米半導体大手のマイクロン・テクノロジー(MU)は、過去12カ月間で株価が約700%上昇するという驚異的なパフォーマンスを記録しています。
これほど急激に株価が上昇すると、「すでに成長期待を織り込み、ピークに近づいているのではないか」と警戒する投資家も少なくありません。実際、短期間で大幅に上昇した銘柄は、利益確定売りや投資家心理の変化によって激しい値動きに見舞われることがあります。
しかし、メモリ市場の価格動向やアナリストの業績予測を確認すると、マイクロンの利益成長はまだ途中段階にある可能性が見えてきます。
本記事では、DRAMやNANDフラッシュメモリ、広帯域幅メモリ(HBM)の価格見通しをもとに、マイクロンの将来性と株価の上値余地について分析します。
DRAMとNANDの価格急騰が利益を押し上げる
マイクロンの今後の業績を考える上で、最も重要な要素となるのがメモリ価格の上昇です。
キーバンクの予測によると、今年第3四半期のDRAM価格は前四半期比で15%〜20%上昇し、NANDフラッシュメモリは30%〜40%上昇する可能性があります。
さらに第4四半期についても、DRAMとNANDの価格がそれぞれ約15%上昇すると見込まれています。
メモリ製品の価格が1四半期で30%以上上昇するのは、通常の市場環境では極めて異例です。背景には、AIデータセンター向け需要の拡大や、メモリメーカーによる供給調整、限られた生産能力をHBMへ振り向ける動きなどがあると考えられます。
マイクロンにとって重要なのは、製品価格が上昇しても、製造コストが同じ割合で増えるわけではない点です。
販売価格の上昇分の多くが粗利益の拡大につながれば、売上高以上のペースで営業利益や1株利益が伸びる可能性があります。メモリ価格の上昇局面では、業績に強いレバレッジがかかるためです。
今後の決算では、売上高の伸びだけでなく、粗利益率がどの程度改善するかが重要な注目点になります。
HBMの価格倍増が次の成長エンジンに
マイクロンの成長を支えるもう一つの重要な製品が、広帯域幅メモリであるHBMです。
HBMは、エヌビディアをはじめとするAI半導体の性能を引き出すために欠かせない高性能メモリです。生成AIの学習や推論に必要なデータを高速で処理するため、従来型のDRAMよりも高い技術力と製造能力が求められます。
キーバンクは、来年のHBM価格が2倍以上に上昇する可能性があると予測しています。
仮に出荷数量が変わらなくても、製品単価が2倍になれば、売上高は大きく増加します。さらにHBMは一般的なメモリ製品よりも利益率が高いと考えられるため、売上構成に占めるHBMの割合が上昇すれば、マイクロン全体の収益性も改善する可能性があります。
これまでのメモリメーカーは、市況によって販売価格が大きく変動する典型的な景気敏感企業と見られてきました。
しかし、AI向けHBMの需要拡大によって、高付加価値製品を安定的に供給できる企業へと変化すれば、マイクロンに対する市場の評価そのものが引き上げられる可能性があります。
単純にメモリの販売数量を増やすだけでなく、より高価格で高利益率の製品へ移行できるかが、今後の成長を左右します。
株価上昇後も割高とは言い切れない理由
過去12カ月で株価が約700%上昇しているため、現在のマイクロン株を割高と感じる投資家も多いはずです。
しかし、キーバンクはマイクロンの目標株価を1,750ドルに設定しています。この目標株価は、2027年度の予想1株利益に対してPER9倍を適用して算出されたものです。
一般的な成長企業と比較すると、PER9倍は必ずしも高い水準ではありません。むしろ、今後の利益成長を前提とすれば、比較的保守的な評価とも考えられます。
7月13日の終値である937ドルから目標株価の1,750ドルまで上昇した場合、上値余地は約87%となります。それでもPERが9倍にとどまるという予測は、2027年度にかけてマイクロンの利益が大幅に拡大する可能性を示しています。
ウォール街のアナリストによる平均目標株価も約1,579ドルと、現在の株価を大きく上回っています。
もちろん、目標株価は将来の業績予測をもとに算出されたものであり、必ず到達するわけではありません。メモリ価格の反落や需要の減速、競合企業の増産などによって、予想利益が下方修正されるリスクもあります。
それでも、7月13日に記録した4.3%の下落のような短期的な値動きだけで、成長シナリオが崩れたと判断するのは早いと考えられます。
マイクロン株が抱える注意点
マイクロンの将来性は明るい一方で、株価上昇がそのまま続くとは限りません。
最大のリスクは、メモリ価格が市場予測ほど上昇しない可能性です。メモリ業界では、価格上昇を受けて各社が生産能力を拡大すると、供給過剰に転じて価格が急落することがあります。
また、過去1年間の株価上昇率が極めて大きいため、決算内容が良好でも、市場予想をわずかに下回っただけで株価が大きく調整する可能性があります。
HBMについても、SKハイニックスやサムスン電子との競争が続きます。マイクロンが製品性能や供給能力で競争力を維持できるかを確認する必要があります。
株価の上昇余地だけでなく、メモリ価格、設備投資、生産能力、HBMの市場シェアといった複数の指標を継続的に確認することが重要です。
まとめ
マイクロンの過去12カ月における約700%の株価上昇は、非常に大きなものです。しかし、その上昇が過去の業績だけを評価した結果ではなく、今後予想されるメモリ価格の上昇と利益拡大を先取りした動きである可能性があります。
DRAMとNANDの大幅な価格上昇に加え、来年にはHBM価格が2倍以上になるとの予測も示されています。
こうした価格上昇が実現すれば、マイクロンは売上高だけでなく、粗利益率や1株利益を大幅に伸ばす可能性があります。特にAI向けHBMの拡大は、従来の景気敏感なメモリメーカーから、高収益なAIインフラ企業へと評価を変える材料になるかもしれません。
一方で、メモリ市況は変動が激しく、供給過剰や需要減速によって成長予測が崩れるリスクもあります。過去の株価上昇率だけで判断するのではなく、今後のメモリ価格と利益成長が市場予測どおりに進むかを慎重に見極める必要があります。
短期的な株価のボラティリティは高い状態が続くと考えられますが、中長期的には、マイクロンがAI時代のメモリ需要拡大から大きな恩恵を受ける企業であることに変わりはありません。
情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Jumps—Why It Can Rise Another 90%” (By Adam Clark, July 14, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「マイクロン株の反発は本物か AIメモリ需要が示す次の上昇シナリオ」
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