シスコ株はなぜ8.8%急落?好決算でも市場が警戒した「利益率」の正体

  • 2026年8月14日
  • 2026年8月14日
  • BS余話

米国のAI投資拡大は、半導体だけでなくデータセンターを支えるネットワーク機器にも大きな需要を生み出しています。その恩恵を受けている企業の1つが、ネットワーク機器大手のシスコ・システムズ(CSCO)です。

シスコシステムズは2026年8月12日、2026年度第4四半期決算を発表しました。売上高と利益はいずれも市場予想を上回り、AIインフラ関連の受注も大きく拡大しました。

さらに2027年度についても市場予想を上回る業績見通しを示しています。それにもかかわらず、決算発表後のシスコ株は大幅に下落しました。

今回はシスコの決算内容を確認するとともに、AI需要が業績を押し上げているにもかかわらず株価が売られた理由、そして今後の注目ポイントについて考えていきます。

第4四半期は売上高・EPSともに市場予想を上回る

シスコの2026年度第4四半期の売上高は173億ドルとなり、市場予想の168億ドルを上回りました。

調整後1株当たり利益(EPS)は1.22ドルとなり、こちらも市場予想の1.17ドルを上回っています。

今回の決算で特に目立ったのが、ネットワーキング部門の成長です。同部門の売上高は97億9,000万ドルとなり、前年同期比28%増加しました。

生成AIの普及によってデータセンターでは大量のGPUやAIサーバーが導入されていますが、それらを高速で接続するためにはネットワークインフラの増強も欠かせません。

AI投資の拡大は、エヌビディアなどの半導体メーカーだけでなく、ネットワーク機器を提供するシスコにも大きな成長機会をもたらしていることが今回の決算から確認できます。

AIインフラ受注は年間93億ドルまで拡大

さらに注目したいのがAIインフラ関連の受注です。

シスコの2026年度通期のAIインフラ受注額は93億ドルに達しました。

第3四半期時点で会社側が示していた通期見通しは90億ドルだったため、年度末にかけてもAI関連需要が強かったことになります。

AIデータセンターでは、GPUの性能だけでなく、膨大なデータを高速で移動させるネットワーク性能が重要になっています。そのため、AI向け設備投資が拡大すればするほど、高速ネットワーク機器への需要も増加する構造になっています。

チャック・ロビンスCEOも、シスコが顧客のAI導入を支援できる立場にあることを強調しています。

長年築いてきた企業向けネットワーク事業の顧客基盤をAIインフラ市場へつなげられることは、シスコにとって大きな強みと言えます。

2027年度の業績見通しも市場予想を上回る

今回の決算では、2027年度のガイダンスも強い内容となりました。

シスコは2027年度の調整後EPSについて5.05ドル〜5.11ドルを予想しています。市場予想は4.83ドルだったため、会社側の見通しはこれを上回っています。

売上高についても722億〜734億ドルを見込んでおり、市場予想の691億ドルを大きく上回りました。

つまり、今回の決算は過去の実績だけでなく、今後の業績見通しについても市場予想を上回ったことになります。

それでも株価は上昇するどころか、大幅に下落しました。

好決算でもシスコ株が8.8%下落した理由

決算発表後の8月13日の午前、シスコ株は8.8%下落し、112.94ドルとなりました。

同日のダウ平均が0.4%上昇するなかで、シスコは構成銘柄の中でも特に大きな下落となりました。

市場が警戒したポイントの1つが、粗利益率の低下です。

第4四半期の総粗利益率は66.3%となり、前年同期の68.4%から2.1ポイント低下しました。

AI向けネットワーク機器の需要が急増する一方、メモリをはじめとする部材価格の上昇などがコスト面での負担になっている可能性があります。

投資家にとって重要なのは売上高の成長だけではありません。AI関連製品の売上高が増加しても、コスト上昇によって利益率が低下すれば、利益成長が売上高ほど伸びない可能性があります。

今回の株価下落は、市場が「AI需要の強さ」よりも「AI需要をどれだけ高い利益率で収益化できるのか」に注目し始めたことを示しているとも考えられます。

株価上昇で市場の期待が高くなりすぎていた

もう1つの理由が、決算前までの株価上昇です。

シスコ株は決算発表前までに年初来で約47%上昇していました。

これだけ株価が上昇すると、市場が企業に求める業績のハードルも高くなります。

売上高とEPSが市場予想を上回り、さらに翌年度のガイダンスも強かったにもかかわらず、粗利益率が低下したことで、一部の投資家が利益確定に動いた可能性があります。

つまり今回の下落は、業績そのものが悪かったというよりも、それまで株価に織り込まれていた期待が非常に高かったことの反動という側面が大きそうです。

シスコの今後を左右するのは「AI売上」より利益率

シスコの中長期的な成長を考えるうえでは、AIインフラ需要そのものについては比較的明るい材料がそろっています。

AIインフラ受注は年間93億ドルまで拡大し、ネットワーキング部門も前年同期比28%増と高い成長を記録しました。2027年度の売上高とEPS見通しも市場予想を上回っています。

一方、今後より重要になるのは利益率です。

AI向けネットワーク機器の売上高が増えるだけではなく、規模拡大によってコスト効率が改善し、利益成長につながるかどうかを確認する必要があります。

UBSのアナリスト、デイビッド・フォークト氏は今回の決算後、シスコの目標株価を132ドルから138ドルへ引き上げ、「買い」の投資判断を維持しました。

市場には今回の株価下落を、長期的なAIインフラ成長を考えれば投資機会と見る向きもあります。

まとめ

今回のシスコシステムズの決算は、数字だけを見れば非常に強い内容でした。

売上高とEPSは市場予想を上回り、AIインフラ受注は93億ドルまで拡大しました。さらに2027年度の業績見通しも市場予想を上回っています。

一方、市場が注目したのは66.3%まで低下した粗利益率でした。

AI投資が拡大する局面では、「AI関連売上高がどれだけ増えるか」だけではなく、「その売上高からどれだけ利益を生み出せるか」が株価を左右する重要な評価軸になりつつあります。

シスコについても、AIネットワーク需要の拡大はすでに数字として表れています。今後は、その需要を利益率の改善につなげられるかどうかが最大の注目ポイントになりそうです。

情報ソース: Cisco Networking Sales Surge on AI Demand. Why the Stock Is Down. (By Angela Palumbo, Barron’s, Updated Aug 13, 2026 / Original Aug 12, 2026)

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「シスコ株19%急伸の理由 好決算が示したAIデータセンター需要の強さ


最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG