半導体メモリ市場の中核を担うDRAM分野で、業界の勢力図を塗り替える大きな変化が起きています。
これまでDRAM市場は、サムスン電子、SKハイニックス(SKHY)、マイクロン・テクノロジー(MU)の「ビッグ3」が圧倒的なシェアを握ってきました。しかし、足元ではマイクロンが急速に存在感を高める一方、中国の長鑫存儲技術(CXMT)が想定を上回る速度で市場に食い込んでいます。
本記事では、直近の市場シェアや業績データをもとに、マイクロンの成長余地と、中国勢の台頭がDRAMおよび広帯域メモリー(HBM)市場に与える影響を分析します。
マイクロンの株価は1年間で660%上昇
現在のマイクロンは、AI向けメモリ需要の拡大による恩恵を最も強く受けている企業の1社です。
同社の株価は過去1年間で約660%上昇しました。この上昇率は、単なる半導体市況の回復だけでは説明できません。生成AIの普及によって、データセンター向けDRAMやHBMの需要が急増し、メモリ市場そのものが新たな成長局面に入ったことを示しています。
特に注目したいのが、マイクロンの収益構造です。同社の収益の約80%はDRAM関連事業が占めています。
DRAMへの依存度が高い事業構造は、市況が悪化した際には業績変動を大きくする要因になります。しかし、現在のように需要が供給を上回り、販売価格が上昇する局面では、利益を急速に拡大させる強力なレバレッジとして機能します。
実際、同社の収益は2025年第2四半期から約5倍に拡大しており、DRAM市況の改善が業績に直結していることが分かります。
DRAM市場でSKハイニックスとの差はわずか1ポイント
マイクロンの成長は、業績だけでなく市場シェアにも表れています。
カウンターポイント・リサーチのデータによると、第2四半期のDRAM市場では、サムスン電子が39%のシェアを握り、引き続き首位を維持しました。これに対して、SKハイニックスは26%、マイクロンは25%となっています。
マイクロンとSKハイニックスの差は、わずか1ポイントです。
マイクロンのシェアは第1四半期の22%から、第2四半期には25%へ上昇しました。わずか1四半期で3ポイント拡大したことを考えると、同社がSKハイニックスを追い抜き、DRAM市場で単独2位に浮上する可能性も現実味を帯びています。
一方、株価は直近1ヶ月で約12%下落しています。ただし、過去1年間の大幅上昇を踏まえると、現時点では事業環境の悪化というより、急騰後の利益確定売りやバリュエーション調整の影響が大きいと考えられます。
中国のCXMTがDRAM市場で急成長
マイクロンがシェアを伸ばす一方、既存のビッグ3にとって新たな脅威となっているのが、中国のCXMTです。
CXMTは、第2四半期のDRAM市場で7%のシェアを獲得しました。ビッグ3と比較すれば依然として小規模ですが、前年同期比では8倍以上に拡大しています。
半導体メモリ事業は、工場建設や製造装置の導入に莫大な資金が必要であり、技術力や歩留まりの改善にも長い時間を要します。そのような参入障壁の高い市場で、短期間に7%のシェアを獲得した事実は軽視できません。
さらに、CXMTは中国市場への上場を通じて、設備投資や研究開発に充てる資金を確保したとみられます。
中国政府による半導体産業の国産化支援も追い風となるため、現在の7%は最終到達点ではなく、今後さらにシェアを拡大するための足場となる可能性があります。
次の競争の焦点は高収益なHBM市場
今後、より重要になるのが、AIサーバーに欠かせない広帯域メモリー(HBM)市場です。
調査会社セミアナリシス(SemiAnalysis)の予測によると、CXMTのHBMウェハー供給における世界シェアは、2025年の1%から2028年には12%へ上昇する見通しです。
HBMは、複数のDRAMチップを積層し、高速かつ大容量のデータ転送を可能にする高性能メモリです。製造には高度な設計技術や先端パッケージング能力が必要であり、これまではビッグ3が高い参入障壁を築いてきました。
そのため、HBM市場は供給不足が続き、汎用DRAMよりも高い利益率を確保しやすい分野となっています。
しかし、CXMTが2028年までに12%の供給能力を持つようになれば、HBM市場にも価格競争が広がる可能性があります。供給量の増加によって需給が緩和すれば、現在の高い販売価格や利益率を維持することは難しくなります。
これはマイクロンだけでなく、HBM市場で先行するSKハイニックスにとっても、中長期的な収益計画を左右する重要なリスクです。
マイクロンは技術力で中国勢を引き離せるか
マイクロンは現在、DRAM需要の拡大を業績と市場シェアの成長に結び付けています。SKハイニックスとの差は1ポイントまで縮まり、DRAM市場で業界2位に浮上する可能性も高まっています。
一方で、CXMTの急成長は、メモリ業界の競争環境が新たな段階に入ったことを示しています。
短期的には、マイクロンの収益拡大や市場シェア上昇が株価を支える要因になります。しかし、中長期的には、中国企業による汎用DRAMの供給増加や、HBM市場への本格参入を警戒する必要があります。
今後の焦点は、マイクロンが生産能力を増やすだけでなく、製造技術、消費電力、データ転送速度、歩留まりといった分野で競争優位性を維持できるかどうかです。
投資家は目先の業績成長だけでなく、中国勢の追い上げに対して、同社がどの程度強固な参入障壁を築けるのかを継続的に確認する必要があります。
情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Rises as It Gains Memory-Chip Share. It’s Not All Good News.” (By Adam Clark, Aug. 4, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら マイクロン・テクノロジー MU SKハイニックス SKHY
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