AIメモリ株は売られすぎか 7月暴落の裏で利益が急拡大する異常事態

2026年7月、AIブームを支えてきたメモリ関連株が急落しました。主要銘柄は1ヶ月で20%から40%を超える下落となり、市場では「AIメモリ需要はピークを迎えたのではないか」との警戒感が急速に広がっています。

しかし、株価の下落だけを見てメモリ市場の成長が終わったと判断するのは早計です。企業の業績や利益率、メモリ需給の実態を確認すると、株価の動きとは異なる景色が見えてきます。

本記事では、米投資情報誌「バロンズ」の報道を基に、AIメモリ株を襲った「7月ショック」の背景と、今後の投資機会について分析します。

AIメモリ株を襲った歴史的な「7月ショック」

2026年7月、メモリ関連株はそろって大幅に下落しました。

・サンディスク(SNDK):47%下落
・SKハイニックス(SKHY):35%下落
・マイクロン・テクノロジー(MU):29%下落
・サムスン電子:21%下落
・ラウンドヒル・メモリETF:32%下落

サンディスクは、2025年2月のスピンオフ上場以来で最大の月間下落率を記録しました。マイクロン・テクノロジーも2015年以来の厳しい下落となっています。

セクター全体がわずか1ヶ月で30%前後も下落したことを考えると、通常の業績悪化だけでは説明できません。ファンダメンタルズへの懸念に加えて、短期資金の流出やレバレッジ取引の解消が重なった可能性があります。

象徴的なのが、ラウンドヒル・メモリETFの過去3ヶ月間のベータ値です。市場平均に対する価格変動の大きさを示すベータ値は「5.2」に達しており、市場全体の5倍を超える値動きをしていました。

AIメモリ株には長期投資資金だけでなく、短期的な値幅を狙う投機資金も大量に流入していたと考えられます。その資金が一斉に退出したことで、下落が増幅された可能性があります。

ヘッジファンドの破綻が需給悪化を加速

今回の急落を考えるうえで無視できないのが、ヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」の動向です。

同ファンドは巨額損失によって事実上の破綻状態となり、保有資産の大半を大手金融会社シタデルに売却しました。そして、同ファンドの最大保有銘柄がサンディスクだったと報じられています。

サンディスクの47%下落は、企業価値の急激な悪化だけでなく、大口投資家による強制的なポジション解消が影響した可能性があります。市場で売却可能な株数に対して大量の売り注文が出れば、買い手が不足し、株価は本来の価値を大きく下回る水準まで下落します。

さらに、7月10日にはSKハイニックスがナスダック市場に預託証券(DR)を上場しました。米国の投資家がメモリ株へ投資しやすくなった直後にファンドの破綻が起きたことで、セクター全体に連鎖的なレバレッジ解消が広がったとみられます。

今回の「7月ショック」は、AIメモリ需要の消滅というより、投資資金の偏りと強制売却が引き起こした流動性ショックの側面が強いと言えます。

株価とは逆方向に拡大する企業利益

株価が急落する一方で、メモリ企業の業績は引き続き力強い内容となっています。

マイクロン・テクノロジーは6月に発表した決算で、利益が前四半期比で約2倍に増加しました。営業利益率は81%に達しており、製造業としては極めて高い水準です。

SKハイニックスも第2四半期決算で、営業利益が前年同期比257%増となりました。市場予想を下回ったことが株価下落の材料となったものの、前年同期から見れば利益は約3.5倍に拡大しています。

この利益成長を支えているのが、生成AI向けサーバーに使用されるHBMなどの高性能メモリです。AIモデルの大規模化に伴い、GPUだけでなく、大量のデータを高速で処理するメモリの重要性も高まっています。

営業利益率が大きく上昇していることは、単純に販売数量が増えているだけでなく、メーカーが価格決定力を維持していることを示します。需要に対して供給能力が不足しており、メモリメーカーが有利な条件で販売できる市場環境が続いていると考えられます。

予想PERはわずか4.8倍まで低下

株価が大幅に下落する一方で企業利益が拡大した結果、メモリ株のバリュエーションは急速に低下しました。

ラウンドヒル・メモリETFの今後12ヶ月の予想株価収益率(PER)は、6月下旬の10倍超から4.8倍まで低下しています。

予想PER4.8倍は、成熟産業のバリュー株と比較しても低い水準です。まして、AI需要を背景に大幅な増益を続けているセクターとしては異例の割安感があります。

ただし、市場が低いPERを付けていることには理由があります。投資家は、現在のメモリ価格や利益率が長期間続かず、将来的には供給増加によって業績がピークアウトすると警戒しています。

メモリ業界は過去にも、需要拡大を受けた設備投資の増加によって供給過剰となり、価格が急落するサイクルを繰り返してきました。PERが低いから必ず割安とは限らず、現在の高収益がどこまで持続するかを見極める必要があります。

一方で、今回の下落に強制売却や投機資金の巻き戻しが大きく影響したのであれば、市場は将来の業績悪化を必要以上に織り込んでいる可能性もあります。

8月5日のサンディスク決算が試金石に

AIメモリ株の今後を占う重要なイベントが、8月5日に予定されているサンディスクの第4四半期決算です。

サンディスクは今回の下落局面で最も大きく売られた銘柄であり、破綻状態となったヘッジファンドの最大保有銘柄でもありました。

決算で売上高や利益率、今後の需要見通しが堅調であることが確認されれば、7月の47%下落がファンダメンタルズではなく需給要因によるものだったとの見方が強まります。

反対に、会社側が需要鈍化や価格下落、在庫増加を示せば、現在の低いPERは将来の業績悪化を正しく織り込んでいる可能性があります。

特に注目したいのは、AIデータセンター向け需要だけでなく、NAND型フラッシュメモリの価格、在庫水準、設備投資計画、顧客との長期契約です。

「7月ショック」は買い場なのか

今回の急落は、AIメモリ需要そのものが失われたことで発生したとは考えにくい状況です。企業利益は大幅に増加しており、高性能メモリの需給も引き締まった状態が続いています。

一方、ベータ値が5.2に達するほど値動きが激しく、短期資金やレバレッジ取引の影響を強く受ける市場でもあります。ファンダメンタルズが良好でも、需給の悪化によって株価がさらに下落する可能性には注意が必要です。

したがって、「PER4.8倍だから無条件に買い」と判断するのではなく、今後の決算で利益率と需要の持続性を確認することが重要です。

8月5日のサンディスク決算で強い業績が示されれば、7月の急落は将来的に歴史的な買い場だったと評価される可能性があります。反対に、需要や価格に変調が見られれば、メモリ株の調整は長期化するかもしれません。

AIメモリ市場の成長ストーリーは依然として継続しています。ただし、高い成長性と同時に極端なボラティリティを抱えるセクターであることを理解し、決算内容と需給動向を慎重に確認する必要があります。

情報ソース: Barron’s: “ The AI Memory Boom Just Got a Reality Check—And a Better Entry Point” (By Nate Wolf, Aug 01, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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