2026年8月4日の米国市場終了後、スペースX(SPCX)が2026年第2四半期決算を発表します。
スペースXにとっては、6月の新規株式公開(IPO)後、初めて迎える本格的な決算発表です。株価はIPO後につけた最高値から約46%下落し、足元ではIPO価格の135ドルを約20%下回る水準で推移しています。
短期間で株価が大きく調整した背景には、高い企業価値への警戒感に加え、AI関連投資の採算性、スターシップの開発コスト、そして大規模なロックアップ解除への懸念があります。
今回の決算は、単なる四半期業績の確認ではありません。スペースXが「宇宙企業」から、通信、AIインフラ、政府向けサービスを抱える巨大プラットフォーム企業へ成長できるのかを見極める重要な試金石になります。
本記事では、バロンズが報じた業績予想や事業データを基に、第2四半期決算で投資家が注目すべきポイントを整理します。
売上高69億ドル予想でも不透明感が強い理由
ウォール街は、スペースXの第2四半期売上高を69億ドル、EBITDAを21億ドルと予想しています。
また、2026年通期では、売上高390億ドル、EBITDA173億ドルが市場予想となっています。
ただし、今回の決算は上場後初の発表であるため、アナリスト間の予測には大きなばらつきがあります。これまで非公開企業だったスペースXは、事業別の収益構造や費用負担、設備投資の詳細が十分に開示されていませんでした。
時価総額が約1兆4,000億ドルに達する巨大企業でありながら、その企業価値を支える実態は、まだ完全には市場に共有されていません。
そのため、売上高やEBITDAが市場予想を上回るかどうかだけでなく、事業別の利益率、設備投資額、フリーキャッシュフローの動向が重要になります。
特に、通期見通しや2027年に向けた収益予想が示されれば、現在の株価水準が割高なのか、それとも将来の成長を考慮すれば妥当なのかを判断する材料になります。
AI事業の焦点はアンソロピックとの契約収益
今回の決算で最大の注目分野となるのがAI事業です。
スペースXは第1四半期、AIインフラの整備を中心に77億ドルの巨額な資本支出を行い、同事業で25億ドルの営業損失を計上しました。
現時点では大幅な赤字事業ですが、アンソロピックとの大型契約が収益化の転換点になる可能性があります。
アンソロピックとのデータセンター賃貸契約は月額12億5,000万ドル規模とされ、5月から6月にかけて稼働が拡大しました。第2四半期決算では、この契約から実際にどの程度の売上高が計上されたのかが焦点になります。
仮に契約収益が想定以上のペースで反映されていれば、AI事業の赤字縮小と将来の収益性に対する期待が高まります。
一方で、売上高の計上が限定的で、設備投資や運営費用が引き続き膨らんでいる場合、AI事業がキャッシュフローを圧迫するとの懸念が強まる可能性があります。
未稼働とされるグーグル(GOOGL)との契約進捗、AIデータセンターの稼働率、2026年後半から2027年にかけての投資計画にも注目が集まります。
スターリンクの成長が企業価値の土台
スペースXの現在の収益基盤を支えているのが、スターリンクを中心とするコネクティビィティ事業です。
第1四半期時点の顧客数は1,030万人に達し、売上高は114億ドル、営業利益は44億ドルを記録しました。
今回の決算では、加入者数がどこまで増加したのかに加え、ユーザー1人当たりの平均売上高が維持されているかが重要です。
顧客数が増えていても、低価格地域の利用者が中心となれば、加入者1人当たりの収益は低下する可能性があります。一方、航空機、船舶、企業、政府機関向けサービスが拡大していれば、収益性の向上が期待できます。
特に、企業向けや政府向け契約は一般消費者向けサービスよりも単価が高く、長期契約につながりやすい特徴があります。
スターリンクが安定的な営業利益とキャッシュフローを生み出していることが確認できれば、AI事業やスターシップ開発に必要な巨額投資を自社で支えられるとの評価につながります。
スターシップ開発費と宇宙事業の赤字に注目
スペース事業は、第1四半期に41億ドルの売上高を計上した一方、営業損失は6億5,700万ドルとなりました。
第2四半期には、ファルコン9ロケットを約36回打ち上げています。しかし、その多くが自社のスターリンク衛星を軌道へ投入するための打ち上げであり、外部顧客からの売上高には直接反映されません。
そのため、打ち上げ回数の増加だけで宇宙事業の成長性を判断することは困難です。
投資家が確認すべきなのは、外部顧客向け打ち上げの売上高、政府関連契約の受注状況、そしてスターシップ開発に伴う費用です。
スターシップは7月に13回目のテスト飛行を終えました。今後の実用化時期や追加試験の計画、熱シールドを含む技術的課題について、経営陣がどのような説明を行うかが重要になります。
開発スケジュールが遅れれば追加コストが発生し、スペース事業の赤字が長期化する可能性があります。反対に、再使用技術や打ち上げ能力の向上が具体的に示されれば、長期的なコスト競争力への期待が高まります。
決算直後に迫る12億株超のロックアップ解除
今回の決算が特に重要視される理由は、発表直後に大規模なロックアップ解除が控えているためです。
決算発表から2日後の8月6日には約9億1,200万株、さらに約1週間後には3億1,900万株が売却可能になる見通しです。
合計では12億株を超える株式が市場に放出可能となり、初期投資家や従業員による利益確定売りが発生する可能性があります。
実際にすべての株式が売却されるとは限りませんが、市場では潜在的な売り圧力として意識されます。株価がすでにIPO価格を下回っている状況では、需給悪化への懸念が一段と強まりやすくなります。
そのため、スペースXには市場予想を上回る業績だけでなく、投資家が株式を保有し続ける理由となる強力な成長シナリオが求められます。
AI事業の収益化、スターリンクの安定成長、スターシップの開発進展、そして設備投資の抑制が確認されれば、ロックアップ解除による売り圧力を吸収できる可能性があります。
スペースX株の反転には具体的なガイダンスが必要
今回の第2四半期決算では、売上高やEBITDAの結果以上に、経営陣が示す今後の見通しが重要になります。
特に注目すべきなのは、AI事業が黒字化に向かう時期、スターリンクの加入者数と利益率、スターシップの開発費用、そして2026年通期の設備投資計画です。
スペースXの株価は4週連続で下落しており、市場の期待は大きく後退しています。その分、予想を上回る数字や明確な成長見通しが示されれば、株価が反転する余地もあります。
一方、AI関連の損失が拡大し、スターシップの開発遅延や追加投資が明らかになれば、ロックアップ解除を前に売り圧力が強まるリスクがあります。
今回の決算は、スペースXが高い企業価値に見合う収益力を証明できるのか、それとも将来期待が先行していたことが明らかになるのかを分ける重要な局面です。
情報ソース: Barron’s: “SpaceX’s Blockbuster Earnings Report Is Coming. What to Watch.” (By Al Root, Aug 02, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら スペースX
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