アップル(AAPL)は2026年7月30日のマーケット終了後、2026年度第3四半期(6月期)決算を発表しました。
売上高と1株当たり利益(EPS)はともに市場予想を上回り、主力のiPhoneをはじめ、MacやiPadの販売も好調でした。しかし、決算発表後の時間外取引で株価は6%あまり下落しています。
好決算にもかかわらず株価が大きく売られた背景には、サービス部門の予想未達、メモリ価格の高騰、研究開発費の急増、そして市場予想を下回る次四半期の業績見通しがあります。
さらに、ティム・クックCEOの退任とジョン・ターナス氏のCEO就任が発表され、アップルは経営面でも大きな転換点を迎えています。
売上高と利益は市場予想を上回る
第3四半期の売上高は1,094億ドルとなり、前年同期の940億ドルから大幅に増加しました。アナリスト予想の1,090億ドルもわずかに上回っています。
調整後EPSは2.02ドルとなり、前年同期の1.57ドルから増加し、市場予想の1.89ドルを上回りました。ただし、今回の利益には関税の払い戻しによる1株当たり0.11ドルの押し上げ効果が含まれています。
本業の収益力は堅調だったものの、一時的な要因を除いた実力値については、慎重に評価する必要があります。
iPhone、Mac、iPadはそろって好調
製品別では、主力のiPhone売上高が543億ドルとなり、前年同期比22%増加しました。市場予想の537億ドルも上回っており、世界的にスマートフォン市場が成熟する中でも、アップルのブランド力が依然として強いことを示しています。
Macの売上高は104億ドルとなり、市場予想の86億8,000万ドルを大幅に上回りました。iPadも78億8,000万ドルと、予想の71億ドルを超えています。
今回の決算では、ハードウェア製品が総じて強い結果となりました。買い替え需要に加え、AI機能への期待や製品ラインアップの更新が販売を押し上げた可能性があります。
サービス部門は市場予想に届かず
一方、サービス部門の売上高は307億ドルとなり、前年同期比では12%増加したものの、市場予想の314億ドルには届きませんでした。
サービス部門には、App Store、クラウド、音楽、動画配信、決済などが含まれます。ハードウェアよりも利益率が高く、アップルの収益性を支える重要な事業です。
そのため、サービス売上高の予想未達は単なる小さな失速ではありません。アップル製品の利用者が増えても、エコシステム内での支出が期待ほど伸びていない可能性を示しています。
ハードウェアの販売が好調でも、高利益率のサービス事業が減速すれば、会社全体の利益率は低下します。今回の株価下落では、この点が投資家の大きな懸念材料になったと考えられます。
9月期の売上高見通しは市場予想を下回る
アップルは9月期の売上高について、前年同期比9%〜11%の増加を見込んでいます。中央値では約1,130億ドルとなりますが、市場予想の1,149億ドルを下回る水準です。
足元の決算が好調でも、将来の成長見通しが期待に届かなければ、株式市場は厳しい評価を下します。特にアップルの株価には高い成長期待が織り込まれているため、わずかなガイダンスの未達でも売りが膨らみやすくなります。
メモリ価格の高騰が利益率を圧迫
ティム・クックCEOは決算電話会議で、6月期にメモリの購入コストが大幅に上昇したことを明らかにし、その状況を「100年に一度の洪水」と表現しました。
AI機能を端末上で処理するには、従来以上に高性能で大容量のメモリが必要になります。一方、DRAMやNAND型フラッシュメモリの供給は限られた企業に集中しており、需要が急増すれば価格が上昇しやすい構造です。
アップルは世界最大級の部品購入企業ですが、供給不足が深刻になれば、従来のような強い価格交渉力を維持できない可能性があります。
メモリ価格の上昇を製品価格に転嫁すれば販売台数が減少する恐れがあり、転嫁しなければ利益率が悪化します。アップルは難しい選択を迫られています。
研究開発費は32%増の117億ドル
研究開発費は前年同期比32%増の117億ドルへ急増しました。
アップルは生成AIへの対応でマイクロソフトやアルファベット、メタに遅れを取っているとの見方があり、AIモデル、半導体、次世代端末、ソフトウェア基盤への投資を拡大しています。
研究開発費の増加は将来の成長に必要ですが、短期的には利益を圧迫します。サービス部門の成長鈍化と部品価格の上昇が同時に進む中で、開発投資まで増加すれば、これまでアップルの強みだった高い利益率が低下する可能性があります。
クック時代が終わりターナス新体制へ
今回の決算電話会議はティム・クックCEOにとって最後となり、9月1日付でハードウェアエンジニアリング担当シニア副社長のジョン・ターナス氏が新CEOに就任すると発表されました。
クック氏は優れたサプライチェーン管理とサービス事業の拡大によって、アップルを世界有数の高収益企業へ成長させました。クック氏の退任は、一つの経営時代の終わりを意味します。
後任にハードウェア部門の責任者が選ばれたことは、アップルが再び製品開発とハードウェアの革新を成長戦略の中心に据える可能性を示しています。
スマートフォンの成長が成熟する中、アップルにはAIを活用した新しい端末や、iPhoneに続く次世代の主力製品が必要です。ターナス氏には、研究開発費や部品コストの増加を正当化できる新製品を生み出すことが求められます。
アップルの将来性を左右する3つの課題
今後のアップルを評価する上では、3つの課題が重要になります。
第1は、サービス部門の成長を再加速できるかです。第2は、メモリを中心とする部品コストの上昇を吸収できるかです。第3は、巨額の研究開発投資から新たな成長製品を生み出せるかです。
iPhoneの売上が前年同期比22%増となったことからも、アップルのブランド力と顧客基盤は依然として強固です。
一方で、「部品コストの上昇」「研究開発費の増加」「サービス成長の鈍化」が同時に進めば、従来の高収益モデルは曲がり角を迎えます。
ターナス新CEOに求められるのは、単に既存製品を改良することではありません。AIとハードウェアを融合した新しい製品カテゴリーを確立し、それをサービス収益の拡大につなげることです。
今回の決算は、アップルの現在の強さを示すと同時に、クック時代の成功モデルだけでは次の成長を維持できない可能性を浮き彫りにしました。アップルは今、盤石な高収益企業から、次世代の成長を目指して巨額投資を進める企業へと変わろうとしています。
情報ソース: Barron’s: “Apple Stock Falls Despite Earnings Beat” (By Angela Palumbo, July 30, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら アップル AAPL
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