アマゾン 高い収益性を持つ広告事業が3本目の柱に

アマゾン・ドット・コム(AMZN)の360億ドルの広告ビジネスは、まだもっと大きくなる可能性があります。広告業界全体が苦戦する中、マーケティング担当者は、小売メディアネットワークが提供する効率的な広告出稿の機会に注目しています。

アナリストは、オンライン小売業者を通して出される広告費は来年25.8%から28.4%成長し、2026年までに米国内だけで1000億ドルに達する可能性があると予想しています。そして、この市場を支配しているのがアマゾンです。

アマゾンは時価総額900億ドル弱の大企業ですが、最も急成長しているデジタル広告会社の一つでもあります。アマゾンの広告売上は、前四半期に前年同期比25%の増加を記録しました。アマゾンよりも売上高が多い二つの企業、アルファベット(GOOGL)とメタ・プラットフォームズ(META)の売上は、同じ四半期において、アルファベットが2.5%の増加、メタに至っては3.7%の減少とふるわず、業界第3位に位置するアマゾンの広告売上の増加は際立っています。

アマゾンの約15分の1の規模で広告事業を展開しているウォルマート(WMT)も、前四半期において広告事業で40%の成長を実現しました。しかし、来年も同様に成長し、アマゾンを追い続けられるかどうかは不明です。広告ビジネスにおいてアマゾンより速く成長しているのは、ごく少数の非常に小さな小売業者だけです。

それは、複数の小売業者にわたる小売向け広告費を管理するには、測定や広告掲載ツールのためのアドテクノロジーを持つ必要があるからです。家庭用品からハイテク機器まで、あらゆるものを提供する最大のオンライン小売業者であるアマゾンは、特定の市場セグメントに焦点を当てたに過ぎない多くの小売業者に対して大きな優位性を持っています。

また、サードパーティの強力な販売ネットワークをアマゾンが有することも後押ししています。これらの業者の多くは、主にアマゾンを通して販売したり、アマゾンで直接ブランドを確立しています。そのため、こうした業者がアマゾンにおける広告に費用をかけるのは自然なことです。

それだけではありません。アマゾンは、Prime VideoとTwitchというサービスの提供によって、ビデオ広告ができるという強みも持っています。今年初めにPrime Videoにアメリカン・フットボールの強力なコンテンツ、Thursday Night Footballが追加されたことで、アマゾンのビデオ広告は非常に価値の高いものになったと評価されています。

これらが評価された結果、米調査会社のインサイダー・インテリジェンスによると、アマゾンは米国における小売向け広告費の76.9%を獲得するまでに至っています。

小売向けメディアネットワーク広告費の今後の見通しは極めて良好であり、市場におけるアマゾンの地位は揺らぎそうにありません。フォレスター・リサーチのアナリストは、米国市場が2026年までに850億ドルに成長すると予想しており、マッキンゼーのアナリストはさらに楽観的で、1000億ドルとしています。

2026年にアマゾンのシェアが仮に70%に縮小したとしても、年間売上は600億ドル〜700億ドルになると見られます。また、その時点でも米国がアマゾンの広告収入全体の4分の3程度を占めているとすれば、全世界向けの広告事業全体では800億ドル〜900億ドルになる可能性があることになります。これは、アマゾンの現在の広告ビジネスの約2倍の規模であり、メタの現在の広告ビジネスのレベルに近づくことを意味します。

絵に描いた通りにはならないかもしれませんが、小売向けメディアネットワーク広告費の伸びを考えると、アマゾンの広告ビジネスにまだまだ伸びしろがあるのは確かでです。Eコマース、クラウドコンピューティングと既に2つの事業分野でリーダーとしての立場を確立しているアマゾンは、営業利益率30%という高い収益性を誇る広告ビジネスを3本目の柱として確立しつつあります。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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