米投資情報誌バロンズは2026年9月14日付の記事で、AI開発の減速を巡る議論がマイクロン・テクノロジーをはじめとするメモリ株に与えている影響を取り上げました。
本ブログでは先に「AI開発『減速』で勝つ企業、負ける企業 エヌビディアに浮上した新たなリスク」で、AI開発競争が減速した場合にエヌビディアやデータセンター関連企業へどのような影響が及ぶのかを紹介しました。
今回のバロンズの記事は、その問題がメモリ半導体市場にも波及し始めていることを示しています。
マイクロン株が再び急落
マイクロン・テクノロジー(MU)は9月14日の米国市場で大幅に下落し、午後2時過ぎの段階で4.7%安の929ドルとなりました。
同業のSKハイニックス(SKHY)も米国市場で取引されるADRが6.8%下落しています。
背景にあるのが、AI開発の安全性を巡る議論です。
アンソロピック、オープンAI、スペースXの経営トップがAI開発競争を減速させる必要性について相次いで言及したことで、市場では「AI開発が遅くなれば、データセンターへの設備投資も減少するのではないか」との警戒が強まりました。
マイクロン株は過去12カ月で6倍以上に上昇しており、AI投資の先行きに関するニュースに敏感に反応する状況となっています。
AI減速がメモリ株に大きく影響する理由
生成AI向けデータセンターではGPUだけでなく、大量の高性能メモリが必要になります。
特にHBMはAIアクセラレーターと組み合わせて使用される重要部品となっており、AIサーバー需要の急増によって供給不足と価格上昇が続いてきました。
バロンズが紹介したUBSの試算によると、2025年から2027年にかけて増加する約1兆ドルのAI設備投資のうち、約90%がメモリ関連に向けられるとしています。
UBSはさらに、AI設備投資額が2026年に約1兆ドル、2027年には約1.4兆ドルへ拡大すると予想しています。
それだけにAI開発が本格的に減速し、データセンター建設やAIサーバーの導入ペースが落ちれば、マイクロンなどの業績見通しにも大きな影響が及ぶ可能性があります。
今回の株価下落は、こうした将来の需要減速リスクを市場が先回りして意識したものと考えられます。
データセンター建設はまだ止まっていない
ただし、現時点で「AI開発の減速」と「AI設備投資の削減」は同じではありません。
AI企業のトップから安全性を重視する発言は出ていますが、データセンター建設の中止や半導体購入の削減を正式に表明した企業は確認されていません。
バロンズは記事の中で、ラファー・テングラー・インベストメンツのナンシー・テングラーCEO兼CIOが、今回の下落局面でマイクロン株を買い増したことを紹介しています。
その理由として、すでにAIデータセンター建設の案件が積み上がっており、この需要が当面の成長を支えるとの見方を示しました。
現在進行しているデータセンター建設が突然停止する状況ではないということです。
市場が警戒するのは2~3年後
今回のマイクロン株下落で注目したいのは、現在の需要よりも2~3年先の設備投資に市場の関心が移りつつある点です。
足元ではAIサーバーやデータセンターへの投資が続いているため、メモリ需要がすぐに急減する可能性は高くありません。
一方で、現在計画されているデータセンターが完成した後も同じペースで設備投資が続くのかという問題があります。
AIモデルの性能向上が鈍化した場合でも、大量のGPUやHBMが必要なのか。市場はすでに2028年以降の需要を意識し始めていると考えられます。
AI相場は「発言」より設備投資の数字が重要に
前回の記事では、AI開発の減速がエヌビディアなどAIインフラ企業に及ぼすリスクを取り上げました。
9月14日のマイクロン株の下落を見ると、その警戒がGPUからメモリ市場へ広がり始めています。
ただし、AI企業トップによる減速論だけでAI投資サイクルが転換したと判断するのは早いと考えます。
今後重要になるのは、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタなどのハイパースケーラーが実際に設備投資計画を引き下げるのかという点です。
データセンター建設の延期、AI半導体の発注削減、HBM需要の鈍化といった具体的な数字が出てくるかが焦点になります。
逆に設備投資が高水準を維持するなら、今回のマイクロン株下落はAI投資サイクルの終わりではなく、過去1年間で急騰したメモリ株の調整局面にとどまる可能性があります。
AI相場を見るうえでは、AI開発を巡る発言以上に、実際の設備投資額とメモリ需給を追うことが重要になっています。
情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Sinks Again. What AI Safety Fears Mean for Memory Chips.” (By Adam Clark, Sept. 14, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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