デル株急騰の裏にAIサーバー需要 HPにも広がるAI相場の次の主役

米国株市場では、AI(人工知能)に関連する企業への期待が引き続き高まっています。これまでAI相場の中心は、エヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの半導体企業、あるいはマイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)などのクラウド大手でした。

しかし、最近はその波が、従来型のハードウェア企業にも広がり始めています。なかでも注目されているのが、デル・テクノロジーズ(DELL)HP(HPQ)です。

かつてPCやサーバーを製造する成熟企業と見られていた両社は、AIインフラやAI PCの拡大によって、新たな成長企業として再評価されつつあります。今回の記事では、バロンズの記事をもとに、デル・テクノロジーズとHPの将来性、そして投資家が決算で確認すべきポイントについて考察します。

デルとHPの株価急騰が示す市場の期待

まず注目すべきは、両社の株価上昇です。

デル・テクノロジーズは2026年5月22日午前の米国市場で16.7%急騰し、株価は294.95ドルに達しました。年初来では134%上昇、5月だけでも35%以上上昇しており、S&P500の中でも特に目立つ銘柄となっています。

一方、HPも同日に15.4%上昇し、25.26ドルをつけました。6営業日連続の上昇となり、2025年12月以来の高値水準に戻しています。

この動きは、単なる短期的な思惑買いではなく、AI関連需要がハードウェア企業の業績を本格的に押し上げるとの期待を反映している可能性があります。

特にデルは、AIサーバーの需要拡大によって、従来のPC・サーバー企業というイメージから、AIインフラを支える重要企業へと見方が変わりつつあります。

デルの成長を支えるAIサーバー事業

デルの最大の注目点は、AIサーバー事業です。

同社は2027年度の通期見通しとして、売上高1380億ドル〜1420億ドル、1株当たり利益(EPS)12.65ドル〜13.15ドルを示しています。その中で、AIサーバー事業だけで500億ドルの売上を見込んでいます。

この数字は非常に大きな意味を持ちます。仮に売上高が1400億ドル前後だとすれば、AIサーバー関連だけで全体の3分の1以上を占める計算になります。

つまり、デルはもはや単なるPCメーカーではありません。エヌビディアやAMDのGPUを搭載したAIサーバーを企業やデータセンターに届ける、AIインフラの重要な供給者になりつつあります。

AIの普及には、半導体だけでなく、それを組み込んだサーバー、冷却、電源、ネットワーク、導入支援が必要です。デルは、その実装部分で大きな役割を担う企業として、市場から再評価されています。

さらに一部のアナリストは、デルのAIサーバー売上見通しが500億ドルから600億ドル、あるいは655億ドル程度まで引き上げられる可能性にも注目しています。もしこうした上方修正が現実になれば、同社の成長期待はさらに高まることになります。

HPはAI PCの普及で再評価される可能性

一方のHPは、デルとは少し異なる角度からAI需要の恩恵を受ける可能性があります。

デルがデータセンターや企業向けAIサーバーで注目されているのに対し、HPの主戦場はPCです。今後、AI機能を端末側で処理するAI PCの普及が進めば、企業や個人のPC買い替え需要が高まる可能性があります。

これまでPC市場は、コロナ禍後の需要減速や買い替えサイクルの長期化により、成長性に乏しい分野と見られてきました。しかし、AI PCという新しいテーマが加わることで、HPにも再評価の余地が生まれています。

企業がAIを業務に本格導入するには、クラウド側のインフラだけでなく、社員が使う端末側の性能向上も必要になります。生成AI、Copilot、AIアシスタントなどを快適に使うためのPC需要が広がれば、HPにとって追い風になります。

今回、デルとHPが同時に急騰したことは、AI投資の中心がデータセンターだけでなく、端末側にも広がり始めていることを示していると考えられます。

ただしバリュエーションには注意が必要

一方で、株価が大きく上昇しているからこそ、リスクにも注意が必要です。

デル・テクノロジーズに対するウォール街の評価は大きく分かれています。

ウェルズ・ファーゴは、デルの投資判断を「オーバーウェイト」とし、目標株価を180ドルから270ドルへ引き上げました。AIサーバー需要の加速や業績予想の上方修正に期待しているためです。

エバコアISIも、決算発表をきっかけとした株価上昇の可能性を重視し、「タクティカル・アウトパフォーム」としています。

一方、モルガン・スタンレーは慎重な見方を維持しています。投資判断は「アンダーウェイト」、目標株価は170ドルです。現在の株価水準は高すぎると見ており、今後の需要鈍化やメモリコストの上昇を懸念しています。

この評価の分断は、投資家にとって重要なポイントです。AIサーバー需要が強いことは間違いないとしても、それが十分な利益率を伴うかどうかは別問題です。

サーバーやPCの製造には、DRAMやNANDフラッシュメモリなどの部品が必要です。AI需要の拡大によって半導体部品の価格が上昇すれば、売上が伸びても利益率が圧迫される可能性があります。

つまり、投資家が見るべきなのは売上高だけではありません。AIサーバーの受注がどれだけ増えているかに加えて、そのビジネスがどれだけ利益を生み出しているかを確認する必要があります。

決算で注目すべきポイント

デル・テクノロジーズとHPの決算では、特に次の2点が重要になります。

1つ目は、AI関連の受注残です。AIサーバー需要が一時的な特需なのか、それとも数年単位で続く構造的な成長なのかを見極める必要があります。受注残が大きく積み上がっていれば、今後の売上成長に対する信頼感は高まります。

2つ目は、利益率です。売上が伸びても、部品コストの上昇で粗利益率が低下すれば、株価の上昇を正当化することは難しくなります。市場はすでに高い期待を織り込んでいるため、決算では「売上の伸び」だけでなく「利益の質」が問われます。

まとめ

デル・テクノロジーズとHPの株価上昇は、AI相場が半導体やクラウド企業だけでなく、ハードウェア企業にも広がっていることを示しています。

デルはAIサーバー事業によって、AIインフラの中核企業として再評価されています。HPはAI PCの普及によって、PC市場の買い替え需要を取り込む可能性があります。

ただし、現在の株価にはすでに高い期待が織り込まれています。特にデルについては、強気派と慎重派の見方が大きく分かれており、決算内容が市場の期待に届かなければ、株価が大きく調整するリスクもあります。

今後の焦点は、AI需要が本当に持続的な売上成長につながるのか、そしてその成長が十分な利益率を伴うのかです。

デルとHPは、成熟したハードウェア企業からAI時代のインフラ企業へと変貌できるのか。次の決算は、その答えを見極める重要な機会になります。

情報ソース: Barron’s: “Dell Stock Leads the S&P 500 Today. Next Week’s Earnings Could Send It Higher.” (By Kit Norton, May 22, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら デル・テクノロジーズ DELL

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