AI関連株への警戒感が強まる中、エヌビディア(NVDA)の株価は足元で調整局面を迎えています。しかし、市場の慎重姿勢とは対照的に、「現在の株価はエヌビディアの将来性を十分に織り込んでいない」と考えるアナリストもいます。
2026年8月24日付のマーケットウォッチでは、キャンター・フィッツジェラルドのアナリスト、C.J. Muse氏によるエヌビディア株への強気な見方が紹介されています。
今回の記事で注目したいのは、単純に「AI需要が伸びるからエヌビディア株は買い」という議論ではない点です。Muse氏は、エヌビディアがGPUメーカーという枠を超え、AIインフラ全体から利益を得る企業へ変化しつつあることを評価しています。
株価下落の裏で浮上する強気シナリオ
マーケットウォッチの記事によると、Muse氏はエヌビディアの目標株価を350ドルとしています。記事掲載時点の株価から約67%の上昇余地を見込む、かなり強気な予想です。
その前提となっているのが、今後の大幅な利益成長です。
Muse氏は強気ケースとして、暦年2027年の1株利益(EPS)を17ドル、2028年を25ドルと想定しています。この利益予想を基準にすると、株価収益率(PER)は2027年予想で約14倍、2028年予想で約10倍となります。
AI関連企業として高い成長が続くのであれば、このバリュエーションは割安だというのがMuse氏の見方です。
ただし、これらはあくまで強気シナリオに基づく数字です。実際にこれほどの利益成長を実現できるかどうかは、今後のAI投資や競争環境に大きく左右されます。
GPU販売だけではないエヌビディアの収益戦略
今回の記事で最も興味深いのが、エヌビディアの事業モデルそのものが変化しているという指摘です。
エヌビディアはGPUを販売するだけでなく、AI関連企業への出資やAIインフラ企業との連携を拡大しています。
マーケットウォッチが紹介したMuse氏の分析では、コアウィーブ(CRWV)やネビウス・グループ(NBIS)といったネオクラウド企業との収益分配契約などが、エヌビディアの競争力を高める要素として評価されています。
つまり、GPUを販売した時点で取引が終わるのではなく、そのGPUを利用して構築されるAIインフラやサービスの成長にも関与していく戦略です。
AI市場全体が拡大すれば、エヌビディアがその成長から利益を取り込める範囲も広がる可能性があります。
独自AIチップの拡大にどう対抗するのか
エヌビディアにとって大きなリスクの1つが、巨大クラウド企業による独自AIチップの開発です。
AI投資が巨額になるにつれて、大手クラウド企業はコスト削減や性能最適化を目的として、自社設計チップへの投資を強化しています。
この流れが加速すれば、エヌビディアのGPU需要が将来的に圧迫される可能性もあります。
しかしMuse氏は、ネオクラウドや一般企業、さらに政府主導のソブリンAIなどへ顧客基盤を広げることで、巨大クラウド企業への依存を抑えられるとみています。
AI市場そのものが拡大すれば、独自チップとの競争が激しくなったとしても、エヌビディアが成長できる余地は残るという考え方です。
「半導体メーカー」から「AIシステム企業」へ
エヌビディアは現在、GPU単体ではなく、サーバーラック、ネットワーク、ソフトウェアなどを組み合わせたAIシステム全体の提供を強化しています。
AIデータセンターを構築するためには、半導体だけでなく、高速ネットワーク、電力、冷却、サーバー、ソフトウェアなど幅広い技術が必要です。
エヌビディアがこれらを統合した形で提供できれば、顧客にとって同社の製品を利用するメリットはさらに大きくなります。
競合GPUが登場しても、AIインフラ全体をまとめて提供する能力が強ければ、エヌビディアの競争優位性を維持できる可能性があります。
今回のマーケットウォッチの記事は、この「GPU企業からAIプラットフォーム企業への変化」を重要なポイントとして取り上げています。
半導体指数に大きく出遅れるエヌビディア株
一方、株式市場ではエヌビディアに対する慎重な評価が続いています。
記事によると、8月24日のエヌビディア株は2.9%下落し、7営業日連続安となりました。これは2022年9月以来の長い連続下落だったとされています。
さらに2026年の年初来上昇率は約12%にとどまる一方、PHLX半導体指数は約59%上昇しています。
AIブームを象徴する企業でありながら、半導体セクター全体には大きく出遅れている状況です。
Muse氏が強気姿勢を示している背景には、この株価パフォーマンスと将来の利益成長期待との間に大きなギャップがあるという考えがあります。
値上げできる企業であり続けられるか
記事では、エヌビディアがAIサーバーシステムの価格引き上げを計画しているとの報道にも触れています。
一部の顧客では、製品構成によって15%以上の値上げとなる可能性があると報じられています。
通常、大幅な値上げは需要減少につながるリスクがあります。
しかし、それでも顧客がエヌビディア製品を購入し続けるのであれば、同社がAIインフラ市場で強い価格決定力を維持していることを示す材料になります。
今後は出荷数量だけでなく、販売価格や利益率がどのように変化するのかも重要な注目点です。
次の焦点は2027年度第2四半期決算
エヌビディアは8月26日の米国市場終了後に2027年度第2四半期決算を発表する予定です。
短期的には、この決算が株価の方向性を大きく左右する可能性があります。
ただし、今回の記事が投げかけているテーマは、1回の決算だけではありません。
GPU、ネットワーク、AIシステム、ソフトウェア、AI企業への出資、ネオクラウドとの連携などを通じて、エヌビディアがAI経済圏のどこまで収益機会を広げられるのかという長期的なテーマです。
現在の株価低迷を「エヌビディアの成長鈍化」とみるのか、それとも「事業構造の変化を市場が十分に評価していない局面」とみるのかによって、投資判断は大きく変わります。
まとめ
今回のマーケットウォッチの記事で特に注目したいのは、エヌビディアを単なるGPUメーカーとして評価していない点です。
AI企業への投資、ネオクラウドとの連携、AIシステムの統合販売などが拡大すれば、エヌビディアはAI半導体市場のシェアだけでは測れない企業へ進化していく可能性があります。
一方で、350ドルという目標株価や将来のEPS予想は強気な前提に基づいています。独自AIチップとの競争、AI設備投資の持続性、顧客企業による投資回収の遅れなど、リスク要因も無視できません。
それでも今回の記事は、「エヌビディア株が割安かどうか」という視点だけでなく、「今後エヌビディアをどのような企業として評価すべきなのか」を考えるうえで興味深い内容といえます。
情報ソース:MarketWatch: “It’s time to bet big on Nvidia’s stock, says this analyst who thinks the market has it all wrong” (By Britney Nguyen, Updated Aug. 24, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
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