ビデオ会議サービスで知られるズーム・コミュニケーションズ(ZM)が、再び市場の注目を集めています。
同社はパンデミック期に急成長した代表的な「巣ごもり銘柄」として知られました。しかし、その後は出社回帰や競争激化によって成長鈍化が意識され、「コロナ特需が終わった企業」と見られる場面も少なくありませんでした。
ところが、2026年5月21日の米国市場終了後に発表された第1四半期決算は、そうした見方を変える内容となりました。ズームは単なるビデオ会議ツールではなく、AIを活用した企業向け生産性プラットフォームへと変化しつつあります。
第1四半期決算は市場予想を上回る内容
ズームの第1四半期売上高は、前年同期比5.5%増の12億4000万ドルとなりました。市場予想の12億2000万ドルを上回り、成長率こそ一桁台ながら、安定した需要が続いていることを示しました。
調整後1株当たり利益(EPS)は1.55ドルでした。これは前年同期の1.43ドルを上回るだけでなく、市場予想の1.42ドルも超える水準です。
売上高と利益の両方で市場予想を上回ったことは、ズームが成長鈍化局面の中でも収益力を高めていることを意味します。パンデミック期のような爆発的な利用者増加はなくなったものの、既存顧客から着実に価値を引き出すビジネスモデルへ移行していると考えられます。
AI CompanionとMy Notesが成長の柱に
今回の決算で特に注目されたのが、AI関連機能の急拡大です。
有料版「AI Companion」のユーザー数は前年同期比で184%増加しました。さらに、AIプログラム「My Notes」は、提供開始からわずか4カ月で150万人のライセンスユーザーを獲得しました。
これは非常に重要な動きです。多くのテクノロジー企業がAIを成長戦略として掲げていますが、実際に顧客が日常業務で使い、売上や契約拡大につながっている例はまだ限られています。
ズームの場合、AIは単なる宣伝文句ではありません。会議の要約、メモ作成、情報整理、業務効率化といった具体的な用途で使われています。これにより、顧客はズームを単なる「オンライン会議の場」ではなく、仕事の生産性を高めるツールとして評価し始めています。
AI機能が生み出すロックイン効果
ズームのAI戦略で重要なのは、追加売上だけではありません。AI機能が顧客の乗り換えを防ぐロックイン効果を生み出す点も大きなポイントです。
企業が日々の会議記録や議事録作成、社内コミュニケーションの整理をズームのAI機能に依存するようになれば、他社サービスへ移行するハードルは高くなります。
特に企業向けソフトウェアでは、一度業務フローに組み込まれたサービスは簡単には置き換えられません。ズームがAIを通じて顧客の業務プロセスに深く入り込めば、解約率の低下や契約単価の上昇につながる可能性があります。
この点で、ズームは単なるビデオ会議アプリから、企業の仕事の流れを支えるプラットフォームへと進化しようとしていると言えます。
通期見通しの上方修正が示す経営陣の自信
ズームは今回、2027会計年度の通期業績見通しも上方修正しました。
売上高見通しは50億8000万ドル〜50億9000万ドルとなり、市場予想の50億7000万ドルを上回りました。また、調整後EPS見通しは5.96ドルから6.00ドルへ引き上げられ、市場予想の5.88ドルを上回る内容となりました。
売上高の上方修正幅は大きくないものの、利益見通しが市場予想を上回ったことは、ズームの収益体質が改善していることを示しています。
さらに同社は自社株買い枠の増額も発表しました。自社株買いは、経営陣が自社のキャッシュ創出力に自信を持っていることの表れです。また、現在の株価が企業価値に対して割安だと考えているという市場へのメッセージにもなります。
株価は好決算を受けて上昇
好決算と強気の見通しを受け、ズーム株は翌22日の米国市場で9.2%上昇しました。2026年に入ってから株価はすでに22%上昇しており、市場では同社を見直す動きが出ています。
これまでズームは「パンデミック期の成長企業」というイメージが強く、成長鈍化が株価の重しになっていました。しかし、今回の決算は、ズームがAIを武器に新たな成長ストーリーを作りつつあることを示しました。
市場が注目しているのは、単なる売上成長率ではありません。AIによって契約単価を高め、利益率を維持し、安定したキャッシュフローを生み出せるかどうかです。
ズームはAI銘柄として再評価されるのか
ズームの課題は明確です。マイクロソフト(MSFT)のTeamsやグーグルのMeetなど、競合は非常に強力です。大企業向け市場では、既存のオフィスソフトやクラウドサービスと組み合わせた競争が続きます。
それでも、ズームには強みがあります。使いやすさ、ビデオ会議で培ったブランド力、そして企業向けに特化したAI機能の拡充です。
今回の決算を見る限り、ズームはパンデミック期の一時的な勝者ではなく、AI時代の企業向け生産性ツールとして再評価される可能性があります。今後の焦点は、AI CompanionやMy Notesの普及がどこまで契約拡大や顧客維持に結びつくかです。
売上成長はまだ緩やかですが、利益成長とAI機能の浸透が続けば、ズームは「終わったコロナ銘柄」ではなく、「AIで再成長を狙うソフトウェア企業」として投資家から見直される余地があります。
情報ソース: Barron’s: “Zoom Stock Jumps After Earnings. Is the Video Calling Company Turning Into an AI Stock?” (By Kit Norton, May 22, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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