肥満治療薬市場では、イーライ・リリー(LLY)とノボ・ノルディスク(NVO)が大きな存在感を示しています。しかし、この2強体制に変化をもたらす可能性のある企業として、バイキング・セラピューティクス(VKTX)が注目されています。
バイキングが開発する肥満・2型糖尿病治療薬候補「VK2735」の臨床試験結果が発表され、同社株は2026年9月22日午後1時過ぎ(米国東部時間)の段階で33%上昇し、40ドルで取引されています。
市場が大きく反応した背景には、VK2735が現在の肥満治療薬市場で重要なGLP-1とGIPを標的とするデュアルアゴニストであり、臨床試験で大きな体重減少を示したことがあります。
関連記事:減量薬戦争に新星現る?バイキング・セラピューティクスが描く逆転劇
21週間で16~19%の体重減少
最新試験では、VK2735を投与された参加者の体重が21週間で16~19%減少しました。プラセボ群の体重減少率は0%でした。
さらに重要なのは、21週時点でも体重減少が頭打ちになる兆候が確認されなかったことです。探索的グループでは投与を継続し、33週間で22%の体重減少に達しました。
肥満治療薬では、一定期間でどれだけ体重を減らせるかだけでなく、その効果がどこまで継続するかも重要になります。
今回の結果だけで最終的な競争力を判断することはできませんが、VK2735が有力な治療薬候補として存在感を高めたことは確かです。
関連記事:バイキング・セラピューティクスが製造契約を締結し株価上昇!減量薬VK2735の市場投入に前進
イーライ・リリーと正面から競合する薬
VK2735はGLP-1とGIPという2つの受容体を標的としています。
これはイーライ・リリーのZepboundやMounjaroに使われているチルゼパチドと同じタイプの作用機序です。
つまりバイキングは、まったく新しい市場を開拓するのではなく、すでに大きな需要が存在する分野でイーライ・リリーと競争しようとしています。
今後、より長期の臨床試験でも高い減量効果が確認されれば、VK2735と既存薬を比較する動きが強まる可能性があります。
ただし、それぞれの臨床試験は対象患者や投与期間などの条件が異なります。現時点の数字だけを単純に比較し、どの薬が最も優れていると判断することはできません。
関連記事:ノボ・ノルディスク株が急落!「最強」の座を奪ったイーライ・リリーとの決定的な差とは
経口剤の開発も成長材料
バイキングは週1回の皮下注射タイプに加え、VK2735の経口剤も開発しています。
この点は同社の将来性を見るうえで重要です。
注射剤と経口剤の両方を提供できれば、患者にとって治療方法の選択肢が広がります。特に長期間の治療を考える場合、投与方法の違いが薬の選択に影響する可能性があります。
ただし、9月22日付けのバロンズの記事では経口剤の具体的な臨床成績は示されていません。そのため、現段階では将来の成長材料の1つとして見るのが適切です。
関連記事:イーライ・リリーが肥満治療薬で先行 経口薬承認がノボ・ノルディスクに与える衝撃
ロシュも参戦し競争は激化
新たな競争相手はバイキングだけではありません。
ロシュ(RHHBY)も2026年9月22日、肥満治療薬候補「エニセパチド」の臨床試験結果を発表しました。
過体重または肥満の2型糖尿病患者を対象とした中期試験では、48週間で最大15.5%の体重減少を示しました。48週時点でも減量が頭打ちになる兆候は確認されていません。
ロシュは2023年にカーモット・セラピューティクスを27億ドルで買収し、この薬を取得しました。
こうした動きを見ると、肥満治療薬市場はイーライ・リリー対ノボ・ノルディスクという2社だけの競争から、複数企業が争う市場へ移行していると考えられます。
ノボ・ノルディスクにも次世代薬
ノボ・ノルディスクも次世代薬「CagriSema」を開発しています。
糖尿病患者を対象とした後期試験では平均12.4%の体重減少を示し、比較対象となったイーライ・リリーのチルゼパチド5mg投与群の9.1%を上回りました。
一方、別の肥満患者を対象とした試験では、CagriSemaはチルゼパチドを上回ることができませんでした。
この結果からも、肥満治療薬の評価は1回の臨床試験だけでは決められないことが分かります。
バイキングについても、今回の好結果だけで将来の勝者と判断するのは早く、今後の試験結果を継続して確認する必要があります。
バイキング最大の魅力とリスク
バイキング最大の魅力は、VK2735が臨床試験で明確な体重減少効果を示したことです。
21週間で16~19%、探索的グループでは33週間で22%という結果は、同社が肥満治療薬市場の有力な競争候補として注目される理由になります。
一方、イーライ・リリーはZepboundとMounjaro、ノボ・ノルディスクはWegovyという既存製品を持っています。
バイキングのVK2735はまだ開発段階です。
そのため、バイキングへの投資では現在の事業規模だけでなく、VK2735の臨床開発が順調に進むかどうかが企業価値を大きく左右します。
33%の株価上昇は期待の大きさを示していますが、株価上昇と新薬の最終的な成功は別の問題です。
今後は、より長期の試験でも減量効果が維持されるか、そして経口剤がどのような結果を示すかが重要になります。
バイキングはまだイーライ・リリーやノボ・ノルディスクと肩を並べたわけではありません。しかし今回の臨床試験結果によって、肥満治療薬市場で無視できない競争相手候補になったと考えられます。
情報ソース: Barron’s: “Viking Therapeutics Stock Surges 32%. It Could Challenge Lilly and Novo’s Obesity Empire.” (By Mackenzie Tatananni, Sept. 22, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。