エヌビディアに割安サイン 予想PER18倍台が示すAI王者の買い場

エヌビディア株は本当に過小評価されているのか

米大手金融機関のバンク・オブ・アメリカが、エヌビディア(NVDA)に対する市場評価は厳しすぎるとの見方を示しました。同行のアナリストであるヴィヴェック・アリヤ氏は、現在のエヌビディア株には魅力的な投資機会があると指摘しています。

その根拠の一つとして挙げられているのが、年初からの株価パフォーマンスです。エヌビディア株は今年初めから直近の7月6日までに約3%の上昇にとどまっている一方、PHLX半導体株指数(SOX)は80%以上も上昇しています。AI半導体の中心企業であるエヌビディアが、半導体セクター全体に大きく出遅れているという構図です。

もちろん、株価が出遅れているだけで割安と判断することはできません。市場がエヌビディアに対して慎重になっている背景には、部品コストの上昇やカスタムチップとの競争激化といった懸念があります。しかし、バンク・オブ・アメリカは、これらの不安は過度に織り込まれている可能性が高いと見ています。本記事では、開示されたデータをもとに、エヌビディアの過小評価論がどの程度妥当なのかを考察します。

HBMなどの部品コスト上昇は本当に大きなリスクか

市場が懸念している大きな論点の一つが、高帯域幅メモリ(HBM)などの部品コスト上昇です。AI向けGPUの性能向上には高性能メモリが欠かせず、需要拡大に伴って調達コストが上昇すれば、エヌビディアの粗利益率を圧迫する可能性があります。

しかし、バンク・オブ・アメリカのアリヤ氏は、この懸念はやや誇張されていると分析しています。理由は、エヌビディアが圧倒的な価格決定力を持っているためです。同社はAI半導体市場において極めて強い地位を築いており、顧客側もエヌビディア製品を使わざるを得ない状況が続いています。

さらに注目すべきは、エヌビディアが1,190億ドルにのぼる大規模なサプライチェーンへのコミットメントを行っている点です。この規模の調達力は、単なるコスト負担ではなく、供給確保と価格交渉力の源泉にもなります。AIインフラ需要が急拡大する中で、安定供給できる企業の価値は非常に高くなっています。

次世代プラットフォームである「ルービン」についても、現行の「ブラックウェル」より高い価格設定が可能になると見られています。仮に部品コストが上昇したとしても、製品価格への転嫁が可能であれば、粗利益率への影響は限定的になります。エヌビディアが粗利益率を70%台半ばで維持できるという見通しには、同社の市場支配力を考えると一定の説得力があります。

カスタムチップの台頭はエヌビディアの脅威になるのか

もう一つの懸念は、巨大テック企業による独自チップ開発です。特にグーグル(GOOGL)は、ブロードコム(AVGO)と共同でAI向けカスタムチップであるTPUを開発しており、こうした動きがエヌビディアの市場シェアを奪うのではないかという見方があります。

確かに、AIインフラ投資が拡大する中で、クラウド大手が自社専用チップを増やす流れは無視できません。自社ワークロードに最適化されたチップを使えば、コスト効率を高められる可能性があるためです。

ただし、バンク・オブ・アメリカは、この懸念についても過去の実績をもとに冷静な見方を示しています。グーグルのTPUはすでに10年以上前から存在していますが、その間にエヌビディアのGPU収益は700倍に拡大しました。つまり、カスタムチップが存在していても、エヌビディアの成長は止まらなかったということです。

この事実は非常に重要です。AIインフラ市場では、単にチップ単体の性能だけでなく、ソフトウェア、開発環境、エコシステム、供給力、顧客基盤が競争力を左右します。エヌビディアはGPUだけでなく、CUDAを中心とする開発基盤やAIサーバー全体の設計力を持っており、単純なカスタムチップとの比較では測れない強みがあります。

そのため、同社が長期的にAIインフラ向け支出の65%から70%のシェアを維持できるというバンク・オブ・アメリカの予測は、決して楽観的すぎるものではないと考えられます。

予想PERは過去平均のほぼ半分という割安感

エヌビディアの過小評価を考えるうえで、最もわかりやすい指標がバリュエーションです。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、エヌビディアの今後12ヶ月ベースの予想PERは18.69倍となっています。

これは、過去10年間の平均である36.90倍のほぼ半分にあたります。AI半導体市場の中心企業であり、今後も高い成長が見込まれる企業としては、かなり低い水準に見えます。しかも、この水準は11年ぶりの低水準に近いとされています。

もちろん、PERが低いからといって必ずしも割安とは限りません。市場が将来の成長鈍化を見込んでいる場合、PERは低下します。しかし、エヌビディアの場合、AIインフラ需要そのものが急激に縮小しているわけではありません。むしろ、クラウド企業、企業向けAI、ソブリンAI、ロボティクス、自動運転など、需要の裾野は広がり続けています。

そのため、現在の低いバリュエーションは、成長鈍化を過度に織り込んでいる可能性があります。バンク・オブ・アメリカが「魅力的なディスカウント」と表現するのは、単なる強気な見方ではなく、過去平均や成長見通しとの比較に基づいた評価だと言えます。

8月決算は市場の見直しにつながるか

今後の焦点は、8月に予定されている決算発表です。市場は、エヌビディアが高い粗利益率を維持できるのか、ブラックウェルからルービンへの移行が順調に進むのか、そしてAIインフラ需要が引き続き強いのかを確認しようとしています。

7月8日の終値が3.7%上昇したことは、投資家の一部がすでに割安感に注目し始めていることを示している可能性があります。ただし、本格的な再評価には、次回決算で製品価格、供給力、利益率、需要見通しの強さを改めて示す必要があります。

エヌビディアを巡る市場の不安は、決して根拠のないものではありません。部品コストの上昇やカスタムチップの台頭は、今後も注意すべきリスクです。しかし、それ以上に同社の価格決定力、エコシステム、サプライチェーン規模、市場シェアの強さは大きな優位性として残っています。

結論として、バンク・オブ・アメリカが指摘するエヌビディアの過小評価論には十分な妥当性があります。現在の株価は、短期的な懸念を強く反映する一方で、長期的なAIインフラ市場における支配力を十分に評価していない可能性があります。次回決算は、そのギャップが修正されるかどうかを見極める重要なタイミングになりそうです。

情報ソース: MarketWatch: “Nvidia’s stock trades at a juicy discount, according to BofA” (By Britney Nguyen, July 8, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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