世界のメモリ半導体市場で勢力図が大きく変わり始めています。
カウンターポイント・リサーチが公表した2026年第2四半期のデータでは、中国メーカーの市場シェア拡大が鮮明になりました。一方、SKハイニックスやマイクロン・テクノロジーなど既存大手の動きを詳しく見ると、単純な「中国勢の台頭、既存勢の後退」という構図では説明できません。
むしろ現在のメモリ市場では、市場全体が爆発的に拡大する中で、各社が「量を取るのか」「高付加価値分野を取るのか」という戦略の違いが明確になりつつあります。
中国勢がDRAM・NANDの両市場で存在感を拡大
2026年第2四半期のDRAM市場では、中国の長鑫存儲技術(CXMT)のシェアが10%まで上昇しました。
前年同期の4%から2倍以上に拡大し、直前四半期の8%も上回っています。従来は7%程度と推計されていましたが、今回10%へ上方修正されたことで、中国勢の成長速度が想定以上であることが改めて示されました。
一方、マイクロン・テクノロジー(MU)はDRAM市場で22%から24%へシェアを拡大しました。SKハイニックス(SKHY)は29%から25%へ低下しています。
NANDフラッシュメモリ市場でも中国勢の存在感は高まっています。長江存儲科技(YMTC)の収益ベースのシェアは前年同期の9%から14%へ上昇しました。
マイクロンも13%から15%へ拡大した一方、サンディスク(SNDK)は13%から11%へ低下しています。
数字だけを見ると、中国企業が既存メーカーのシェアを次々と奪っているように見えます。しかし、このデータを判断するうえで重要なのが、市場そのものの急拡大です。
市場シェア低下でも売上が増える異例の成長局面
2026年第2四半期のメモリ市場は、通常では考えにくいほどのスピードで拡大しました。
DRAM市場は直前四半期比57%増、NAND市場は70%増となっています。
市場全体がこれほど急拡大している局面では、市場シェアが数ポイント下がっただけで企業の事業が縮小したとは判断できません。
例えば、市場規模が100から157へ拡大した場合、29%のシェアは29ですが、25%のシェアでも約39となります。
つまり、SKハイニックスのようにシェアが29%から25%へ低下しても、市場全体の成長を考慮すれば、実際の売上規模は増加している可能性があります。
メモリ市場を見る際には、「シェア」と「売上規模」を分けて考える必要があります。
SKハイニックスのシェア低下はHBM重視の結果
その象徴がSKハイニックスです。
同社のDRAMシェアは直前四半期の29%から25%へ4ポイント低下しました。しかし、これを単純な競争力低下と捉えるのは適切ではありません。
SKハイニックスは現在、生成AI向け半導体需要の拡大を背景に、高帯域幅メモリ(HBM)へ生産能力を重点的に振り向けています。
HBMはエヌビディアなどが提供するAIアクセラレーターに不可欠な高性能メモリで、一般的なDRAMよりも高い付加価値と収益性が期待できます。
そのため、汎用DRAMのシェアを多少失ったとしても、HBMで高い利益を確保できるのであれば、企業全体としてはむしろ合理的な判断になります。
SKハイニックスは「市場シェア最大化」よりも「利益率と成長市場への集中」を優先していると見ることができます。
マイクロンの強さはDRAMとNANDの両方でシェア拡大
今回のデータで特に注目したいのがマイクロンです。
中国企業が急速に生産能力を拡大する中、マイクロンはDRAM市場で22%から24%、NAND市場でも13%から15%へシェアを伸ばしました。
新規参入企業が低価格を武器に市場へ攻勢をかける局面では、既存メーカーがシェアを維持するだけでも容易ではありません。
その環境下で2つの主要メモリ市場の両方でシェアを拡大したことは、マイクロンの製品競争力や顧客基盤の強さを示しています。
SKハイニックスがHBMなど高付加価値分野への集中を強めるのに対し、マイクロンはAI向け需要を取り込みながら、汎用DRAMとNANDでも存在感を維持しています。
中国勢が量産能力を高める今後の競争環境において、このバランスの良さは大きな強みになる可能性があります。
サンディスクはNAND市場の競争激化に注意
反対に、注意が必要なのがサンディスクです。
NAND市場全体が直前四半期比70%も拡大しているにもかかわらず、同社の市場シェアは13%から11%へ低下しました。
YMTCが14%までシェアを高め、マイクロンも15%へ拡大する中、サンディスクは中国勢だけでなく既存大手との競争でも厳しい立場に置かれている可能性があります。
市場全体が急成長している間は、シェアが低下しても売上規模を維持または拡大できます。
しかし、今後NAND市場の成長率が正常化した場合、シェア低下がそのまま売上成長の鈍化につながる可能性があります。
今後は市場シェアだけでなく、価格競争力、製造コスト、製品構成などを確認する必要があります。
メモリ市場は「量」と「価値」の競争へ
2026年第2四半期のデータから見えてくるのは、世界のメモリ市場が新たな競争局面に入ったということです。
CXMTやYMTCなど中国メーカーは、生産能力を急速に拡大しながら「量」で市場シェアを獲得しています。
一方、SKハイニックスはHBMを中心とした高付加価値分野へ経営資源を集中し、「利益率」を重視する戦略を進めています。
そしてマイクロンは、AI向け高性能メモリへの対応を進めながら、DRAMとNANDの両方でシェアを拡大する総合力を示しています。
今後メモリ企業を評価する際には、市場シェアの増減だけを見るのでは不十分です。
どの市場でシェアを獲得しているのか、その製品の利益率はどの程度なのか、そしてAI需要という巨大な成長市場をどれだけ取り込めるのかという視点が一段と重要になります。
中国勢の急成長によって競争が激しくなることは間違いありません。しかし同時に、AIインフラ投資によってメモリ市場そのものも大きく拡大しています。
「量」を取る中国勢、「価値」を取りにいくSKハイニックス、そしてその両方を追うマイクロン。この3つの戦略のどれが最終的に最も大きな利益成長につながるのかが、今後のメモリ半導体市場を見る重要なポイントになりそうです。
情報ソース: Barron’s: “China Is Grabbing Memory Market Share. This Stock Could Be a Big Loser.” (By Adam Clark, Sept 03, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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