過去1年で株価が3,218%上昇したサンディスク(SNDK)に、再び市場の注目が集まっています。これほど急騰した銘柄を見ると、多くの投資家は「すでに上がりすぎではないか」「ここから買うのは危険ではないか」と感じます。
しかし、シティ・リサーチは5月19日、サンディスクに対する「買い」の投資判断を維持し、目標株価を従来の1,300ドルから2,025ドルへ大幅に引き上げました。これは直近株価からさらに約52%の上昇余地があるという見方です。
一見すると過熱感の強い銘柄ですが、サンディスクの株価上昇には、単なる投機では片付けられない複数の理由があります。本記事では、バロンズが報じたシティ・リサーチの分析をもとに、サンディスクの将来性を整理します。
AIデータセンター需要が成長を支える
サンディスク株の急騰を支えている最大の要因は、AIデータセンター向け需要の拡大です。特に同社のエンタープライズ向けSSD、いわゆるeSSDは、AIインフラに欠かせない部品として存在感を高めています。
AIモデルの学習や推論には、膨大なデータを高速に処理するストレージが必要です。そのため、データセンター事業者は高性能SSDの調達を進めています。サンディスクは、この構造的な需要拡大の中心に位置する企業の一つです。
シティ・リサーチのアナリストであるアシヤ・マーチャント氏によれば、顧客との対話を通じて、こうした需要が2030年まで続く明確な兆候が見られるとのことです。
これは重要なポイントです。半導体やハードウェア関連の需要は通常、在庫循環によって大きく変動します。しかし、AIデータセンター投資は一時的な特需ではなく、長期的なインフラ投資として進んでいる可能性があります。
つまり、サンディスクの成長ストーリーは「今だけのブーム」ではなく、数年単位で続く構造的な追い風に支えられていると考えられます。
キオクシアの好決算が示すフラッシュメモリ市場の強さ
サンディスクの将来性を考えるうえでは、同業他社の動向も重要です。特に注目されるのが、日本のキオクシア・ホールディングス(285A)の決算です。
キオクシアは直近の決算で、前四半期比約85%という大幅な増収を記録しました。さらに、今期についても75%の連続成長を見込む強いガイダンスを示しています。
これは、フラッシュメモリ市場全体の需要が急拡大していることを示す材料です。AIデータセンター向けストレージ需要が供給能力を上回れば、価格交渉力はメーカー側に移ります。
その場合、サンディスクもキオクシアと同様に、今後の決算で市場予想を上回る業績を示す可能性があります。個別企業の努力だけでなく、市場全体の拡大がサンディスク株を支える構図です。
自社株買いがEPSを押し上げる可能性
もう一つの注目点は、自社株買いです。サンディスクは前四半期に60億ドル規模の自社株買い枠を発表しました。これは時価総額の約3%に相当します。
シティ・リサーチの試算では、株式数が1%減少するごとに、EPS、つまり1株当たり利益が2ドル押し上げられるとされています。
さらに、この自社株買いによるEPS押し上げ効果は、シティの目標株価2,025ドルの算出モデルにはまだ十分に織り込まれていないとされています。
今後、AIデータセンター需要の拡大によってフリーキャッシュフローが増えれば、追加的な自社株買いが進む可能性もあります。その場合、利益成長に加えて、発行済み株式数の減少による1株当たり価値の向上も期待できます。
短期的な調整には注意が必要
もちろん、サンディスク株にリスクがないわけではありません。5月19日のプレマーケットでは、同社株は3.4%下落し、1,288.20ドルとなりました。
ただし、この下落はサンディスク固有の悪材料というより、ハードウェア関連株全体に売りが広がった影響とみられます。同じタイミングで、マイクロン・テクノロジー(MU)は2.5%下落し、シーゲイト・テクノロジー(STX)は3.2%下落、ウエスタンデジタル(WDC)も3.7%下落しました。
AI関連株やハードウェア株は大きく上昇してきただけに、利益確定売りが出やすい局面です。急騰銘柄である以上、短期的な値動きの大きさには注意が必要です。
一方で、長期的な需要見通しが崩れていないのであれば、こうした調整は投資家にとってエントリーポイントになる可能性もあります。
ウォール街の評価はなお強気
ファクトセットが集計したアナリスト評価によると、サンディスクをカバーする26社のうち20社が「買い」と評価しています。一方で、「売り」評価はわずか1社にとどまっています。
さらに、シティ・リサーチを含む5社が、すでにサンディスクの目標株価を2,000ドル以上に設定しています。
アナリスト予想が必ず正しいわけではありません。しかし、AIデータセンター需要、フラッシュメモリ市場の逼迫、自社株買いという複数の材料が重なっている点は、単なる楽観論とは異なります。
サンディスク株の上昇はバブルなのか
サンディスク株は過去1年で3,218%上昇しました。この数字だけを見れば、バブル的な印象を受けるのは自然です。
しかし、株価上昇の背景を分解すると、主な理由は3つあります。
1つ目は、AIデータセンター向けeSSD需要が2030年まで続く可能性です。
2つ目は、キオクシアの好決算が示すように、フラッシュメモリ市場全体が急拡大していることです。
3つ目は、自社株買いによるEPS押し上げ効果です。
この3つが同時に進むのであれば、サンディスクの株価上昇は単なる過熱ではなく、業績拡大と株主価値向上を織り込む動きと見ることもできます。
もちろん、急騰銘柄である以上、短期的な調整リスクはあります。それでも、AIインフラ投資が今後も続くという前提に立てば、サンディスクは引き続き注目すべきメモリ関連銘柄の一つです。
サンディスク株の3,200%上昇は、すでに終わった物語なのか。それとも、AIデータセンター時代における新たな成長の序章なのか。今後の決算と需要動向が、その答えを示すことになります。
情報ソース: Barron’s: “Sandisk Stock Can Rise Another 52%, Says Citi. Why Investors Should Buy.” (By Nate Wolf, May 19, 2026)
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
*過去記事「AIバブルか本物の成長か 株価494%急騰のサンディスクから読み解くメモリ市場の将来性」
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