スペースX株はどこまで上がるのか 2.6兆ドルIPOラリーとロックアップ解除の危険信号

2026年の米国株式市場で、最も大きな話題の一つとなっているのが、宇宙開発企業スペースX(SPCX)のIPOと、その後の急激な株価上昇です。

IPO価格135ドルで上場したスペースX株は、短期間で50%近い上昇を見せ、時価総額は2.6兆ドル規模に到達しました。これは単なる新興宇宙企業の上場という枠を超え、米国株市場全体に大きな影響を与える出来事になっています。

ただし、現在の株価上昇を「宇宙ビジネスへの期待」だけで説明するのはやや単純です。むしろ注目すべきは、スペースX株を取り巻く特殊な需給構造です。

本記事では、IPO後のスペースX株がなぜここまで急騰しているのか、そして今後の最大の焦点となる「ロックアップ解除」が株価にどのような影響を与える可能性があるのかを考察します。

品薄状態が生むスペースX株のメルトアップ

現在のスペースX株の急騰には、極端な需給の偏りが大きく影響していると考えられます。

時価総額はすでに2.6兆ドル規模に達している一方で、市場で実際に取引できる株式、いわゆるフロートは約6億4000万株に限られています。巨大企業でありながら、市場に出回る株数は相対的に少ない状態です。

この限られた株式に対して、複数の買い圧力が同時に発生しています。

まず注目されるのが、オプション市場の動きです。特に「6月満期の220ドルコール」が活発に取引されている点は、投資家が短期的なさらなる上昇を見込んでいることを示しています。

コールオプションの買いが集中すると、オプションの売り手であるマーケットメーカーはリスクヘッジのために現物株を買う必要があります。その結果、株価上昇がさらに現物買いを呼び込む「ガンマスクイーズ」に近い動きが起きやすくなります。

つまり、現在のスペースX株は、企業価値の再評価だけで上昇しているというよりも、「買いたい投資家は多いが、売り物が少ない」というテクニカルな要因によって押し上げられている面が強いと見られます。

ナスダック100組み入れが需給をさらに引き締める

もう一つの大きな買い材料が、スペースXのナスダック100指数への組み入れです。

今月下旬に予定されている指数採用に伴い、パッシブファンドによる機械的な買い需要が発生すると見込まれています。その規模は70億ドルから100億ドル程度に達する可能性があるとされ、限られたフロートに対しては非常に大きなインパクトを持ちます。

さらに、ディレクション社によるレバレッジETF「SpaceX Bull 2x ETF」の登場も、投機的な資金流入を後押ししています。レバレッジ型の商品は短期資金を引き寄せやすく、値動きの大きい銘柄ではボラティリティをさらに高める要因になります。

このように、現在のスペースX株には、個人投資家、機関投資家、パッシブファンド、オプション市場、レバレッジETFという複数の買い手が同時に集まっています。

その結果、6月17日のプレマーケットで200ドルを超える水準まで買われるなど、需給主導の強い上昇相場が続いています。

本当の試練はロックアップ解除後に訪れる

ただし、この需給相場が永遠に続くわけではありません。最大の転換点となる可能性があるのが、スペースXの段階的なロックアップ解除です。

一般的なIPOでは、上場後180日間は内部者による株式売却が制限されます。しかし、スペースXは段階的な解除方式を採用しています。これにより、一定の条件を満たすと、通常より早いタイミングでまとまった株式が市場に出てくる可能性があります。

特に注目すべきなのが、第1四半期決算報告後のロックアップ解除です。

規定では、通常は20%の株式が解除対象となります。しかし、株価が175ドルを継続して上回っている場合、解除比率は30%に拡大します。

現在の株価が200ドルを超えていることを考えると、この30%解除の条件を満たす可能性は十分にあります。もしそうなれば、これまで極端に限られていた供給量が一気に増えることになります。

現在の上昇を支えている最大の要因が「売り物の少なさ」だとすれば、ロックアップ解除による供給増加は、株価にとって大きな試練になります。

第1四半期決算が株価の分岐点になる

ロックアップ解除と同時に重要になるのが、スペースXの第1四半期決算です。

時価総額2.6兆ドルという水準は、通常の成長企業とは比較できないほど高い期待を織り込んでいます。市場はスペースXに対して、宇宙開発企業としてだけでなく、通信、AIインフラ、衛星ネットワーク、将来の宇宙経済を支配する企業としての成長を期待しています。

そのため、決算で示される売上成長率、利益率、受注状況、設備投資計画などが市場予想を下回れば、失望売りが出る可能性があります。

さらに、そのタイミングでロックアップ解除による供給増加が重なれば、需給の悪化と期待剥落が同時に起こるリスクがあります。

一方で、決算内容が極めて強く、2.6兆ドルの評価を正当化するだけの成長ストーリーを示せれば、市場は新たな供給を吸収し、上昇トレンドを維持する可能性もあります。

つまり、第1四半期決算は、スペースX株が「本物の成長株」として評価されるのか、それとも「需給で買われすぎたIPO人気株」として調整に向かうのかを見極める重要な分岐点になります。

今後の投資戦略は短期と中期で分けて考える

スペースX株の今後を考えるうえでは、短期と中期を分けて見る必要があります。

短期的には、ナスダック100組み入れに伴うパッシブ買いが下支えとなり、強い需給環境が続く可能性があります。オプション市場の熱狂も重なっているため、ボラティリティを伴いながら上値を試す展開も十分に考えられます。

一方で、中期的には慎重さが必要です。第1四半期決算後の30%ロックアップ解除、さらにIPOから70日、90日、105日、135日と続く段階的な解除、そして第2四半期決算後の追加解除が控えています。

これらはすべて、市場に新たな株式供給をもたらす要因です。現在のようにフロートが限られている局面では株価が上がりやすい一方、供給が増え始めると需給バランスは大きく変化します。

スペースXは、間違いなく人類の未来を変える可能性を持つ企業です。しかし、どれほど優れた企業であっても、株価は常に期待、需給、バリュエーションの影響を受けます。

今のスペースX株に投資する際は、事業の将来性だけでなく、ロックアップ解除による株式供給の波を冷静に見極める必要があります。

情報ソース: Barron’s: “SpaceX Stock Will Face a Reckoning When Investor Lockups End” (By Al Root, June 17, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら スペースX

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