完成したモデルを動かす「推論」の処理量が急増します。

ミューズのようなAIエージェントが普及すれば、ユーザーからの指示に応じてAIが継続的に処理を行うため、推論向けの計算需要はさらに増える可能性があります。

関連記事:エヌビディアは「AI帝国」を築く?1,000億ドル超の投資戦略から読み解くNVDAの将来性

グロック社の技術はエヌビディアの次の成長材料になるか

エヌビディアは2025年、AI推論用チップを専門とするグロック社の技術をライセンスするため200億ドルを支払いました。

さらに2026年8月には、AI推論アクセラレーター「Groq 3 LPX」が量産体制に入ったと発表しています。

これは、エヌビディアがAI学習市場だけでなく、今後拡大が期待される推論市場にも力を入れていることを示しています。

AIエージェントが企業や個人に広く利用されれば、AI半導体市場の中心は「AIを作るための計算」から「AIを日常的に動かすための計算」へと広がっていきます。

その場合、グロック社の技術を取り込んだエヌビディアの推論向け製品が、新たな成長の柱になる可能性があります。

ただし、Groq 3 LPXを搭載したハードウェアにどの程度の需要が生まれるのかは、今後の販売動向を確認する必要があります。

AMD急騰はエヌビディアの衰退を意味しない

今回の株価の動きを見ると、AI半導体市場で恩恵を受ける企業が広がり始めていることが分かります。

AMDは企業規模がエヌビディアより小さいため、新たなCPU需要やAI需要を獲得した際に業績への影響が大きくなりやすい企業です。

一方、エヌビディアはすでに巨大企業となっているため、新しい事業には非常に大きな規模が求められます。

その意味では、今回AMDが大きく買われ、エヌビディアの反応が限定的だったことは、エヌビディアの成長終了を示すものではありません。

むしろAI投資の焦点が、GPUを使った学習だけではなく、CPUや推論アクセラレーターを含む幅広い半導体市場へ移り始めている可能性があります。

今後エヌビディアを見るうえでは、CPU事業の200億ドルという数字だけでなく、Groq 3 LPXを含む推論事業がどこまで成長できるのかが重要なポイントになります。

AIエージェントの普及によって推論市場そのものが巨大化すれば、エヌビディアにとって新たな成長局面につながる可能性があります。

関連記事:メタ株11%超上昇 AIエージェント「ミューズ」は1,300億ドル投資を回収できるか

情報ソース: Barron’s: “Why Nvidia Stock Missed the Meta Muse AI Rally” (By Adam Clark, Updated Sept. 22, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG