アップル株はまだ上がる?DRAM価格100%高騰でも「買い」とされる3つの理由

今年に入り、アップル(AAPL)の株価は年初から5.3%下落し(3月6日終値時点)、3月9日午前の取引でも全体相場(S&P 500の1.3%下落)に引きずられる形で一時255.81ドルへと値を下げています。市場全体を覆うインフレや部品コスト上昇への懸念が、世界最大のハイテク企業にも影を落としているように見えます。

しかし、足元のデータとアナリストの動向を紐解くと、現在のアップルは「守り」に入っているどころか、部品コストの高騰という業界全体の危機を逆手に取り、ライバルを蹴落とすための巨大な「攻め」のフェーズに入っていることが見えてきます。本稿では、最新の事実情報を基にアップルの将来性と真の強さを分析します。

1. 「599ドルの衝撃」が意味する、エコシステム拡大の野心

先週、アップルが発表した新製品の価格設定は、業界に激震を走らせるものでした。 標準モデルが799ドルである「iPhone 17」に対し、廉価版とみられる「iPhone 17e」を599ドルで投入。さらに驚異的なのは「MacBook Neo」です。前世代のMacBook Airが999ドルであったのに対し、なんと40%ものディスカウントとなる599ドルという開始価格を設定しました。
*過去記事「iPhoneより安いMac誕生:MacBook Neoがアップル株に追い風となる理由

この価格設定から読み取れるアップルの戦略は明確です。それは「圧倒的なシェアの奪取」です。 通常、インフレ環境下では企業は製品価格を値上げして利益幅を確保しようとします。しかしアップルは、あえてエントリーモデルの価格のハードルを大きく下げることで、これまで価格がネックでアップル製品を手に取れなかった層や、低価格帯を主戦場とする他社メーカーの顧客を一気に自社のエコシステムへと取り込もうとしています。

一度アップルのサービス(iCloudやApp Storeなど)に囲い込めば、長期的な収益基盤は盤石になります。この「599ドル戦略」は、将来の莫大なサービス収益への種まきと言えます。

2. DRAM価格「100%上昇」の津波を無効化する、サプライチェーンの覇者

この低価格戦略をさらに際立たせているのが、背後に迫る「メモリー(DRAM)価格の高騰」という事実です。 シティの予測によれば、DRAM価格は2026年第2四半期に50%、下半期にはなんと100%も急騰するとされています。iPhoneのコストの約9%、MacやiPadの約15%をメモリー部品が占める中で、部品価格が2倍になるというのは、通常のメーカーであれば致命傷になりかねません。

しかし、驚くべきはシティが試算した「アップルの粗利益率への影響」です。メモリー価格がこれほど暴騰するにもかかわらず、2026年のアップルの粗利益率(グロスマージン)への打撃はわずか1.4パーセントポイント、翌2027年に至っては0.5パーセントポイント未満に留まると予測されています。

ここから分析できるのは、アップルの桁外れな購買力と価格交渉力の強さです。 これほどの影響を極小化できるということは、アップルがサプライヤーに対して極めて有利な長期契約を結んでいるか、スケールメリットを生かして他部品のコストを圧縮している証拠です。

他社がコスト増に苦しみ、製品価格への転嫁(値上げ)や利益の圧迫に直面する中、アップルだけが無傷に近い状態で599ドルの魅力的な製品を市場に供給し続けることができます。これは、業界全体が苦しい時期にこそ、アップルの絶対的な優位性が発揮されることを意味しています。

3. 株価の下落は「買いの好機」か? ウォール街の視点

現在、アップルの株価は250ドル台半ばで推移していますが、主要金融機関のターゲット価格は現在の水準を大きく上回っています。 シティは2026・27年度の業績予測をわずかに下方修正したものの、目標株価は315ドル、エバコアISIに至っては330ドルの目標株価を掲げ、いずれも「買い(Buy)」「アウトパフォーム」の強気姿勢を崩していません。

現在値(255.81ドル)から見れば、アナリストらはまだ20%から30%近いアップサイド(上昇余地)があると踏んでいます。株価の短期的な下落は、市場が「DRAM高騰」という表面的なニュースに過剰反応しているだけであり、中長期的なファンダメンタルズ(基礎的条件)の強さや、599ドルの新製品群がもたらす市場シェア拡大のインパクトが、まだ株価に完全に織り込まれていないと分析できます。

結論:逆風を「追い風」に変える企業体質

客観的なデータから見えてくるアップルの将来像は、「部品高騰に苦しむメーカー」ではなく、「部品高騰を武器にしてライバルを淘汰するプラットフォーマー」です。

原価が高騰する局面で、あえて劇的な低価格モデル(iPhone 17e、MacBook Neo)を投入できるその余裕こそが、アップルの最大の強みです。

現在の株価の調整局面は、強力なサプライチェーンと緻密な価格戦略によって次の成長フェーズへの仕込みを終えたアップルに投資する、絶好のタイミングであると言えそうです。

情報ソース: Barron’s: “Apple Faces a Memory Crunch. Why Analysts Say the Stock Is Still a Buy.” (By Nate Wolf, March 09, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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