エヌビディア(NVDA)の最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアン氏が、米国政府による新たなAIチップ輸出制限の発表直後である4月17日に中国・北京を訪問しました。中国中央テレビ(CCTV)系のSNSアカウントによると、フアン氏は中国国内の業界団体からの招待に応じての訪中で、普段の黒いレザージャケットではなくスーツとネクタイ姿で登場しました。
この訪問のタイミングは極めて異例であり、約1週間前にはアメリカ大統領との夕食会に出席していたフアン氏が、AIチップ規制により55億ドルの減損を警告したばかりでした。今回の規制は、米中間のテクノロジーを巡る競争が一層激化していることを示しており、エヌビディアが中国市場向けに旧規制に対応して開発したH20チップの販売を妨げるものです。
エヌビディア、中国市場への関与を継続の意向
CCTVの報道によると、フアン氏は訪中中に業界団体の責任者と会談し、エヌビディアは米国の輸出規制に準拠しつつも、中国市場に対応した製品を引き続き最適化していく方針を示しました。中国は依然としてエヌビディアにとって非常に重要な市場であり、その存在感を保とうとする意欲が見受けられます。
フアン氏、中国副首相やディープシーク関係者と会談
フアン氏は訪中当日、国営の新華社通信によると、中国の副首相・何立峰氏とも会談しました。何氏は、エヌビディアを含む米国企業のさらなる中国市場への進出を歓迎すると述べました。フアン氏もまた、中国経済の見通しに前向きな姿勢を示し、米中間の経済・貿易協力を推進する意志を表明しました。
また、英フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、フアン氏は中国のAIスタートアップ、ディープシーク(DeepSeek)の創業者である梁文峰氏とも会談しましたが、エヌビディアの広報担当者はコメントを控えています。
AIチップ規制の背景と競争環境
今回のエヌビディアに対する規制強化は、アメリカの商務長官ハワード・ルトニック氏の主導によるものと報じられており、中国のAI開発が軍事分野に転用される可能性を警戒した措置です。特にディープシークのような新興企業の台頭を受け、厳しい対応をとる方針を明確にしています。
中国の半導体分野では、ファーウェイ(Huawei Technologies)が開発するAIアクセラレーターが、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の製品に対抗する存在として台頭しています。ただし、性能面では依然として遅れをとっている状況です。
まとめ:エヌビディアの中国戦略と米中関係の行方
エヌビディアにとって中国市場は依然として魅力的であり、規制の中でも関係を維持しようとする姿勢が明確になりました。今後の米中間のテクノロジーを巡る攻防の中で、企業がどのような戦略をとるかが注目されます。
この動向は、米国株式市場においても大きな影響を持ちうるため、今後の展開から目が離せません。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA