著名AI投資家が撤退 ルメンタムとコヒレント株急落は危険信号か

  • 2026年5月19日
  • 2026年5月19日
  • BS余話

AIブームを支えるインフラ関連株に対して、市場の見方が揺れています。これまでAIデータセンター向けの光通信部品やネットワーク関連需要を背景に、ルメンタム・ホールディングス(LITE)コヒレント(COHR)といった銘柄は大きく上昇してきました。

しかし、2026年5月18日に報じられた著名AI投資家の売却ニュースをきっかけに、これらの銘柄は急落しました。ルメンタムは8.8%、コヒレントは5.1%下落し、AIインフラ株の上昇相場に対して「そろそろ天井なのではないか」という警戒感が広がっています。

本記事では、バロンズが報じた内容をもとに、著名投資家の撤退が意味するもの、エヌビディア(NVDA)による巨額投資の重要性、そしてAIインフラ関連株の今後の見通しについて考察します。

著名AI投資家の売却が市場に与えた衝撃

今回、市場の注目を集めたのは、元オープンAIの研究者であり、AI投資会社「Situational Awareness」を率いるレオポルド・アシェンブレナー氏の動きです。

同氏は、2024年のエッセイで「2027年にも超人的なAIが到来する可能性がある」と指摘したことで知られています。AIの将来に対して非常に強気な見方を示してきた人物であるだけに、その投資会社が第1四半期にルメンタム、コヒレント、タワー・セミコンダクター(TSEM)の株式をすべて売却したことは、市場に大きなインパクトを与えました。

一見すると、AIインフラ関連株の将来性に疑問が生じたようにも見えます。しかし、この売却をすぐに「AIインフラ相場の終わり」と判断するのは早計です。

特にルメンタムの株価は、過去12カ月で1000%以上という驚異的な上昇を記録していました。これだけ株価が急騰した銘柄で、機関投資家が利益を確定すること自体は自然な行動です。

むしろ今回の売却は、事業の先行きに対する不信というよりも、株価上昇後の利益確定やポートフォリオ調整の一環と見ることができます。

高金利環境がハイバリュエーション株の重荷に

もう一つ重要なのは、市場全体の環境です。米国では債券利回りの高止まりが続いており、株式市場全体にとって逆風となっています。

特にAI関連株の中でも、将来の成長期待を織り込んで高いバリュエーションが付けられている銘柄は、金利上昇局面で売られやすくなります。将来の利益を現在価値に割り引く際、高金利は成長株の評価を押し下げる要因になるためです。

ルメンタムやコヒレントのようなAIインフラ関連株は、AIブームの中で強い期待を集めてきました。その分、少しでも利益確定の材料が出ると、短期的な売りが加速しやすい状況にあります。

今回の急落は、著名投資家の売却というニュースがきっかけではありますが、背景には高金利環境と過熱感の調整という市場全体の流れもあると考えられます。

エヌビディアの巨額投資が示す構造的需要

一方で、AIインフラ企業の長期的な将来性を考える上で、より重要なのはエヌビディアの動きです。

バロンズによれば、エヌビディアは2026年3月、ルメンタムとコヒレントに対してそれぞれ20億ドルの投資を行い、さらに数十億ドル規模の購入確約を結んでいます。

これは単なる金融投資ではありません。エヌビディアはAIチップ市場の中心的存在であり、次世代AIデータセンターの構築において、光通信技術や高速ネットワーク部品を必要としています。

つまり、エヌビディアによる投資と購入確約は、ルメンタムやコヒレントの技術が将来のAIインフラにとって不可欠であることを示していると考えられます。

投資ファンドの資金は短期的な市場環境や株価水準によって機動的に動きます。一方、エヌビディアのような事業会社による投資は、数年単位の製品ロードマップや供給網の確保に基づいています。

この点を踏まえると、著名投資家の売却よりも、エヌビディアの長期的なコミットメントの方が、企業のファンダメンタルズを判断する上では重要な材料と言えます。

ルメンタムの競争優位性

特に注目したいのが、ルメンタムのポジションです。

同社は、エヌビディアの次世代AIスイッチであるSpectrumXおよびQuantumX向けレーザーの単独サプライヤーとされています。これは、AIインフラ市場における大きな競争優位性を意味します。

AIチップの性能が高まるほど、チップ同士やサーバー同士を高速につなぐ通信技術の重要性は増していきます。演算能力がどれだけ高くても、データのやり取りが遅ければ、AIデータセンター全体の性能は制限されます。

そのため、光通信技術はAIインフラの中核技術の一つになりつつあります。エヌビディアが次世代ネットワーク技術として進める分野において、ルメンタムが重要な部品を供給していることは、同社の将来性を考える上で大きなポイントです。

もちろん、単独サプライヤーという立場は大きなチャンスである一方、エヌビディアへの依存度が高まるリスクもあります。しかし、AIインフラ投資が今後も拡大するのであれば、ルメンタムはその恩恵を受けやすい立場にあると考えられます。

AIインフラ株は調整局面に入っただけか

今回の急落は、AIインフラ関連株に対する市場の期待がいったん冷やされたことを示しています。過去1年で大きく上昇した銘柄にとって、利益確定売りやバリュエーション調整は避けられない局面です。

しかし、株価の調整と事業環境の悪化は分けて考える必要があります。

AIデータセンターの建設、AIチップ間の高速通信、光通信部品への需要といった構造的な成長要因は、今回の売却ニュースによって消えたわけではありません。むしろ、エヌビディアによる巨額投資と購入確約は、AIインフラ需要が中長期的に続く可能性を示す重要な材料です。

短期的には、ルメンタムやコヒレントの株価は高いボラティリティにさらされる可能性があります。高金利、利益確定、投資家心理の変化が重なれば、さらに調整が続く場面も考えられます。

それでも、AIインフラそのものの重要性は変わっていません。AIブームが単なるソフトウェアや半導体チップだけでなく、電力、冷却、光通信、ネットワーク機器といった広範なインフラ需要を生み出している以上、関連企業には引き続き成長機会があります。

まとめ

著名AI投資家によるルメンタム、コヒレント、タワー・セミコンダクターの売却は、市場に短期的な不安をもたらしました。しかし、その背景には、株価急騰後の利益確定や高金利環境下でのポートフォリオ調整という側面が大きいと考えられます。

一方で、エヌビディアがルメンタムとコヒレントに対してそれぞれ20億ドルの投資を行い、さらに数十億ドル規模の購入確約を結んでいることは、AIインフラ需要の強さを示す重要な事実です。

AIインフラ関連株は、短期的には過熱感の調整局面に入った可能性があります。しかし、AIデータセンターの拡大と高速通信技術の重要性を考えると、長期的な成長ストーリーが終わったとは言い切れません。

今回の下落は、AIインフラ相場の終わりではなく、急騰後の健全な調整と見ることもできます。投資家にとって重要なのは、株価の短期的な値動きだけでなく、エヌビディアを中心としたAIインフラ投資の流れが今後も続くかどうかを冷静に見極めることです。

情報ソース:Barron’s “Lumentum, Coherent Drop After Prominent AI Investor Sells Stakes”(By Adam Clark, May 18, 2026)

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

*過去記事「AIブームの次なる主戦場は通信インフラへ 光通信3社が示す成長シナリオ

🎧この記事は音声でもお楽しみいただけます。AIホストによる会話形式で、わかりやすく、さらに深く解説しています。ぜひご活用ください👇

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG