AWS売上高1兆ドルは実現するか アマゾン株500ドル説を支えるAI投資の正体

巨大テック企業の次なる成長を左右するのは、AIモデルそのものだけではありません。AIを動かすためのデータセンター、半導体、そして大量の電力をどれだけ確保し、それを収益へ変換できるのかが重要になっています。

その中で注目されているのが、アマゾン(AMZN)のクラウド事業であるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)です。

モルガン・スタンレーは、AWSのAIインフラ投資と収益力が想定以上に拡大した場合、アマゾン株が2027年末までに500ドルへ上昇する可能性があるという強気シナリオを示しています。

果たして500ドルという株価は現実的なのでしょうか。バロンズが報じたデータをもとに、アマゾンの成長シナリオを見ていきます。

アマゾン株は過去最高値から約7.5%下落

まず現在の株価水準を確認します。

先週金曜、8月14日の終値は263.11ドルで、8月3日に記録した過去最高値284.02ドルから約7.5%下落しています。一方、年初来では約14%上昇しており、長期的な上昇トレンドそのものが崩れているわけではありません。

予想株価収益率(PER)は23.06倍です。

S&P 500の予想PER20.24倍と比較すると、アマゾン株には一定のプレミアムが付いています。ただし、AWSのAI関連事業が今後大きく成長するのであれば、このプレミアムが必ずしも割高とは限りません。

むしろ注目すべきなのは、株価が最高値から調整している一方で、AWSではAIインフラ拡大に向けた投資が加速している点です。

AI関連支出を2,200億ドルへ拡大

アマゾンは2026年のAI関連支出見通しを、従来の2,000億ドルから2,200億ドルへ引き上げました。

さらに2026年から2027年にかけて、年間約8ギガワットもの計算能力を追加する計画を進めています。

2,200億ドルという巨額の投資は一見するとリスクにも見えます。しかし、AIデータセンターの建設には半導体だけでなく、土地、電力、冷却設備、ネットワークなど幅広いインフラが必要となるため、新規参入は容易ではありません。

これほどの資金を継続的に投入できる企業は限られています。

つまりアマゾンの巨額投資そのものが、マイクロソフトやアルファベットなど少数の巨大企業以外をAIクラウド市場から遠ざける参入障壁になる可能性があります。

AWSが年2回の値上げを実施した意味

さらに重要なのが、AWSの価格決定力です。

アマゾンは2026年に入ってから、AIサーバーのレンタル料金をすでに2回引き上げています。

通常、クラウドサービスでは競争が激しくなれば価格は下がりやすくなります。しかしAI向け計算能力では、需要が供給を上回る状況が続いているため、AWSは価格を引き上げながら顧客需要を取り込めているとみられます。

これはアマゾンにとって非常に重要です。

巨額の設備投資を行っても、利用料金を引き上げられなければ投資回収には時間がかかります。しかしAWSが高い価格決定力を維持できれば、計算能力の増加と単価上昇を同時に進めることができます。

AIインフラ投資が単なるコストではなく、将来の大きな利益源へ変わる可能性があるのです。

AWS売上高1兆ドルを支える「ワットあたりの収益」

モルガン・スタンレーのブライアン・ノワク氏が注目しているのが、「電力をどれだけ効率的に売上高へ変えられるか」という考え方です。

現在、AWSのAI計算能力から得られる収益は、増分1ワットあたり約8ドルと推定されています。

これが製品イノベーションや価格引き上げによって1ワットあたり12ドルまで上昇すれば、AWSの収益力は大きく変わります。

年間約8ギガワットという計算能力の拡大に加え、ワットあたりの収益まで上昇すれば、「設備の量」と「設備から得られる売上高」の両方が増えることになります。

モルガン・スタンレーの強気シナリオでは、現在約1,700億ドルのAWS年換算売上高が、2034年から2036年ごろには約1兆ドルへ拡大すると想定されています。

約490%もの成長となる極めて強気な予測です。

株価500ドルのシナリオは何を織り込んでいるのか

こうしたAWSの成長を背景に、モルガン・スタンレーは強気ケースとして、アマゾン株が2027年末までに500ドルへ到達する可能性を示しています。

現在の263.11ドルから500ドルまで上昇すれば、上昇余地は約90%となります。

さらに長期的には、アマゾン全社のEBIT(利払い前税引き前利益)が5,000億ドルに達する可能性も想定されています。

もちろん、これは基本シナリオではなく強気ケースです。

AI投資が過剰となるリスクや、マイクロソフト、アルファベットなどとの競争激化、データセンター向け電力不足など、多くの不確定要素があります。

特に年間8ギガワット規模で設備を拡大しても、AI需要が想定ほど伸びなければ、巨額の減価償却費が収益を圧迫する可能性があります。

アマゾンは「EC企業」から「AIインフラ企業」へ

今回の分析から見えてくるのは、アマゾンの企業価値を考える際に、EC事業だけを見る時代が終わりつつあるということです。

AWSは単なるクラウドサービスではなく、AI時代に必要な計算能力と電力を企業へ提供する巨大なインフラ事業へ変化しています。

今後は「どれだけ多くのデータセンターを持っているか」だけではなく、「確保した1ワットの電力からどれだけ売上高を生み出せるか」が、クラウド企業の競争力を左右する重要な指標になる可能性があります。

アマゾンが年間8ギガワットという計算能力の拡大と、1ワットあたり8ドルから12ドルへの収益力向上を同時に実現できれば、AWSの企業価値は現在とは大きく異なる水準へ到達する可能性があります。

株価500ドルという数字だけに注目するのではなく、今後の決算ではAWSの売上高成長率、AIインフラ投資額、価格設定、そして巨額投資からどれだけ利益を生み出せているかを確認することが重要です。

アマゾンが「世界最大のEC企業」から「世界有数のAI計算インフラ企業」へと再評価されるのか。今後数年間のAWSの成長は、アマゾン株の長期的な方向性を左右する最大のポイントになりそうです。

情報ソース: Barron’s: “Amazon’s Stock Could Hit $500 by End of 2027. Why AWS Revenue Is the Key.” (By Kit Norton, Aug. 17, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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