AI投資の拡大が続く中、AIサーバー向け光ネットワーキング技術やカスタム半導体を手掛けるマーベル・テクノロジー(MRVL)が注目を集めています。
同社は8月27日の米国市場終了後に決算を発表しました。売上高と利益はいずれも市場予想を上回り、今後の業績見通しも引き上げられました。それにもかかわらず、株価は時間外取引で大きく下落しています。
好決算なのになぜ売られたのでしょうか。今回の決算から見えてくるのは、マーベルの業績悪化ではなく、AI関連株に対する市場の期待値が極めて高くなっているという現実です。
売上高37%増、データセンター事業が成長を牽引
マーベルの第2四半期売上高は前年同期比37%増の27億4,000万ドルとなり、市場予想の27億2,000万ドルを上回りました。
調整後1株当たり利益(EPS)も0.94ドルとなり、予想の0.93ドルをわずかながら上回っています。
成長を支えているのがデータセンター事業です。同部門の売上高は前年同期比46%増となりました。
AIモデルの高度化に伴い、データセンター内部ではGPUやAIアクセラレーターだけでなく、それらを高速で接続するネットワーク技術の重要性も急速に高まっています。マーベルは高速接続向け半導体や光通信関連製品、さらに顧客専用に設計するカスタムチップを提供しており、AIインフラ投資拡大の恩恵を直接受ける企業の1社になっています。
第3四半期だけでなく長期売上高見通しも上方修正
会社側が示した今後の見通しも強気です。
第3四半期の売上高は中央値で31億5,000万ドル、調整後EPSは1.10ドルを見込んでおり、いずれも市場予想を上回りました。
さらに注目したいのが中長期の売上高見通しです。2027年度の売上高予想は従来の115億ドルから約120億ドルへ、2028年度についても165億ドルから180億ドルへと引き上げられました。
つまり、今回の決算だけを見れば、マーベルのAI関連ビジネスの成長シナリオが崩れたわけではありません。むしろ会社側は今後数年間について、従来以上に強い成長を想定しています。
グーグルとの大型提携がマーベルの競争力を示す
マーベルの成長を考える上で重要なのが、巨大テクノロジー企業との関係です。
グーグル(GOOGL)はマーベルに対して122億ドル規模の株式取得ワラント(新株予約権)を受け取り、両社はAI向けテンソル処理ユニット(TPU)やカスタムチップのエコシステムを巡って協力を進めます。
マイクロソフト(MSFT)も重要な顧客であり、年内には新たなAIチップ「Maia 300」の導入が予定されています。
こうした巨大テック企業との関係は、マーベルが単なる半導体部品メーカーではなく、顧客企業のAIインフラそのものを共同開発する立場へ移行していることを示しています。
カスタム半導体は顧客ごとに設計を最適化する必要があり、一度採用されると簡単には他社製品へ切り替えにくいという特徴があります。この点は、マーベルにとって中長期的な競争優位性につながります。
好決算でも株価が下落した最大の理由
それでは、なぜこれほど強い決算にもかかわらず株価は時間外取引で8%近く下落したのでしょうか。
最大の理由は、市場の期待が実際の業績成長をさらに上回っていたためです。
マーベル株は年初から決算発表直前までに184%上昇していました。つまり投資家は、今回の決算で単に市場予想を上回るだけではなく、AI関連事業について一段と大きな上振れ材料が示されることを期待していたと考えられます。
特に期待されていたのがグーグルとの大型契約です。
しかし経営陣は、グーグルとの新契約による2028年度までの収益について、すでに既存のカスタム半導体事業の売上高目標に含まれていると説明しました。
本格的な追加成長が期待できるのは2029年度以降となります。
市場が期待していた「新契約による短期的な業績上振れ」が示されなかったため、急上昇していた株価から利益確定売りが出たようです。
重要なのは2027年度後半からのカスタムチップ成長
短期的な株価の調整と、中長期的な事業の成長は分けて考える必要があります。
今回の決算で特に重要なのは、カスタムチップ事業について2027年度後半から成長が大きく加速すると見込まれている点です。
AI市場ではエヌビディア(NVDA)のGPUが圧倒的な存在感を持っていますが、グーグルやマイクロソフトなど巨大クラウド企業は、自社サービスに最適化したAI半導体の開発も加速させています。
こうした流れが続けば、カスタム半導体設計を得意とするマーベルにとって市場機会はさらに拡大する可能性があります。
10月6日に予定されているインベスター・デーでは、グーグルとの提携を含め、カスタムチップ事業の詳細がどこまで明らかになるかが重要なポイントになります。
マーベル株の下落は成長ストーリーの崩壊ではない
今回の決算後の株価下落は、マーベルのファンダメンタルズが悪化した結果というよりも、急騰していた株価と高すぎる市場期待の調整という側面が強いと考えられます。
売上高は前年同期比37%増、データセンター事業は46%増となり、2027年度と2028年度の売上高見通しも引き上げられました。
一方、グーグルとの大型提携による本格的な追加収益が2029年度以降になることが明らかになったことで、短期的な成長加速を期待していた投資家にとっては失望材料となりました。
今後の焦点は、マーベルが巨大テック企業とのカスタムチップ開発を実際の売上高と利益成長へどれだけ結びつけられるかです。
AIインフラ市場における同社の競争力は依然として強く、今回の株価下落だけで長期的な成長シナリオが崩れたと判断する段階ではありません。
今回の株価下落を短期的な期待剥落と見るのか、それとも将来の成長を慎重に見極めるべきサインと捉えるのか。今後はカスタムチップ事業の成長ペースと、グーグルとの提携が実際の業績にどのように反映されていくかが、マーベル株を評価する上で重要なポイントになりそうです。
情報ソース: Barron’s: “Marvell Stock Sinks as Big Expectations Outweigh Solid Earnings” (By Nate Wolf, Aug 27, 2026) Marketwatch: “Marvell boosts its forecasts, but the stock slides as Wall Street wonders if there’s more to the story” (By Britney Nguyen, Aug. 27, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら マーベル・テクノロジー MRVL
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