アマゾン(AMZN)は7月30日の取引時間終了後、2026年第2四半期決算を発表しました。売上高や利益、主力クラウド事業のAWSが市場予想を大きく上回り、株価は時間外取引で一時10%上昇しました。
一方で、アマゾンはAI関連の設備投資をさらに拡大し、フリーキャッシュフローは2四半期連続でマイナスとなっています。それでも市場が今回の決算を高く評価した背景には、AIクラウド需要の強さと、将来のインフラ覇権を見据えた明確な成長戦略があります。
アマゾン第2四半期決算の主な内容
第2四半期の売上高は2,010億ドルとなり、市場予想の1,970億ドルを上回りました。前年同期比では20%の増収です。
1株当たり利益(EPS)は5.75ドルとなり、市場予想の1.82ドルを大幅に上回りました。ただし、利益にはアンソロピックへの出資に伴う株式評価益が大きく含まれています。
営業外収益は530億ドルに達しましたが、その多くは非公開AI企業であるアンソロピックの株式価値上昇による未実現利益です。実際に現金が入ったわけではないため、アマゾンの基礎的な収益力を判断する際には分けて考える必要があります。
AWS売上高は37%増、利益率も39%へ上昇
今回の決算で最も注目されたのが、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の成長です。
AWSの売上高成長率は前年同期比37%となり、市場予想の31%を大きく上回りました。営業利益率も39%に達し、高い収益性を維持しています。
AWSはアマゾン全体の売上高に占める割合では21%ですが、営業利益では61%を占めています。小売事業を中心に成長してきたアマゾンが、現在では高収益なクラウド事業によって利益を生み出す企業へ変化していることが分かります。
AIモデルの開発や運用に必要な計算能力への需要は引き続き強く、AWSはAIサーバーのレンタル価格を2026年に入ってからすでに2回引き上げています。それでも需要が落ちていないことは、クラウドの供給能力が顧客需要に追いついていない可能性を示しています。
設備投資計画を2,200億ドルへ引き上げ
アンディ・ジャシーCEOは、2026年通期の設備投資額を従来計画の2,000億ドルから2,200億ドルへ引き上げる方針を示しました。
第2四半期だけでも設備投資額は540億ドルに達し、営業キャッシュフローを88億ドル上回りました。この結果、フリーキャッシュフローは2四半期連続でマイナスとなっています。
通常、キャッシュフローを超える巨額投資は株価の下落要因になりやすい材料です。しかし、今回の市場は設備投資の増加を大きな懸念とは受け止めませんでした。
その理由は、アマゾンが不確実な将来需要を見込んで投資しているのではなく、すでに存在する旺盛なAIクラウド需要に対応するため、データセンターやサーバーへの投資を急いでいると判断されたためです。
負債を活用してAIインフラを先行確保
アマゾンは巨額の設備投資を、営業キャッシュフローだけでなく負債の発行によっても支えています。
2026年上半期には630億ドルの長期負債を追加し、7月にも250億ドルの負債を発行しました。また、6月に設定した175億ドルの融資枠は、現時点で利用していません。
負債は増加しているものの、支払利息は売上高の約0.7%にとどまっています。現状では資金調達コストを一定範囲に抑えながら、AIインフラへの先行投資を進めている形です。
アマゾンの戦略は、短期的なフリーキャッシュフローの改善よりも、データセンター、半導体、ネットワーク、AIサービスを含むクラウド基盤の拡大を優先するものです。経営陣は、AI市場で主導権を握るためには、需要が急増している現在の段階で供給能力を確保する必要があると判断していると考えられます。
小売企業からクラウド・広告企業へ転換
アマゾンの事業構造も大きく変化しています。
AWS以外の事業の営業利益率は6.8%にとどまる一方、AWSの営業利益率は39%です。利益率の差は大きく、アマゾンの企業価値を支える中心が、小売からクラウドやデジタルサービスへ移っていることが分かります。
広告サービス事業の売上高は198億ドル、サブスクリプション関連売上高は137億ドルとなり、サブスクリプション売上高は前年同期比13%増加しました。
また、2026年のプライムデーはワールドカップとの競合を避けるため、例年の7月から6月へ前倒しされました。これにより第2四半期の小売売上高は押し上げられましたが、売上高の一部が前倒しされた影響から、第3四半期の会社見通しは市場予想を下回っています。
ただし、投資家の関心は短期的な小売売上高よりも、AWSや広告、サブスクリプション事業の成長へ移りつつあります。
AIインフラの供給力が競争力を左右する
AI市場では、優れたAIモデルを持つことだけでなく、大量の計算資源を安定的に提供できるかが重要になっています。
アマゾンはマイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)のグーグルクラウドと激しい競争を続けています。その中でAWSが37%の成長を記録し、営業利益率を39%まで高めたことは、既存顧客基盤とインフラ運用力の強さを示す結果です。
2,200億ドルという設備投資計画は、短期的にはキャッシュフローや負債の増加につながります。しかし、投資したデータセンターやAIサーバーが稼働し、高い利用率を維持できれば、将来的にはクラウド売上高と営業キャッシュフローの拡大につながります。
今回の決算は、アマゾンが単なるオンライン小売企業ではなく、AI時代の計算資源とデジタルサービスを提供するインフラ企業へ変化していることを示しました。巨額投資には財務面のリスクもありますが、AWSの成長率と利益率を見る限り、アマゾンはAIインフラ市場で主導権を握るための投資を本格化させています。
情報ソース: Barron’s: “Why Is Amazon Stock Surging? A $220 Billion AI Plan Didn’t Spook Wall Street.” (By Adam Levine, July 30, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN
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