2025年1月は、ウォール街にとって多くの変動があった月となりました。予想を大幅に上回る雇用統計や、米連邦準備制度理事会(FRB)による金利据え置きの決定、そしてインフレが持続していることを示すデータなどを投資家が受け止めながら、市場は通常のニュースの流れを消化しました。
加えて、新大統領の就任や、TikTokの禁止と復活、中国の新興企業ディープシークによる市場の揺れ、さらにはハイテク企業数社による決算発表など、様々な要因が複合的に影響を及ぼしました。ナスダック100種株価指数は今年に入って2.2%上昇しましたが、一部のハイテク株には大きな打撃が見受けられました。
エレクトロニック・アーツ(EA)の1月の動向
ビデオゲームメーカーのエレクトロニック・アーツ(EA)は、1月に16%下落し、ナスダック100種株価指数の中で2番目に悪いパフォーマンスとなりました。これは同社にとって2018年10月以来の最悪の月となりました。
1月23日、エレクトロニック・アーツは、サッカーゲーム「EAスポーツFC」を含むグローバル・フットボール部門の業績低迷を理由に、売上の減少を見込むと発表しました。これを受け、同社の株価は24%下落しました。さらに、新作RPG「Dragon Age: The Veilguard」の売上が期待を下回ったことも株価下落の要因となりました。
一方で、ウォール街の一部アナリストは依然として強気の見方を示しています。ウェドブッシュのマイケル・パクター氏は、エレクトロニック・アーツを「アウトパフォーム」と評価し、目標株価を173ドルとしました。同氏は1月22日付のメモで、「あと4四半期ほどは投資資金が停滞するかもしれないが、2026年度と2027年度のリリーススケジュールが明らかになれば、株価は反発すると確信している」と述べています。
また、モフェットナサンソンのクレイ・グリフィン氏は、1月26日にエレクトロニック・アーツを「ニュートラル」から「買い」に格上げし、目標株価を139ドルから145ドルに引き上げました。同氏は、株価の下落は「行き過ぎ」であり、「今は買い増しの好機」と指摘しています。この楽観的な見方を受け、同社の株価は1月26日に3.6%上昇し、122.91ドルとなりました。
半導体銘柄の動向:オン・セミコンダクターとエヌビディア
ハイテク株、特に半導体銘柄は1月に大きな影響を受けました。オン・セミコンダクター(ON)は、1月に17%下落し、ナスダック100種株価指数で最も悪いパフォーマンスを記録しました。
また、AI関連銘柄として注目されているエヌビディア(NVDA)も11%下落し、ワースト3位となりました。これは、2023年9月以来の月間最大の下げ幅となりました。
エヌビディアの株価が大幅に下落した要因の一つは、中国のディープシークがオープンAIのChatGPTに匹敵するAIモデルを開発したと報じられたことでした。このニュースが広がると、投資家の間で「大手ハイテク企業がAIハードウェアに多額の支出を続ける必要がなくなるのではないか」との懸念が高まり、1月27日にエヌビディアの株価は17%下落しました。ただし、その後の専門家の分析では、ディープシークのAI開発には非常に高いコストがかかる可能性があるとされ、この懸念はやや和らぎました。
さらに、トランプ政権がエヌビディアのチップの中国向け販売に対する追加制限を検討しているとの報道も、株価に影響を与えました。1月31日にはエヌビディアのジェンスン・フアンCEOがホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と会談しました。これがどのような影響を及ぼすかは、今後の市場の動向を見極める必要があります。
エヌビディアへの市場の評価
このような不透明な状況にもかかわらず、ウォール街のエヌビディアに対する評価は依然として強気です。ファクトセットの調査によると、同社をカバーする67人のアナリストのうち61人が「買い」、6人が「ホールド」と評価しています。
ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏は、「ビッグ・テックはAIを第4次産業革命と見ており、こうした大規模なAIの取り組みを支えるチップを供給できるのはエヌビディアのみである」と述べています。これにより、長期的な成長が期待されています。
まとめ
2025年1月の米国株市場は、経済指標や政策の変化、新技術の台頭によって大きく動きました。エレクトロニック・アーツやエヌビディアなどのハイテク株は打撃を受けたものの、アナリストの中には長期的な成長を見込んでいる意見も多くあります。特に、AI関連銘柄の動向は引き続き注目されるポイントとなります。