AIに株式投資を任せたら、人間より高いリターンを上げられるのでしょうか。
バロンズは、資産運用会社Condor Capital Wealth Managementが実施した興味深い実験を紹介しています。
アンソロピックのClaude、アルファベット(GOOGL)のGemini、オープンAIのChatGPTという代表的なAIにそれぞれ500ドルを与え、同じ条件で株式取引をさせたというものです。
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AIエージェントによる株式取引はまだ始まったばかりですが、ロビンフッド・マーケッツ(HOOD)などの証券会社がサービスを拡大しており、今後の個人投資の姿を考えるうえでも注目したいテーマです。
3つのAIに500ドルを与えて株式取引
今回の実験では、Claude、Gemini、ChatGPTのAIエージェントに、それぞれ500ドルが与えられました。
指示は非常にシンプルで、できるだけ多くの利益を上げることを目標としています。
取引対象は株式とETFに限定され、毎日の取引終了時には保有資産をすべて売却して現金100%に戻すという条件でした。
つまり、長期投資ではなく、短期売買能力を比較する実験に近い内容です。
また、それぞれのAIが取引のタイミングや市場を確認する頻度などを自分で決めていました。
3日間ではClaudeがトップ
バロンズが紹介した結果では、3日間のリターンは、Claudeが+2.9%、Geminiが+0.9%、ChatGPTが-0.7%となりました。
非常に短い期間で、投資額も500ドルにすぎないため、この数字だけでAIの投資能力を評価することはできません。
それでも興味深いのは、3つのAIが同じ行動を取らなかった点です。
ClaudeとChatGPTは、利益を上げている投資家の手法などをインターネットで調べ、値動きの荒い銘柄を狙うモメンタム投資に近い戦略を採用しました。
一方、Geminiは1日に数回程度市場を確認し、取引した銘柄はエヌビディア(NVDA)だけだったとされています。
Claudeは失敗から取引方法を修正
特に興味深いのがClaudeの行動です。
Claudeは1日に10回市場を確認するよう自ら設定し、取引結果から得られた教訓を記録していました。
ある日の取引では、寄り付き直後に急上昇した銘柄を高値で購入して損失を出しました。
Claudeはこの失敗を自ら記録し、翌日には寄り付き直後の急騰を追いかける取引を避けました。
Condor Capital Wealth Managementは、AIが自分の取引を振り返り、翌日の行動を変化させた点に注目しています。
AI投資の可能性を考えるうえでは、単に銘柄を選ぶ能力だけではなく、結果を評価して行動を修正する仕組みも重要になってきそうです。
AIに任せれば簡単に利益が出るわけではない
一方で、今回の結果を「AIに株式投資を任せれば利益を上げられる」と解釈するのは早計です。
Condor Capital Wealth Management自身も、今回の実験は意図的に単純化されたものであると説明しています。
AIに詳細な指示を与え、継続的に投資ルールを調整すれば成績が改善する可能性がありますが、そのためには人間側にも投資知識や判断力が必要になります。
また、実験期間が3日間しかなく、投資金額も小さいことから、結果の再現性についても慎重に考える必要があります。
AI技術が急速に進化しているため、数カ月後や1年後には同じ実験でも違った結果になる可能性があるとCondor Capital Wealth Managementは指摘しています。
長期投資では意外にオーソドックス
バロンズの記事では、短期売買とは別の実験も紹介されています。
Claude、ChatGPT、Geminiに「株式60%、債券40%」のポートフォリオを作らせたところ、3つのAIはいずれもバンガードやブラックロック(BLK)の低コストインデックスファンドを中心に選びました。
3つのAIすべてが、バンガードの米国株式市場全体に投資するETFと、米国外の株式市場に投資するETFを選択しています。
短期売買ではそれぞれ異なる行動を見せたAIが、長期ポートフォリオでは低コスト・分散投資という比較的オーソドックスな結論に近づいた点は興味深いところです。
ロビンフッドなど証券会社もAI取引を拡大
AIエージェントによる投資は、単なる実験ではなく、すでに証券業界の新しいサービスとして広がり始めています。
バロンズによると、ロビンフッド・マーケッツが2026年5月にエージェント取引を開始してから、15万人以上が専用口座を開設しました。
また、パブリックではAIエージェントが管理する資産が2億ドルを超えているとされています。
ロビンフッド・マーケッツはさらに「Robinhood Agents」を発表し、AIとの会話を通じて投資調査、取引戦略の作成、注文執行まで行える仕組みを進めています。
ユーザーが取引ごとに承認する設定も可能で、AIが自由に口座全体へアクセスする仕組みとは異なります。
ウィブル(BULL)もAIエージェントを自社プラットフォームに組み込む取り組みを進めています。
現在のように外部のAIと証券口座を接続する方法よりも、証券会社のサービスにAIが直接組み込まれた方が一般の投資家に普及しやすいとみています。
AIは投資家に代わるのか
今回のバロンズの記事から見えるのは、現時点では「AIが人間より優秀な投資家になった」という姿ではありません。
むしろ注目したいのは、AIが投資家の指示を理解し、市場を調査し、一定のルールに従って取引し、さらに結果から学習して行動を修正する仕組みが実際に動き始めていることです。
短期的な投資成績以上に、こちらの変化の方が重要かもしれません。
証券業界では、将来的に投資家がAIとの会話を通じて証券口座を操作するようになるとの見方も出ています。
ウィブルの経営陣は、5年後には取引の大部分が証券会社のプラットフォームに組み込まれたAIエージェントを通じて行われる可能性があるとみています。
スマートフォンが証券取引を大きく変えたように、AIエージェントも投資家と証券会社の関係を変える可能性があります。
今回の500ドルの実験は小規模なものですが、AIが「投資情報を説明する存在」から「投資行動を実行する存在」へ変わり始めていることを示す事例として、今後も注目したいテーマです。
情報ソース: Barron’s: “AI Agents Got Cash to Trade Stocks. Here’s What They Bought and Sold—Repeatedly.” (By Andrew Welsch, Oct. 2, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。