AI投資の次なる本命か SKハイニックス米国上場が映すHBM首位企業の割安感

  • 2026年7月10日
  • 2026年7月10日
  • BS余話

AIブームを背景に、半導体株への関心は依然として高い状態が続いています。エヌビディアを中心にAI関連銘柄が大きく評価されるなかで、投資家の間では「すでにAI銘柄は高すぎるのではないか」という見方も広がっています。

しかし、AIインフラの拡大を支える重要企業の中には、まだ市場から十分に評価されていない銘柄もあります。その代表例として注目したいのが、韓国のメモリ大手であるSKハイニックスです。

同社はAIサーバーに欠かせない高帯域幅メモリ、いわゆるHBMで圧倒的な存在感を持っています。さらに、ナスダック・グローバル・セレクト・マーケットへのADR上場を計画しており、米国での取引は7月10日に開始される予定です。

これにより、これまで韓国市場中心だった投資家層が米国市場にも広がる可能性があります。本記事では、SKハイニックスの米国上場が意味する投資機会について考えます。

HBM市場で圧倒的なシェアを握るSKハイニックス

SKハイニックスを語るうえで最も重要なのは、HBM市場における圧倒的なシェアです。AI半導体ではGPUが注目されがちですが、高性能なAIサーバーを動かすには、大量のデータを高速で処理できるメモリが不可欠です。その中心にあるのがHBMです。

2026年第1四半期時点で、SKハイニックスはHBM市場の58%を占めているとされています。競合であるマイクロン・テクノロジー(MU)とサムスン電子はそれぞれ21%であり、SKハイニックスが大きく先行している構図です。

通常であれば、こうした高成長市場で過半のシェアを持つ企業には、高いバリュエーションがつきやすくなります。ところが、SKハイニックスの予想PERは5.4倍にとどまっており、マイクロンの6.7倍を下回っています。これはファクトセットのデータに基づくもので、HBM市場のトップ企業が競合よりも低く評価されているという、非常に興味深い状況です。

トップ企業が競合より割安に見える理由

SKハイニックスがHBM市場でトップシェアを持ちながら、マイクロンより低いPERで評価されている点は注目に値します。これは、米国市場に直接上場していなかったことが一因と考えられます。

米国の投資家にとって、韓国市場に上場する個別株へ投資するには一定のハードルがあります。流動性やアクセスの面で制約があるため、どれだけ成長性が高くても、米国上場企業ほど資金が流入しにくい面があります。

今回、SKハイニックスが米国でADRを上場することは、この状況を変える可能性があります。ADRは米ドル建てで発行され、10ADRが普通株式1株に相当します。米国の投資家がドル建てで同社株にアクセスしやすくなる点は、大きな意味を持ちます。

上場規模については、ADRの価格が149ドルで決定された場合、調達額は約265億1,000万ドルになると見込まれています。これは、2014年にアリババが米国上場時に調達した250億ドルを上回り、ADRとして過去最大規模の案件になる可能性があります。

株価は急騰済みでもPERでは割安感が残る

SKハイニックスの韓国市場における株価は、過去12カ月で600%以上上昇しています。この上昇率だけを見ると、すでに大きく買われた銘柄という印象を受けます。

しかし、株価上昇にもかかわらず予想PERが5.4倍にとどまっている点は重要です。通常、AI関連銘柄でここまでの成長期待がある企業は、より高いPERで評価されるケースが多くなります。

一方で、マイクロンの予想PERは6.7倍です。HBM市場でSKハイニックスより低いシェアにとどまる競合が、PERでは同社を上回っていることになります。この差は、SKハイニックスが米国市場で十分に認知されていなかったことによるディスカウントと見ることもできます。

米国ADR上場によって投資家層が広がれば、この評価差が縮小する可能性があります。つまり、今回の上場は単なる取引市場の追加ではなく、バリュエーション見直しのきっかけになり得ます。

AIインフラ投資の拡大がメモリ需要を押し上げる

SKハイニックスの成長を支える最大の追い風は、AIインフラ投資の拡大です。2027年には、大手ハイテク企業によるクラウドおよびAIインフラ投資が世界全体で約1.5兆ドルに達するとの見方があります。そのうち35%〜40%、金額にして約5,250億〜6,000億ドルがメモリ関連に向かうと推定されています。

これまでメモリ業界は、景気循環の影響を受けやすい産業と見られてきました。需要が強い時期には利益が大きく伸びる一方、供給過剰になると価格が急落し、業績も大きく悪化する傾向がありました。

しかし、AIインフラの拡大によって、この構図は変化しつつあります。AIモデルの大型化、データセンター投資の拡大、GPU性能の向上が進むほど、高性能メモリの重要性は高まります。HBMはAIインフラの中核部品になっており、SKハイニックスはその供給を握る企業として存在感を増しています。

エヌビディアとの関係が収益の安定感を高める

SKハイニックスの強みは、市場シェアだけではありません。AI半導体の中心企業であるエヌビディア(NVDA)との強い関係も大きな注目点です。

同社はエヌビディア向けの主要なメモリサプライヤーであり、スーパーコンピューターやロボティクス関連のコンポーネント供給でも複数年契約を結んでいるとされています。エヌビディアの成長が続くほど、SKハイニックスへの需要も高まりやすい構造です。

投資家にとって重要なのは、収益の見通しやすさです。AI市場は変化が速い一方で、エヌビディアとの複数年契約は、SKハイニックスの売上や利益に一定の安定感を与えます。エヌビディアの成長を間接的に享受できる投資先として、同社が注目される理由はここにあります。

機関投資家の動きも注目材料

今回のADR上場では、すでに一部の大口投資家の動きも明らかになっています。元オープンAI研究員のLeopold Aschenbrenner氏が運営するヘッジファンド「Situational Awareness」を含む一部の投資家が、SKハイニックスのADRを最大70億ドル分購入するために登録・合意していると報じられています。

これは、AI分野に精通した投資家がSKハイニックスを重要な投資対象として見ていることを示す材料です。AIの中核銘柄としてエヌビディアが注目される一方で、その成長を支えるHBM供給企業にも資金が向かい始めていると考えられます。

また、ゴールドマン・サックスのアナリストであるGiuni Lee氏らは、SKハイニックスの韓国株の目標株価を350万ウォン、米ドル換算で2,314ドルに設定しています。これは、同社の成長余地に対して強気な見方があることを示しています。

ADR上場は7倍の応募超過、過去最大級の案件に

SKハイニックスの米国ADR上場は、投資家から非常に強い需要を集めています。バロンズによると、同社のADR上場は7倍の応募超過となっており、米国市場での関心の高さが明確に示されています。

同社株は7月9日の韓国市場で5.3%上昇し、218万6,000ウォン、米ドル換算で約1,445ドルで取引を終えました。10ADRが韓国普通株式1株に相当するため、単純計算では1ADRあたり約144.50ドルの水準になります。

SKハイニックスは7月10日にナスダックでADR上場を開始する予定で、ティッカーは「SKHY」となります。引受会社は1,779万株の新株を提供する予定で、価格は7月9日中に決定され、同日中に割り当てが行われる見通しです。

ロイターやブルームバーグなど複数の報道機関によると、ADRの価格は149ドルになるとの見方が広がっています。仮に1ADRあたり149ドルで価格決定された場合、調達額は約265億1,000万ドルとなります。これは、2014年にアリババが米国上場時に調達した250億ドルを上回り、ADRとして過去最大規模の案件になる可能性があります。

今回の上場は、米国投資家にとってマイクロン以外でAIメモリ需要に投資する新たな選択肢を提供するものです。実際、同じメモリ関連銘柄であるマイクロンも7月9日の米国市場で大きく上昇しており、AI向けメモリ株全体への関心が高まっていることがうかがえます。

つまり、SKハイニックスのADR上場は単なる取引市場の追加にとどまりません。投資家需要の強さ、過去最大級の調達規模、そしてAIメモリ投資の選択肢拡大という3つの点で、市場の注目を集める重要なイベントになっています。

米国ADR上場が評価見直しのきっかけになる可能性

今回のナスダックADR上場は、単なる資金調達ではなく、SKハイニックスの評価を大きく変える可能性があります。米国市場で取引しやすくなることで、AI関連銘柄を探す投資家の資金が流入しやすくなるためです。

特に、AI関連株の中でもバリュエーションが高くなりすぎた銘柄を避けたい投資家にとって、SKハイニックスは興味深い選択肢になります。HBMでトップシェアを持ち、エヌビディアとの関係も強く、それでいてPERは競合より低い水準にあります。

もちろん、メモリ業界特有の価格変動リスクや、韓国企業であることに伴う為替・地政学リスクは無視できません。また、株価が過去12カ月で600%以上上昇している点を踏まえると、短期的な過熱感にも注意が必要です。

それでも、AIインフラ投資の拡大が続く限り、同社の重要性は高まり続ける可能性があります。

SKハイニックスはAI相場の隠れた本命になれるか

SKハイニックスは、AIブームの中で単に注目されている半導体株ではありません。HBM市場で過半のシェアを持ち、エヌビディアの成長を支える立場にありながら、バリュエーション面ではまだ割安感が残っています。

成長性、割安感、そして米国上場というカタリストが重なる点は、同社の大きな魅力です。AI関連銘柄に投資したいものの、すでに上昇した大型AI株には手を出しにくいと考える投資家にとって、SKハイニックスのADR上場は注目すべきイベントになります。

今後、米国市場での認知度が高まり、投資家層が広がれば、これまで韓国市場中心だった評価が見直される可能性があります。AIインフラ時代において、メモリはGPUと並ぶ重要な投資テーマになりつつあります。その中心企業として、SKハイニックスは今後も注目度を高めていくと考えられます。

情報ソース: Barron’s: “Cheaper Than Micron, Closer to Nvidia: The Massive New AI Stock Debut” (By Adam Clark, July 09, 2026)
情報ソース: Barron’s: “SK Hynix Listing Is Oversubscribed. Where It Might Open for Trading on Friday.” (By Adam Clark, Updated July 09, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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