AI相場の中心銘柄といえば、多くの投資家がまずエヌビディア(NVDA)を思い浮かべます。生成AIの普及により、同社のGPUはデータセンター投資の中核となり、株式市場でも圧倒的な存在感を示してきました。
しかし、ここにきて別の巨大企業がAI時代の主役候補として改めて注目されています。アルファベット(GOOGL)です。
これまで投資家の間では、「生成AIの普及によってグーグル検索の優位性が崩れるのではないか」という懸念がありました。AIチャットボットが検索エンジンの代替になれば、グーグルの広告ビジネスは打撃を受けるという見方です。
ところが、2026年4月に伝えられた最新の決算データを見る限り、その懸念は大きく後退しています。むしろ、アルファベットは検索、クラウド、AIチップを組み合わせることで、エヌビディアに迫るAIインフラ企業へと変貌しつつあります。
検索事業は衰退ではなく再加速している
最も重要なのは、アルファベットの中核である検索事業が依然として力強い成長を続けている点です。
バロンズによると、同社の検索売上は前年同期比で19%増加し、4四半期連続で成長が加速しました。これは、生成AIがグーグル検索を破壊するというシナリオとは逆の結果です。
アルファベットは検索にAIを組み込み、ユーザーにより高度な情報提供を行う方向へ進んでいます。従来型のキーワード検索にAIによる要約や回答機能が加わることで、検索体験そのものが進化していると考えられます。
重要なのは、AIが検索ビジネスを奪っているのではなく、検索ビジネスの価値を高める方向に働いている可能性があることです。広告収入を支えるユーザー接点が維持され、さらに強化されているのであれば、アルファベットの収益基盤は想像以上に堅いと言えます。
4,680億ドルの受注残が意味するもの
今回のデータで特に注目されるのが、アルファベットの収益バックログ、つまり将来売上につながる受注残です。
バロンズによれば、同社のバックログは前四半期の2,430億ドルから4,680億ドルへと急増しました。わずか3カ月でほぼ倍増したことになります。
この数字が重要なのは、単なる将来期待ではなく、契約ベースで積み上がっている将来売上の見込みを示している点です。しかも、その99%がクラウド事業に関連しており、半分以上が今後2年以内に売上として計上される見通しとされています。
これは、アルファベットが従来の広告依存型企業から、エンタープライズ向けAIインフラ企業へと大きく軸足を広げていることを示しています。
グーグルクラウドは、これまでアマゾン・ドット・コム(AMZN)のAWSやマイクロソフト(MSFT)のAzureに比べて、やや後発の印象がありました。しかし、AI需要の拡大によって状況は変わりつつあります。企業がAIモデルの開発や運用に必要な計算資源を求めるなか、グーグルクラウドの存在感が急速に高まっています。
TPUが生むアルファベット独自の強み
アルファベットのAI戦略で見逃せないのが、自社開発のAIチップであるTPUです。
エヌビディアのGPUは、AI時代の汎用的な計算基盤として圧倒的な地位を築いています。一方、グーグルのTPUは、グーグルクラウドや自社サービスに最適化された専用チップです。
この違いは非常に重要です。アルファベットは、検索、YouTube、クラウド、AIモデル、そしてTPUを一体で展開できます。つまり、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアからクラウド基盤までを自社で設計・運用できる垂直統合型の企業です。
このモデルは、単にチップを売る企業とは異なります。顧客はグーグルクラウドを利用することで、TPUを含むAIインフラにアクセスできます。その結果、クラウド契約が長期化し、顧客がアルファベットのエコシステムに定着しやすくなります。
エヌビディアがAI半導体市場の王者であることは変わりません。しかし、アルファベットは自社クラウドとTPUを組み合わせることで、別の角度からAIインフラ市場を取りにいっていると言えます。
株価上昇後も評価される理由
アルファベット株は過去1年で大きく上昇し、市場ではエヌビディアの時価総額に迫る存在として注目されています。
株価が大きく上がった後は、通常であれば割高感への警戒が出やすくなります。しかし、JPモルガンはアルファベットの目標株価を460ドルへ引き上げ、同社を引き続き有力銘柄として評価しています。
その背景にあるのが、やはり4,680億ドルという巨大なバックログです。今後2年で大きな規模の契約が売上に転換していくのであれば、現在の利益予想がさらに上方修正される可能性があります。
もちろん、すべてのアナリストが強気というわけではありません。DAダビッドソンなど一部のアナリストは、現在の株価には好材料がかなり織り込まれているとして中立的な見方を示しています。
この点は投資家にとって重要です。アルファベットが優れた企業であることと、現在の株価が常に割安であることは同じではありません。今後は、バックログが実際にどれだけ高い利益率で売上化されるか、設備投資の増加が利益をどこまで圧迫するかを慎重に見る必要があります。
アルファベットはAI時代の構造的勝者になれるか
今回の決算データから見えてくるのは、アルファベットが単なる検索企業ではなくなっているという事実です。
検索事業はAIによって破壊されるどころか、成長が再加速しています。クラウド事業では4,680億ドル規模の受注残を抱え、将来売上の見通しが大きく膨らんでいます。さらにTPUという独自のAIチップを持つことで、ハードウェア面でもエヌビディアとは異なる競争力を築いています。
エヌビディアがAIブームの象徴であることに変わりはありません。しかし、アルファベットは広告、クラウド、AIチップ、生成AIサービスを組み合わせた総合力で、AI時代のもう一つの巨大な勝者になる可能性があります。
今後の焦点は、アルファベットが受注残を着実に売上と利益へ変換できるかです。設備投資の負担は避けられませんが、それを上回る成長が確認できれば、同社の評価はさらに高まる可能性があります。
グーグルはエヌビディアを超えるのか。その答えはまだ出ていません。ただし、アルファベットがAI時代の主役争いに本格的に加わったことは、今回の数字が強く示しています。
情報ソース:Barron’s: “Google Closes In on Nvidia. Why Alphabet Stock Remains J.P. Morgan’s ‘Top Overall Pick’” (By Nate Wolf, May 4, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら アルファベット GOOGL
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