AIブームで電力株が急騰中!今後の市場とFERC規制の影響とは?

  • 2024年11月11日
  • 2024年11月11日
  • BS余話

米国の発電所所有者の株価は今年、大幅に上昇し、一部の企業では2倍以上の成長を見せています。特にAIの急速な成長が電力需要の急増を引き起こし、それが株価の上昇を後押ししています。特に人工知能(AI)の成長に伴い、電力需要が急増し、テクノロジー企業は電力供給確保のために積極的に出資しています。しかし、この好調な電力株には潜在的なリスクや規制の影響も伴います。この記事では、株価急騰の要因、FERCの規制による影響、今後の市場見通しについて詳しく解説します。

発電所所有者の株価急騰:背景にあるAIの需要増加

今年、エヌビディア(NVDA)などのAI関連株が劇的な上昇を見せる中、電力株も同様に高い成長を示しました。特にコンステレーション・エナジー(CEG)の株価は2倍に、ビストラ(VST)タレン・エナジー(TLN)の株価は3倍に急騰しています。これらの発電所所有者は、AIの膨大な電力消費を背景に、データセンター向けの電力需要増加の恩恵を受けています。

AIやデータセンターは大量の電力を消費するため、テクノロジー企業は安定的かつ持続的な電力供給を確保するべく、発電所と直接契約を結ぶ傾向が強まっています。例えば、マイクロソフト(MSFT)は、クリーンエネルギーを確保するために特定の風力発電所との長期契約を結んでおり、これによりデータセンターの運営を支えています。特に原子力発電は信頼性が高く、風力や太陽光と異なり天候に左右されないため、安定的な電力供給が可能です。そのため、クリーンエネルギーとしての需要が急増しており、タレンやコンステレーション・エナジーが注目を集めています。

連邦エネルギー規制委員会(FERC)の影響

電力会社とテクノロジー企業の間で直接契約が結ばれるケースが増えていますが、FERC(連邦エネルギー規制委員会)はこれに対する規制を強化しています。例えば、アマゾン(AMZN)がタレン・エナジーと結んだ契約は、FERCによって却下されました。この契約はタレン社が所有するペンシルベニア州の原子力発電所にアマゾンのデータセンターを接続するものでしたが、FERCはこの計画が電力網の信頼性と消費者コストに悪影響を与える可能性があると判断しました。具体的には、電力供給の安定性が損なわれるリスクや、他の消費者に対する電力料金の不公平な増加が懸念されていました。この決定により、タレン、ビストラ、コンステレーション・エナジーの株価は一時的に下落しました。

データセンターと電力需要の関係:見通しと課題

AIやデータセンターによる電力需要は、2030年までに現在の3倍に増加し、米国の電力需要の約10%を占めると予測されています(出典:国際エネルギー機関(IEA)の報告)。この増加に伴い、電力株も引き続き注目されると考えられますが、一方で電力料金の上昇は消費者への負担となる可能性があります。特に電気料金はすでに上昇傾向にあり、2021年から2023年にかけて17%の値上がりを記録しています。今後も電気自動車や工場、データセンターの需要によって、電力料金はさらに上昇する可能性があります。

公益事業者とテクノロジー企業の間の料金調整

PJMインターコネクションは米国最大の送電網運営会社であり、電力会社に対する過剰支払いの問題が消費者団体から指摘されています。過去の電力オークションでは、現在の価格の9倍もの予測額が算出され、これは市場の不確実性や電力需要の急激な変動を見越してのものです。この高い予測額が最終的に消費者価格に影響を及ぼす懸念があります。PJMは電力供給量の増加により料金の値上げを正当化していますが、過剰な支払額は消費者コストに直接的な影響を及ぼすため注意が必要です。

規制と電力市場の将来展望

今後、規制当局は電力インフラのコスト負担について、テクノロジー企業と消費者の間でどのようにバランスを取るかが重要な課題となります。電力の需要増加に伴い、公益事業者や企業が負担するコストは上昇する可能性が高く、電力市場はより複雑化する見込みです。

コンステレーション、ビストラ、タレンといった発電所所有者は、引き続き高い利益を享受する可能性があるものの、株価はすでに今後数年間の売上成長を織り込んでいます。特に、コンステレーションの株価は2028年の予想収益の19倍という評価を受けています。

政治的影響と新たな利害関係者

電力市場は政治的な影響も受けやすく、FERCの裁定は共和党と民主党の間での意見の相違を反映しています。共和党は自由市場を重視し、テクノロジー企業の直接契約を支持する傾向がある一方、民主党は電力網の信頼性と消費者保護を重視し、規制強化を求めています。電力コストやエネルギー供給に対する政策が企業や消費者に与える影響が今後注目されそうです。特にテキサス州などでは、データセンターの急増が一般消費者に与える影響に対する懸念が高まっており、エネルギーコストに関する新たな政治的同盟が形成される可能性があります。

まとめ:電力株投資のチャンスとリスク

米国の電力市場は、データセンターやAIによる電力需要の急増を受けて発展を続けていますが、規制の影響や価格上昇により、今後はリスクも伴う可能性があります。コンステレーション、ビストラ、タレンといった企業は発電所所有者としての利益を享受し続けることが期待されますが、FERCによる規制の強化や公益事業者との交渉次第で成長が制限されるリスクも存在します。具体的には、FERCがデータセンターへの電力供給契約に対して公平性を確保するための規制を強化し、公益事業者との間では電力料金の負担を誰がどの程度持つかについての調整が焦点となっています。

投資家にとって、電力株は依然として成長分野ですが、長期的なリスクと規制の影響を見据えた慎重な投資判断が求められます。

*過去記事「FERCがアマゾンの原子力計画を却下!テクノロジー企業とクリーンエネルギーの未来

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