億り人が狙えるとってもリスキーなヘルスケア株

新種のX線装置のメーカーであるナノックス・イメージング(NNOX)は、投資家にものすごいリターンをもたらすかもしれませんが、その一方で破滅的な損害を与えるかもしれない、ハイリスク・ハイリターンの銘柄です。

ナノックス・イメージングはイスラエルの画像システムメーカー。医療用画像システムの開発を行う。独自のデジタルX線源を搭載した「Nanox.ARC」は、コストおよびサイズの大幅な削減を可能とし、連携するソフトウェア「Nanox.CLOUD」に画像データを転送することで、タイムリーな画像診断や課金サービスを提供する。本社所在地はネヴェ・イラン。

出所:Yahoo! JAPAN ファイナンス

2020年9月にナスダックに上場し、現在の時価総額は12億ドルですが、ナノックスは利益が出ていないだけでなく、売上さえもまだあげられていません。

というのは規制の問題があるからです。米国におけるヘルスケア分野は連邦政府の規制が厳しくなっています。ナノックスがX線装置を病院に販売するには、まず米国食品医薬品局(FDA)や海外の医療機関の承認を得なければなりません。この4月、ナノエックスはX線装置のFDA認可を取得し、大きな一歩を踏み出しました。

しかし、これは、同社にとって最初のステップに過ぎません。今回の認可は、同社のシングルソースX線システムが機能することに関するもので、現在市販されているMRI(磁気共鳴画像装置)やCAT(コンピュータ断層撮影装置)に対抗するために同社が開発したマルチソースX線装置についてもFDAの認可を得なければなりません。さらに、X線画像をデジタル保存するクラウドベースのソフトウェアシステムについても同様に認可の取得が必要です。

今後数ヶ月のうちに認可を得ることを目標としているそうですが、目論見通り進むのか注視して行く必要があります。

承認を受けるためには忍耐が必要ですが、ひとたび承認を受けたとなると、それが強みに転じます。FDAのプロセスは、多くの競合他社を寄せ付けず、しばしばバイオテック企業に何年もの間、独占または独占に近い状態を与えるからです。

ナノックスが期待通りにFDAの許可を得た場合、この小さな新興企業は、X線市場で、ゼネラル・エレクトリック(GE)、フィリップス(PHG)、シーメンス(SIEGY)などの歴史のある大手企業と競争しなければなりません。

しかし、その競争において、ナノックスは規模は小さいものの、大きなアドバンテージを持っています。

それは、ナノックスが多くの投資家を熱狂させた驚くべき科学的進歩を遂げたからです。具体的には、X線をパワーアップさせる新たな方法を発見したのです。

X線の源となる技術は、120年以上前にウィルヘルム・レントゲンがX線を発見して以来、変わっていません。このプロセスでは、X線に必要な電子ストリームを生成するために、金属フィラメントを摂氏2,000度まで加熱します。

ナノックスは、ナノテクノロジーを利用して、熱を使わずに電子を生成する革命的な方法を発見しました。同社のX線装置は、指先ほどの大きさのシリコンチップ上にある1億個のナノコーンを動力源としています。

X線を作動させるために大量の熱を発生させる必要がないため、同社の装置はより小さく、より安くなっています。従来の陰極管では15万ドルかかっていたものが、ナノックスの陰極管では100ドル程度になると推定されています。

これは、現在病院がMRIやCATスキャンに支払っている100万ドル以上の費用が、1万ドル程度の費用で済むことを意味します。この低価格により、世界中でX線技術が飛躍的に普及すると、ナノックスの経営陣は考えています。

投資家の期待を一身に集めているのは、同社のビジネスプランです。

ナノックスは、同社のデバイスを原価または原価以下で提供し、デバイスの使用に応じて収益を上げることを計画しています。ナノックスは、デバイスが使用されるたびに一定の割合で報酬を得る。つまり、現在のSaaS(Software-as-a-Service)企業が享受しているように、同社は経常的な収入源を得ることができる仕組みを考えているのです。

CEOのRan Poliakine氏は、このビジネスプランの概要を以下のように説明しています。

「ナノックスの販売代理店は、1日に最低7回のX線スキャンを約束しなければならず、ナノックスは1回のスキャンにつき14ドル、1台あたり1日約100ドルを受け取ることになる」

ナノックスは、第一弾として2024年までに15,000台の装置を世に送り出したいと考えています。もしナノックスがその野心的な目標を達成すれば、同社はそのデバイスの使用によって毎日150万ドルを受け取ることになります。

装置の製造元にはSKテレコム、富士フイルムホールディングス、フォックスコンという東アジアの大手メーカーの名前が並んでおり、準備は整っているように見えます。

冒頭にも述べましたように、ナノックスはとてもリスクが高い株です。成功はいっさい保証されておらず、投資したお金が全く返ってこない事態も覚悟しておく必要があります。

しかし、もし成功すれば、世界中の医療を劇的に改善し、初期段階での投資家が大金を手にすることができる可能性があることも事実です。その過程で何人かの億万長者が誕生するかもしれません。

株価は2021年1月末に90ドル近い価格をつけた後暴落、5月28日の終値は25ドルと72%もダウンしてIPO時の価格レベルまで戻っています。

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