AIブームの中心にあったのは、これまでエヌビディア(NVDA)に代表されるGPUでした。生成AIの学習や推論には膨大な演算能力が必要であり、GPUがAIインフラ投資の象徴的な存在になってきたためです。
しかし、AIデータセンターの規模が急拡大するにつれて、市場の関心は少しずつ変化しています。次の焦点になりつつあるのは、AIチップそのものではなく、データセンター内部で大量のデータを高速にやり取りするためのネットワークインフラです。
AIモデルが巨大化すればするほど、サーバー同士、GPU同士、ストレージとの間で移動するデータ量は増えます。いくら高性能なAIチップを並べても、それらをつなぐ通信網が遅ければ、システム全体の性能は十分に発揮できません。ここに、光ネットワーク関連企業への注目が高まっている理由があります。
マーベル・テクノロジーが示すAIインフラ投資の新局面
6月2日の米国市場で特に注目されたのが、マーベル・テクノロジー(MRVL)です。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが、マーベルについて「次の1兆ドル企業になる」と予測したことが、市場の大きな材料になりました。
マーベルは、AIデータセンター内のサーバー接続に使われる光トランシーバー向けのデジタル信号プロセッサ(DSP)を手掛けています。DSPは、光通信の品質や速度を支える重要な部品であり、AIデータセンターの高速通信に欠かせない存在です。
同社の株価が大きく上昇したことは、市場がAIインフラのボトルネックを「演算能力」だけではなく「データ転送能力」にも見いだし始めたことを示しています。AI投資の主戦場は、GPU単体から、GPUを効率よく動かすためのネットワーク全体へ広がっていると言えます。
コヒレントとルメンタムにも波及する成長期待
マーベルの成長期待は、同社だけにとどまりません。光通信に関連する周辺企業にも資金が流入しています。
コヒレント(COHR)とルメンタム・ホールディングス(LITE)は、AIデータセンター向け光通信部品の需要拡大を背景に2日の市場で株価が急騰しました。特にルメンタムは、マーベルと正式なパートナーシップを結んでいる点が注目されます。
AIデータセンターを構築する大手クラウド企業にとって、個別の部品をばらばらに調達するよりも、相互接続性が確認された企業群の製品を採用する方が効率的です。そのため、マーベルを中心とした光通信エコシステムに属する企業は、AIインフラ拡大の恩恵を受けやすい立場にあります。
コヒレントやルメンタムは、AIブームの「裏方」に見える企業ですが、実際にはデータセンターの性能を左右する重要な部品を供給しています。今後、AI向けサーバーやネットワーク機器の導入が続けば、これらの企業の成長期待も高まりやすいです。
コーニングは光ファイバー需要の恩恵を受ける存在
さらに、光ネットワークの物理的な基盤を支える企業として、コーニング(GLW)にも注目が集まっています。コーニングは光ファイバーなどを手掛ける企業であり、AIデータセンターの拡張に伴う通信インフラ需要の恩恵を受ける可能性があります。
どれほど高性能な半導体やトランシーバーが開発されても、最終的にデータを運ぶには物理的な通信インフラが必要です。光ファイバーは、その基盤となる重要な素材です。
AI投資というと、どうしてもエヌビディアやマーベルのような半導体企業に注目が集まりがちです。しかし、コーニングのような企業は、データセンターの拡張が続く限り、安定した需要を期待しやすい「つるはし売り」の銘柄と見ることができます。
AI投資は「点」から「面」へ広がっている
6月2日の米国市場で象徴的だったのは、エヌビディアの株価が小幅に下落する一方で、マーベル、コヒレント、ルメンタム、コーニングといったネットワーク関連株が大きく上昇したことです。
これは、AI投資の資金がエヌビディア一極集中から、AIを支えるインフラ全体へ広がり始めている可能性を示しています。これまでの市場は、AIチップという「点」に注目していました。しかし、今後はチップ、光通信、ファイバー、電力、冷却設備を含めた「面」としてのAIインフラが評価される局面に入るかもしれません。
AIデータセンターの建設は、単に高性能GPUを並べれば完了するものではありません。大量のデータを高速に動かすネットワーク、安定した電力、効率的な冷却、そして物理的な通信インフラがそろって初めて機能します。
その意味で、光ネットワーク関連企業は、AI時代の新たな成長テーマとして注目に値します。マーベル・テクノロジー、コヒレント、ルメンタム・ホールディングス、コーニングは、AIデータセンター拡張の中で重要な役割を担う企業群です。
もちろん、株価が短期間で大きく上昇した銘柄には調整リスクもあります。期待先行で買われた場合、業績が市場予想に届かなければ株価が大きく振れる可能性があります。それでも、中長期的に見れば、AIインフラ投資がGPUからネットワークへ広がっている流れは、今後の米国株市場を考える上で重要な視点になります。
情報ソース: Barron’s: “Coherent and Lumentum Stocks Rise Sharply. Networking Stocks Get a Big Marvell Bump.” (By Nate Wolf, June 02, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「AIブームの次なる主戦場は通信インフラへ 光通信3社が示す成長シナリオ」
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