マイクロン株の反発は本物か AIメモリ需要が示す次の上昇シナリオ

  • 2026年7月9日
  • 2026年7月9日
  • BS余話

AI相場の主役はGPUだけではない

AI関連株といえば、これまではエヌビディアのようなGPU企業に注目が集まりがちでした。しかし、AIインフラの拡大が進むほど、もうひとつ重要性を増している分野があります。それがメモリです。

米メモリ大手マイクロン・テクノロジー(MU)は、その代表的な企業です。同社の株価は過去12カ月で約700%上昇しました。これは、単なる半導体市況の回復だけでは説明しにくい大幅な上昇です。市場はマイクロンを、従来型の景気循環的なメモリ企業としてではなく、AIインフラ拡大の恩恵を受ける企業として評価し始めています。

一方で、株価は6月下旬に1,200ドルを超えた後、調整局面に入りました。投資家の間で、AI関連支出が今後も高い水準で続くのかという不安が広がったためです。AI投資への期待が大きかった分、その持続性に疑問が出ると、マイクロンのような関連銘柄は大きく売られやすくなります。

調整後に見え始めた買い戻しの動き

マイクロン株は7月9日のプレマーケットで3.5%上昇し、982.05ドルとなりました。前日の通常取引でも1.1%上昇しており、急落後に買い戻しの動きが出ていることが確認できます。

この動きは、単なる短期的な反発にとどまらない可能性があります。なぜなら、マイクロンの下落は同社固有の悪材料というより、AI投資全体への警戒感を反映したものだからです。つまり、市場はマイクロンの事業価値そのものを否定したのではなく、AIインフラ投資が今後も続くのかを改めて見極めようとしている段階にあります。

マイクロンの韓国同業であるSKハイニックスも、7月8日の韓国市場で5%超上昇しました。これは、メモリ関連株全体に見直し買いが入り始めている可能性を示しています。メモリ株は一度売られたものの、AIインフラ需要の構造的な成長を背景に、再び投資家の関心を集めています。

BofAが買い判断を維持した背景

バロンズの7月9日付けの記事は、BofAグローバル・リサーチのアナリスト、ヴィヴェック・アリヤ氏が、今週のリサーチノートでマイクロン株の買い判断を再表明したことを報じています。目標株価は1,550ドルです。

この強気判断の背景にあるのが、クラウドおよびAIインフラ投資の巨大化です。アリヤ氏は、大手テック企業が2027年に世界のクラウドおよびAIインフラへ約1.5兆ドルを支出すると見積もっています。これは今年から40%〜50%増加する水準です。

さらに重要なのは、メモリ部品がその支出の約35%〜40%を占める見込みとされている点です。AIインフラ投資というと、GPUやデータセンター建設に目が向きますが、実際にはデータを高速に処理し、保存し、転送するメモリの役割も非常に大きくなっています。

AIモデルが大規模化するほど、メモリは補助的な部品ではなく、システム全体の性能を左右する中核部品になります。マイクロンの投資妙味は、まさにこの構造変化にあります。

高帯域幅メモリが評価を変える

BofAの目標株価1,550ドルは、サム・オブ・ザ・パーツ評価に基づいています。従来型の景気循環的なメモリ事業には、2028年の予想簿価に対して約3倍の株価純資産倍率を適用しています。一方、高帯域幅メモリ事業には、2028年の予想利益に対して31倍の株価収益率を適用しています。

この評価の違いは重要です。従来型メモリ事業は、今も市況変動の影響を受けやすいビジネスとして見られています。しかし、高帯域幅メモリはAI成長に直結する高付加価値事業として、より高い倍率で評価されています。

つまり、マイクロンの企業価値は一枚岩ではありません。従来型メモリ企業としての側面と、AIインフラを支える戦略的サプライヤーとしての側面が同時に存在しています。今後、市場が後者をより重視するようになれば、同社の評価軸そのものが変わる可能性があります。

最大のリスクはAI支出の持続性

もちろん、マイクロン株にはリスクもあります。最大の論点は、AI関連支出が本当に長く続くのかという点です。

同社株は過去12カ月で約700%上昇しており、すでに大きな成長期待を織り込んでいます。そのため、クラウドやAIインフラ投資の伸びが市場予想を下回った場合、株価は再び調整する可能性があります。

また、メモリ事業にはもともと市況変動リスクがあります。高帯域幅メモリが成長ドライバーになるとしても、マイクロン全体が完全に安定成長企業へ変わったと見るのは早計です。投資家は、AI需要の成長性とメモリ市況の変動性を分けて考える必要があります。

マイクロンはAIインフラ株へ変わる過程にある

バロンズの記事から見える最大のポイントは、マイクロンの評価軸が変わりつつあることです。

これまで同社は、メモリ価格の上昇・下落に左右される半導体市況株として見られてきました。しかし、AIインフラ投資が巨大化する中で、メモリはAIシステムの性能を左右する重要部品になっています。

BofAが買い判断を維持し、1,550ドルの目標株価を設定した背景には、この構造変化があります。2027年のクラウド・AIインフラ支出が約1.5兆ドルに達し、その35%〜40%をメモリ部品が占めるという見通しは、マイクロンの成長余地を考える上で重要な材料です。

株価はすでに大きく上昇しており、短期的な過熱感やAI投資への不安は残ります。それでも、マイクロンは単なるメモリ市況株から、AIインフラを支える戦略的な半導体企業へと評価が移り変わる重要な局面にあります。

情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Steadies After Memory Selloff, BofA Says It’s Time to Buy” (By Adam Clark, July 09, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら マイクロン・テクノロジー(MU)

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