人工知能(AI)の性能向上には、高度なネットワーク技術が不可欠であり、これを供給する企業の株価が急上昇しています。
AIシステムは、少数のエヌビディア(NVDA)のプロセッサから数千、さらには数十万のチップを使用する規模にまで成長しています。例えば、イーロン・マスク氏のxAIが発表したコロッサス AIスーパーコンピューターには10万個のプロセッサが搭載されています。この規模は、将来的に100万チップのクラスターに拡大される可能性があります。
エヌビディアを中心に広がるネットワーク技術の重要性
エヌビディアのプロセッサはAIシステムの中核部品として注目されていますが、これらを効率的に動かすためには、ネットワーク技術が不可欠です。エヌビディアのネットワーキング部門の責任者、ギラッド・シャイナー氏は、AIデータセンターの基本的な計算単位はプロセッサではなく、データセンターそのものであると述べています。
そのため、AIデータセンターの構築に費やされる莫大な予算の一部は、ネットワークチップやレーザー、スイッチを供給する企業に向けられます。エヌビディアがこれらのネットワーク技術を供給する一方で、ブロードコム(AVGO)、シスコ・システムズ(CSCO)、アリスタネットワークス(ANET)、マーベル・テクノロジー(MRVL)などの企業もこの分野で活躍しています。
ネットワーク技術市場の成長と関連企業の動向
ブロードコムは、AI分野における成長の可能性を決算発表で詳細に説明した後、株価が12月に40%も上昇しました。同社のCEOであるホック・タン氏は、ネットワークチップが現在AIチップ支出全体の5〜10%を占めていると述べていますが、500,000〜1,000,000プロセッサ規模のシステムでは15〜20%に増加すると予測しています。
アリスタネットワークスやマーベル・テクノロジーも同様に注目を集めており、それぞれの株価が大幅に上昇しています。これらの企業は、AI産業革命において重要な役割を果たす存在となっています。
ハイパースケーラーとAIのスケーリングの進化
AIの進化を支えるのは、いわゆる「ハイパースケーラー」と呼ばれる企業群です。これには、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、マイクロソフト(MSFT)が含まれます。そのほかにも、オラクル(ORCL)、xAI、アリババ・グループ・ホールディング、バイトダンスなどがこの分野で活躍しています。
ゴールドマン・サックスの推計によれば、AI関連支出は2025年にさらに35%から40%増加するとされています。この背景には、プロセッサの性能限界とAIモデルの進化があります。大規模言語モデルは、膨大なデータを学習し、翻訳、カスタマーサポート、薬品設計など多岐にわたるタスクを実現しています。
AIネットワークの最前線:バックエンド・ネットワークの役割
AIデータセンターには、フロントエンド・ネットワークとバックエンド・ネットワークという2つのネットワークがあります。フロントエンド・ネットワークはユーザーとのデータ通信を担い、従来のクラウドコンピューティングと同様の役割を果たします。一方、バックエンド・ネットワークはプロセッサ間の通信を担い、AIシステム全体を1つのコンピューターのように機能させる重要な役割を果たします。
このバックエンド・ネットワークには、高速のスイッチとネットワーク接続が必要です。エヌビディアが採用したインフィニバンド技術は、この分野での標準となっていますが、イーサネット技術が新たな競争相手として浮上しています。
イーサネットと光接続技術の未来
イーサネットは、これまでインフィニバンドに比べて劣るとされてきましたが、ウルトラ・イーサネットとして進化し、多くのハイパースケーラーが採用を検討しています。アリスタネットワークスは、イーサネット技術を利用したスイッチで大きな成功を収めており、AI市場での売上がさらに拡大すると予測されています。
一方、AIデータセンターの拡大に伴い、光ファイバーによる接続技術の需要も急増しています。マーベル・テクノロジーやルメンタム・ホールディングス(LITE)といった企業がこの分野でリードしています。
AIの未来とネットワーク技術の展望
AIシステムがさらなる規模拡大を遂げる中で、ネットワーク技術の重要性は一層高まると考えられます。エヌビディアのCEOであるジェンセン・ファン氏は、次世代のAIクラスタは10万プロセッサ規模が基本になると述べています。この成長の恩恵を受けるのは、ブロードコムやアリスタネットワークスといったネットワーク技術を提供する企業です。
AI技術の進化とともに、ネットワーク関連企業の市場も大きく拡大していくことが期待されています。今後の動向から目が離せません。