AIブームの意外な勝者!電力不足でビットコインマイニング株が「AIインフラ株」に変わる

  • 2026年8月25日
  • 2026年8月25日
  • BS余話

生成AIの急速な普及によって、世界ではAI向けデータセンターの建設競争が加速しています。エヌビディアをはじめとする高性能GPUの確保が注目されてきましたが、ここにきてAIインフラ拡大を左右する新たな制約が浮上しています。

それが「電力」です。

AIデータセンターは従来型データセンターを大きく上回る電力を必要とするため、電力網への接続能力そのものが希少な資産になり始めています。そして、この変化によって思わぬ恩恵を受ける可能性があるのが、サイファー・マイニング(CIFR)、ハット8(HUT)、ギャラクシー・デジタル(GLXY)、マラ・ホールディングス(MARA)、ライオット・プラットフォームズ(RIOT)などのビットコインマイニング企業です。

これらの企業は、これまで暗号資産価格に左右される銘柄として見られてきました。しかしAIブームと電力不足が重なることで、「電力アクセスを持つAIインフラ企業」という新たな評価軸が生まれつつあります。

AIデータセンターを阻む「電力網」という新たな壁

AI関連投資では、これまでGPUや半導体の供給不足が最大の課題と考えられてきました。しかし、GPUを購入できても、それを動かすための十分な電力が確保できなければデータセンターは稼働できません。

現在、ニューヨーク州やテキサス州などでは、急増するデータセンター需要に対して電力インフラの整備が追いつかず、新規施設の建設や電力網への接続をめぐる審査が厳しくなっています。

これはAIインフラ投資の競争軸が変化していることを意味します。

今後は高性能なGPUを何台確保できるかだけでなく、「どれだけ大量の電力を確実に利用できるか」が企業の競争力を左右する可能性があります。

その一方で、新規データセンター建設のペースが鈍化すれば、コンステレーション・エナジー(CEG)やNRGエナジー(NRG)などの電力会社にとっては、大規模データセンターという新規顧客の獲得ペースが想定より遅くなる可能性もあります。

ETFの16%下落が示す市場の警戒感

データセンターをめぐる規制や電力問題への警戒から、関連銘柄には売り圧力が強まっています。

The CoinShares Bitcoin Mining and Digital Power ETFは、過去1カ月で約16%下落しました。

ビットコイン価格だけでなく、AI向けデータセンターへの事業転換を成長戦略として掲げている企業が増えているため、データセンター建設への政治的・行政的な逆風がマイニング関連株全体への懸念につながっていると考えられます。

ただし、ここで重要なのは、すべての企業が同じ条件に置かれているわけではない点です。

新たに土地を取得し、変電設備を整備し、電力網への接続承認を取得しなければならない新規データセンター事業者と、すでに大規模な電力接続を確保している既存事業者では立場が大きく異なります。

ビットコインマイニング企業が持つ「電力アクセス」の価値

ここで注目されるのが、ビットコインマイニング企業が長年蓄積してきたインフラです。

サイファー・マイニング、ハット8、ギャラクシー・デジタル、マラ・ホールディングス、ライオット・プラットフォームズなどは、大量の電力を使用するビットコインマイニング事業を展開するため、すでに電力網へ接続された大規模施設を保有しています。

電力接続が容易だった時代には、こうした設備は単なるマイニング施設として評価されていました。しかし、新規の電力接続が難しくなれば、既存の接続容量そのものが希少な資産になります。

AI企業が必要としているのは、土地だけではありません。大量の電力を安定的に確保し、短期間で稼働できるデータセンター拠点です。

そのため、既存のマイニング施設をAI・高性能コンピューティング向けデータセンターへ転換できれば、ビットコインマイニング企業の資産価値は従来とは異なる角度から評価される可能性があります。

「ビットコイン企業」から「AIインフラ企業」への転換

ビットコインマイニング事業の大きな弱点は、収益がビットコイン価格やマイニング難易度、電力価格などに大きく左右されることです。

これに対して、大手テクノロジー企業やAI企業にデータセンター容量を長期契約で提供できれば、より予測しやすい収益源を構築できる可能性があります。

実際、一部のマイニング企業は、保有する土地、電力容量、データセンター施設をAIや高性能コンピューティング用途へ転換する戦略を進めています。

市場がこれらの企業を単なる「ビットコイン価格に連動する銘柄」と評価するのか、それとも「希少な電力アクセスを持つAIインフラ企業」と評価するのかによって、今後の企業価値は大きく変わります。

AIデータセンター需要がさらに拡大し、電力網への新規接続が難しくなるほど、既存インフラの価値は相対的に高まります。

既存施設でも転換は簡単ではない

一方で、ビットコインマイニング施設をそのままAIデータセンターとして利用できるわけではありません。

AI向けデータセンターでは、高性能GPUを安定稼働させるための高度な冷却設備、高速ネットワーク、冗長化された電力設備、セキュリティなどが必要になります。

テキサス州などでは、マイニング施設からAIデータセンターへの転換プロジェクトに遅れが発生している事例もあります。

つまり、電力接続を持っていることは大きな強みですが、それだけでAIデータセンターへの転換が成功するとは限りません。改修費用、建設期間、顧客獲得能力、資金調達力なども重要な評価ポイントになります。

それでも、土地の確保から電力網への接続承認までをゼロから進める新規プロジェクトと比較すれば、すでに大規模な電力アクセスを持つ企業が有利な立場にあることは確かです。

今後注目すべきは「何MWをAI向けに収益化できるか」

今後、ビットコインマイニング企業を見るうえで重要になるのは、ビットコインの採掘量だけではありません。

保有している電力容量のうち何MWをAI向けに転換できるのか、AI企業との長期契約を獲得できるのか、そしてどの程度の投資で施設をAI対応へ改修できるのかが重要になります。

特にサイファー・マイニングやマラ・ホールディングス、ライオット・プラットフォームズなどが、既存の電力アクセスをAI需要へどれだけ早く転換できるかは注目ポイントです。

The CoinShares Bitcoin Mining and Digital Power ETFが過去1カ月で16%下落しているように、市場は現在、データセンターをめぐる政治的・行政的リスクを警戒しています。

しかし電力不足が長期化するのであれば、「新しいデータセンターを建設できない」という問題は、「すでに電力を持っている企業」の価値を高める要因にもなります。

AIブームの次の投資テーマはGPUだけではありません。発電所、送電網、変電設備、冷却システム、そして既存の電力接続を持つデータセンターへと広がりつつあります。

その流れの中で、ビットコインマイニング企業が暗号資産業界からAIインフラ業界へどこまで事業モデルを変えられるのか。今後のAIインフラ投資を考えるうえで、見逃せないテーマの1つになりそうです。

情報ソース: Barron’s: “Data Center Politics Could Help an Unlikely Industry: Bitcoin Miners” (By Avi Salzman, Aug. 24, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「アンソロピック91億ドル契約でライオットが激変 ビットコインマイナーからAIインフラ企業へ


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