宇宙ロケットの打ち上げや衛星関連事業を手掛けるロケット・ラブ(RKLB)が、2026年8月10日の米国株式市場終了後に第2四半期決算を発表しました。
今回の決算では、売上高が大幅に伸びた一方、赤字幅は市場予想を上回りました。さらに、大型ロケット「ニュートロン」の開発時期を巡る不透明感も意識され、決算発表後の時間外取引では株価が7%以上下落しています。
もっとも、受注残高は過去最高を更新しており、将来の売上につながる契約も積み上がっています。
ロケット・ラブは現在、単なる小型ロケット会社から、打ち上げ、衛星製造、通信、宇宙インフラまでを手掛ける総合宇宙企業へと変貌しようとしている段階です。
今回の決算から、同社の成長力とリスクを整理します。
第2四半期売上高は62%増 市場予想を上回る
ロケット・ラブの第2四半期売上高は前年同期比62%増の2億3,400万ドルとなり、アナリスト予想をわずかに上回りました。
宇宙関連サービスへの需要拡大を背景に、高い売上成長が続いていることが確認できます。
一方、1株当たり損失(EPS)は8セントの赤字となり、市場予想の6セントの赤字を下回りました。
つまり、売上は予想以上に伸びたものの、その成長を実現するための開発費や事業拡大費用が重く、利益面では市場の期待に届かなかった形です。
第3四半期についても、売上高は前年同期比で最大83%増加する見通しが示されました。
しかし、調整後EBITDAについては1,700万ドル〜2,300万ドルの赤字を予想しています。市場予想は約1,000万ドルの赤字だったため、利益面の弱さが株価の重荷となりました。
過去最高の23億6,000万ドルの受注残が示す強い需要
今回の決算で特に注目したいのが、受注残高です。
2026年6月末時点のバックログは23億6,000万ドルとなり、過去最高を更新しました。
さらに6月末以降にも、契約上のオプションがすべて行使された場合を含め、10億ドル以上の新規契約を獲得しています。
宇宙産業では、一度大型契約を獲得すると数年間にわたり売上が計上されるケースが多いため、受注残高は将来の成長を判断する重要な指標です。
現在の年間売上規模と比較すると、23億6,000万ドルという受注残は非常に大きく、中長期的な売上の見通しを支える材料となります。
次世代大型ロケット「ニュートロン」を使ったケプラー・コミュニケーションズのミッション契約も獲得しており、ニュートロンが正式運用に入る前から顧客需要が存在している点も重要です。
ロケット会社から総合宇宙インフラ企業へ
ロケット・ラブが進めているのは、単なるロケット打ち上げ企業からの脱却です。
同社は衛星製造や宇宙部品、通信技術などへの投資を積極的に進めています。
欧州市場では新たにドイツ子会社を設立し、欧州独自の宇宙インフラ需要の取り込みを狙っています。
欧州各国では安全保障や地政学的リスクを背景に、スペースX(SPCX)など米国企業への依存度を下げたいという動きがあります。
ロケット・ラブにとって、この流れは新たな成長機会になる可能性があります。
さらに、ミュンヘンに本拠を置くレーザー光通信企業マイナリックの買収や、6月に発表されたイリジウム・コミュニケーションズ(IRDM)の買収計画など、宇宙システム事業の拡大も進めています。
こうしたM&Aが進めば、ロケット・ラブは打ち上げだけでなく、衛星、通信、部品まで自社グループで提供できる垂直統合型の宇宙企業へ近づいていきます。
最大の焦点は大型ロケット「ニュートロン」
今後のロケット・ラブの企業価値を大きく左右するのが、大型ロケット「ニュートロン」です。
現在の主力である小型ロケット「エレクトロン」は高い実績を持っていますが、打ち上げられる衛星の重量には限界があります。
ニュートロンが実用化されれば、より大型の衛星や衛星群の打ち上げが可能になり、1回あたりの売上規模も大きくなる可能性があります。
ロケット・ラブによると、ニュートロンは2026年第4四半期に発射台へ搬入される予定です。
一方、ピーター・ベック最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、2026年内に初打ち上げを実施できる可能性について「機会が狭まっている」との認識を示しました。
大型ロケット開発では、わずかな遅延でも追加の研究開発費や人件費が発生します。
ニュートロンの打ち上げ延期が長引けば、赤字拡大につながる可能性があるため、投資家にとって最大のリスク要因の一つです。
株価下落は成長期待より赤字拡大を警戒した結果
ロケット・ラブ株は8月10日の通常取引で3.37%下落し、その後の時間外取引でも7%以上下落しました。
市場が失望した最大の理由は、売上成長ではなく利益面にあります。
62%の売上成長や過去最高の受注残は強い数字ですが、第3四半期の調整後EBITDA赤字が市場予想を大幅に上回ったことで、黒字化までの期間が想定以上に長くなるのではないかとの懸念が強まりました。
現在のロケット・ラブは、利益を最大化する段階ではなく、将来の市場シェア拡大に向けて資金を投入している段階と考えられます。
そのため、今後の株価は売上成長だけでなく、ニュートロン開発費やM&Aによる費用増加をどこまでコントロールできるかに左右されそうです。
ロケット・ラブの将来性をどう見るか
今回の決算を見る限り、ロケット・ラブの成長ストーリーそのものが崩れたとは考えにくい状況です。
売上高は62%増加し、次期も最大83%増が見込まれています。さらに23億6,000万ドルの受注残高と10億ドル以上の新規契約が積み上がっていることから、宇宙関連需要そのものは非常に強い状態が続いています。
一方で、ニュートロンの開発、欧州展開、M&Aなど複数の大型投資を同時に進めているため、短期的な赤字拡大は避けにくい状況です。
今後のポイントは、受注残高を着実に売上へ転換できるか、そしてニュートロンを大幅な遅延なく実用化できるかです。
ニュートロンが商業運用に入り、宇宙システム事業との相乗効果が生まれれば、ロケット・ラブは「小型ロケット企業」から「総合宇宙インフラ企業」へと評価が変わる可能性があります。
今回の株価下落は成長力への失望というより、成長に必要な投資負担と黒字化時期に対する警戒を反映したものと考えられます。
ロケット・ラブは現在、高成長と赤字拡大が同時進行する典型的な成長企業の局面にあります。今後は売上成長率だけでなく、ニュートロンの開発スケジュールと利益率改善の進捗が、株価を左右する重要な材料となりそうです。
情報ソース: MarketWatch: “ Rocket Lab reveals some big plans, but its stock is dropping on mixed earnings” (By William Gavin, Aug. 10, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「ロケット・ラブのイリジウム買収が示す宇宙ビジネスの新潮流:「第2のスペースX」への挑戦と今後の展望」
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