2026年6月12日、イーロン・マスク氏が率いるロケット・AI企業のスペースX(SPCX)が株式市場へ上場しました。世界的な知名度を持つ企業のIPOとして大きな注目を集め、上場初日には個人投資家を中心に買い注文が殺到しました。
しかし、上場から約1カ月が経過した現在、株価はIPO価格を下回る水準まで下落しています。華々しい市場デビューから一転し、スペースX株は厳しい調整局面を迎えています。
本記事では、米投資情報誌「バロンズ」が2026年7月22日付で報じたデータを基に、スペースX株の現状と今後の注目点について分析します。
IPO直後の熱狂から株価は急落
スペースXのIPO価格は1株135ドルに設定されました。上場初日の終値は161ドルとなり、IPO価格を約19%上回る好調なスタートを切りました。
一方、直近の終値は123.54ドルまで下落しています。上場後27取引日で初日終値から約23%下落し、IPO価格も割り込む結果となりました。
上場直後には、宇宙開発やAIといった成長テーマに対する期待に加え、イーロン・マスク氏の知名度も追い風となりました。スペースXは一般の個人投資家にも幅広く株式を提供したため、上場初日にはリテール投資家の資金が集中したとみられます。
しかし、上場時の強い買い需要が一巡すると、株価は企業価値や将来の収益性を見極める段階へ移りました。現在の下落は、事業そのものが急速に悪化したというよりも、IPO直後に上乗せされた期待やプレミアムが剥落する過程と捉えることができます。
7日続落が示す需給環境の弱さ
スペースX株は直近まで7営業日連続で下落し、その間の下落率は約21%に達しました。短期間で売りが続いていることから、足元の需給環境は弱い状態にあります。
IPO銘柄は、上場後に企業の業績や成長性だけでなく、株式の需給によって大きく動く傾向があります。上場直後は市場で売買できる株式数が限られているため、買い注文が集中すると株価が急上昇しやすくなります。
反対に、投資家の関心が薄れたり、追加の売却可能株式が市場へ出てきたりすると、買い需要を上回る売りが発生し、株価が下落しやすくなります。現在のスペースX株は、まさにIPO後の需給調整に直面している段階といえます。
8月以降に警戒されるロックアップ解除
短期的な最大のリスクは、ロックアップと呼ばれる株式売却制限の解除です。
スペースXの発行済株式総数は約130億株とされています。8月4日に予定される第2四半期決算の発表後から、一部のIPO前投資家が保有する株式について、売却制限が順次解除される見通しです。
ロックアップが解除されても、すべての投資家が直ちに売却するとは限りません。ただし、売却できる株式数が増えることで、市場では株式供給の増加が意識されます。
すでに株価がIPO価格を下回り、買いの勢いが弱まっている中で新たな売り注文が増えれば、株価への下押し圧力が強まる可能性があります。
また、IPO主幹事を務めたゴールドマン・サックスは、一定の条件下で売却制限を期限前に免除できる権限を持っています。実際に免除が行われるかどうかは不透明ですが、売却可能時期を巡る不確実性が株価変動を大きくする要因となります。
主要株主の保有が株式供給を抑制
一方で、すべての株式が短期間で市場に放出されるわけではありません。
イーロン・マスク氏を含む主要なIPO前投資家は、合計で約78億株を保有しています。これは発行済株式総数の約60%に相当する規模です。
特にマスク氏が保有する株式については、2027年6月まで売却できない契約となっています。発行済株式の大きな割合が一定期間市場に出回らないことは、経営権の安定につながるだけでなく、短期的な株式供給の急増を抑える要因にもなります。
ただし、大株主のロックアップが続くからといって、株価の下落が必ず限定されるわけではありません。市場で実際に取引されている流通株式が少ない場合、少額の売買でも株価が大きく動く可能性があります。
主要株主の保有は需給面の支えとなる一方、株価変動を完全に防ぐものではない点には注意が必要です。
主要株価指数への採用が支援材料
スペースXは、ラッセル1000とナスダック100という主要な株価指数に採用されています。
株価指数に採用されると、その指数に連動するインデックスファンドやETFは、運用方針に基づいてスペースX株を保有する必要があります。そのため、個別企業に対する短期的な評価とは別に、パッシブ運用資金による買い需要が発生します。
こうした機械的な買いは、ロックアップ解除後に増える可能性がある売り注文の一部を吸収する要因になります。
もっとも、指数連動型ファンドからの買いだけで、すべての売り圧力を支えられるとは限りません。実際の株価は、業績見通しや市場全体の投資環境、ロケット打ち上げの進捗、AI事業の成長性など、複数の要因によって決まります。
指数採用は一定の支援材料ですが、株価上昇を保証するものではありません。
スペースX株の今後を左右するポイント
スペースX株は、IPO直後の期待先行相場から、企業の実力が問われる段階へ移行しています。
短期的には、8月以降のロックアップ解除と、それに伴う株式供給の増加が最大の注目点です。売却可能株式がどの程度増え、既存株主が実際にどの程度売却するのかによって、株価の方向性は大きく変わります。
一方、中長期的には、ロケット打ち上げ事業や衛星通信事業、AI関連事業がどの程度の収益を生み出せるかが重要です。話題性や将来への期待だけでなく、売上高や利益、キャッシュフローなどの具体的な成果を示せるかが評価を左右します。
スペースXのIPO後の株価推移は、期待の大きさと株式需給の不安定さを浮き彫りにしました。今後はIPO直後の熱狂が落ち着く中で、市場が同社の適正な企業価値を探る展開が続くと考えられます。
情報ソース: Barron’s: “SpaceX Makes History…As One Of The Worst IPOs In Years” (By Elijah Nicholson-Messmer, July 22, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら スペースX
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