アンソロピックが137億ドルの巨大契約 AI競争は「GPU」から「電力争奪戦」へ

AI開発競争が、モデル性能だけでなく「計算能力をどれだけ確保できるか」というインフラ競争へ移っています。

ジ・インフォメーションは2026年9月13日、アンソロピックがラム・グループ(RUM)と6年間で総額137億ドルのコンピューティング契約を結んだと独占報道しました。

注目すべきは契約金額だけではありません。AI企業がGPUに加え、データセンター用地や電力まで長期で囲い込み始めている点です。

アンソロピックが137億ドルの大型契約

ジ・インフォメーションによると、契約期間は6年間で、総額は137億ドルです。単純計算では年間約23億ドルに相当します。

ラム・グループは2026年8月の証券当局への提出資料で137億ドル規模の大型契約を獲得したと明らかにしていましたが、顧客名は公表していませんでした。今回の報道で、その顧客が生成AI「Claude」を開発するアンソロピックだったことが明らかになりました。

アンソロピックは急増するAI需要に備え、将来必要となる計算能力を長期契約で確保しているとみられます。

グーグルやスペースXにも計算能力を依存

アンソロピックは過去1年間、グーグル(GOOGL)、スペースX、英ネオクラウド企業エヌスケールなどと計算能力を確保する契約を進めてきました。

ジ・インフォメーションによると、これまでに確保した計算能力は少なくとも14.8GWに達し、今後10年間の支出は最大5,170億ドル規模になる可能性があります。

背景には「Claude Code」や「Cowork」などの利用拡大があります。生成AIは利用者が増えるほど推論処理に必要な計算能力も膨らむため、データセンターの確保そのものが成長を左右する経営資源になっています。

旧ランブルがAIインフラ企業へ転換

ラム・グループは、もともと動画共有サービス「Rumble」を運営してきた企業です。保守系ユーザーの利用が多く、ドナルド・トランプ大統領の「Truth Social」の配信基盤も提供しています。

同社は2026年6月、ドイツのネオクラウド企業ノーザン・データを約7億6,700万ドル相当の株式交換で買収しました。

この買収によって、エヌビディア(NVDA)のHopper世代GPU約22,000基やデータセンター資産を取得し、AIクラウド事業へ本格参入しました。

アンソロピックとの契約が予定通り進めば、動画プラットフォーム企業からAIインフラ企業への転換が加速する可能性があります。

最大の価値は120MWの電力

アンソロピックが利用する予定なのは、米ジョージア州メイズビルで建設中のデータセンターです。

同施設には120MWの電力供給枠が確保されており、将来的には180MWまで拡張できる可能性があります。

AIデータセンターが世界各地で建設される中、不足しているのはGPUだけではありません。大量のGPUを動かす電力や、送電網への接続枠も希少になっています。

今回アンソロピックが確保しようとしているのは、単なるGPUではなく「電力付きの計算能力」といえます。

100億ドル超の投資と資金調達が課題

一方、ラム・グループには大きなリスクがあります。

ジ・インフォメーションは過去のAIデータセンター建設費を基に、メイズビルの施設完成とサーバー設備の導入に100億ドルを超える資金が必要になる可能性を指摘しています。

しかし同社は2026年8月時点で、建設費やGPU購入費をすべて確保していませんでした。今後は借り入れや増資などによって資金を調達する方針です。

大型契約の獲得は好材料ですが、投資家にとっては契約額以上に、どの条件で巨額投資を実行するのかが重要になります。

アンソロピックには5,100万株の取得権

契約には特徴的な条件も含まれています。

アンソロピックには、ラム・グループ株を最大5,100万株、1株0.01ドルで取得できるオプションが付与されていると報じられました。

9月11日の終値7.17ドルを基準にすると、市場価値は約3億6,600万ドルです。ラム・グループの発行済み株式数約4億株に対し、5,100万株は約12.8%に相当します。

ただし、権利行使はアンソロピックが実際に購入する計算能力と連動しており、すべてが直ちに行使されるわけではありません。

AI競争の主戦場は電力へ

AI競争のボトルネックは、モデルからGPU、そして電力へと移り始めています。

AI企業がGW単位の計算能力を長期で確保するようになれば、価値が高まるのはGPUメーカーだけではありません。データセンター用地、電力供給、送電設備、冷却装置、光通信など、AIを物理的に支える企業にも資金が向かう可能性があります。

ラム・グループの時価総額は約28億ドルですが、今回の契約総額は137億ドルと約5倍です。契約を履行できれば企業価値を大きく変える可能性がある一方、100億ドル規模の設備投資や株式希薄化というリスクもあります。

今回の契約が示しているのは、AI企業が現在の計算能力だけでなく、数年先に必要になる「未来の電力」まで囲い込み始めていることです。

AI競争は、ソフトウェアの世界からGPU、データセンター、送電網、発電設備を含む巨大な物理インフラの争奪戦へ移行しています。

情報ソース: The Information: “Anthropic Strikes $13.7 Billion Compute Deal With Trump-Linked Rum Group” (By Valida Pau and Phoebe Liu, Sep. 13, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら アンソロピック

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