生成AIの普及が進むなか、AI向けクラウドインフラを提供する「ネオクラウド」企業への注目が一段と高まっています。その中心銘柄の一つが、ネビウス・グループ(NBIS)です。
ネビウスは5月13日の米国市場開始前に2026年第1四半期決算を発表しました。内容は市場予想を上回るもので、AI向け計算資源への需要がなお極めて強いことを示す結果となりました。
同社の第1四半期売上高は3億9900万ドルとなり、前年同期の5530万ドルから7倍以上に拡大しました。アナリスト予想の3億7510万ドルも上回っており、売上成長の勢いは非常に強いものがあります。
一方で、調整後純損失は1億30万ドルとなり、前年同期の8360万ドルから赤字幅は拡大しました。ただし、市場予想では1億7400万ドルの赤字が見込まれていたため、実際の損失は予想よりもかなり小さく抑えられました。
この決算を一言で表すなら、「赤字を抱えながらも、成長スピードで市場の期待を上回った決算」といえます。この発表を受け、5月13日の米国市場午前の段階でネビウスの株価は16.7%高の208.87ドルと高騰しています。
売上7倍成長の背景にあるAI計算資源の不足
ネビウスの急成長を支えているのは、生成AI市場における計算資源不足です。
大規模言語モデルや画像生成AI、企業向けAIアプリケーションの開発には、膨大なGPU、電力、データセンター容量が必要になります。従来のクラウド大手だけでは需要を吸収しきれないなか、ネビウスやコアウィーブ(CRWV)のようなAI特化型クラウド企業が急速に存在感を高めています。
ネビウスは、単なるクラウド企業というよりも、AI時代の計算インフラを提供する企業です。売上が前年同期比で7倍以上に拡大したことは、同社のサービスに対する需要が一時的なブームではなく、構造的な成長局面に入っている可能性を示しています。
ただし、現時点では利益よりも規模拡大を優先する段階です。AIインフラ事業では、データセンターの確保、電力契約、GPU導入、人材獲得などに巨額の先行投資が必要になります。そのため、赤字が続いていること自体は大きな驚きではありません。
重要なのは、赤字の大きさよりも、投資したインフラをどれだけ早く稼働させ、売上に転換できるかです。
データセンターと電力確保で大きく前進
今回の決算で特に注目されたのが、データセンターと電力容量に関する進展です。
ネビウスは新たにペンシルベニア州で1.2ギガワットの契約容量を持つデータセンターを発表しました。これにより、100メガワット以上の容量を持つサイトは世界で7カ所に拡大しました。2025年末時点では1カ所だったことを考えると、わずかな期間で大幅にインフラ基盤を拡大していることになります。
さらに、2026年末までの契約電力ガイダンスは、従来の3ギガワットから4ギガワットへ引き上げられました。現在の契約済み容量は3.5ギガワットを超えており、AIクラウド企業としての規模感は急速に拡大しています。
ネビウスは年末までに年間経常収益(ARR)が70億ドル〜90億ドルに達するとの見通しも示しています。また、稼働中のコンピューティング容量については、年末までに800メガワット〜1ギガワットを目指しています。
この数字は、ネビウスが単なる成長期待銘柄ではなく、実際に大型顧客を支えるインフラ企業へと移行しつつあることを示しています。
コアウィーブとの違いは「稼働スピード」
ネビウスを分析するうえで避けて通れないのが、最大のライバルであるコアウィーブとの比較です。
両社はともにAI特化型クラウド、いわゆるネオクラウド銘柄として市場から注目されています。契約済み電力容量では、ネビウスは3.5ギガワット超を確保しており、コアウィーブとほぼ同じ水準に近づいています。
しかし、重要なのは契約容量そのものではなく、その容量が実際に稼働しているかどうかです。
コアウィーブはすでに約1ギガワットのアクティブパワーを稼働させている一方、ネビウスが同水準に到達するのは2026年末の見込みです。この数カ月の差が、売上化のスピードに大きな違いを生んでいます。
年末時点のARR予想でも、コアウィーブは183億ドルとされる一方、ネビウスは70億ドル〜90億ドルにとどまる見通しです。つまり、契約容量では追いつきつつあるものの、収益化の面ではまだコアウィーブが先行している状況です。
今後のネビウス株を見るうえでは、契約した電力やデータセンターをどれだけ計画通りに稼働させられるかが最大の焦点になります。
メタとの大型契約が支える成長シナリオ
ネビウスにとって大きな強みとなっているのが、メタ・プラットフォームズ(META)との大型契約です。
同社はメタと最大270億ドル規模の5年契約を結んでおり、これはネビウスの成長を支える重要なアンカーテナントといえます。AIインフラ事業では、巨額の設備投資を行う前提として、長期的に利用してくれる大口顧客の存在が極めて重要です。
メタのような巨大テック企業との契約は、ネビウスの売上見通しに一定の安定感を与えます。同時に、資金調達や追加投資を行う際にも、事業の信頼性を高める材料になります。
AIインフラ企業にとって、顧客を確保できないまま設備投資だけが先行することは大きなリスクです。しかし、ネビウスはメタという大型顧客を持つことで、そのリスクをある程度抑えながら拡大を進められる立場にあります。
クラリファイとの連携が示す次の成長領域
ネビウスは決算発表の前日に、AIラボであるクラリファイのコアエンジニアリングチームの合流と、同社技術のライセンス契約も発表しました。
これは、ネビウスが単なるインフラ提供企業にとどまらず、AI推論ソリューションの領域にも踏み込もうとしていることを示しています。
AI市場では、これまで大規模モデルを学習させるためのインフラ需要が注目されてきました。しかし今後は、実際にAIを企業や消費者向けサービスで動かす「推論」需要がさらに拡大すると見られています。
推論需要は継続的に発生するため、クラウド企業にとっては安定した収益源になりやすい分野です。ネビウスがこの領域で技術力を高めることができれば、単にGPUを貸し出す企業から、AIアプリケーションの実行基盤を提供する企業へと進化する可能性があります。
ネビウス株の将来性と投資家が見るべきポイント
ネビウスの時価総額は約500億ドルとされ、コアウィーブの約585億ドルに迫る水準まで評価されています。これは、投資家がネビウスをコアウィーブに並ぶネオクラウドの有力企業として見始めていることを意味します。
もちろん、リスクもあります。最大のリスクは、データセンター建設や電力接続の遅延です。契約容量を確保していても、それが予定通り稼働しなければ売上化は遅れます。また、AIインフラ市場は設備投資額が非常に大きく、資金調達環境の変化にも影響を受けやすい分野です。
さらに、現在の高い評価には将来の成長期待がかなり織り込まれています。決算ごとに稼働容量、ARR、主要顧客との契約状況を確認する必要があります。
それでも、今回の決算はネビウスの成長シナリオを強く裏付ける内容でした。売上の急拡大、電力容量の上方修正、メタとの大型契約、推論領域への布石は、同社がAIインフラ市場で重要な地位を築きつつあることを示しています。
ネビウスは、コアウィーブに少し遅れて走る挑戦者でありながら、急速に差を詰めている存在です。今後、契約済みインフラを計画通りに稼働させることができれば、AIクラウド市場におけるトップ企業の一角として、さらに注目を集める可能性があります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
*過去記事「AIインフラ株の本命はどっちだ コアウィーブとネビウスの将来性を徹底比較」
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